大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」

2020-04-25 12:37:38

dive13

「そういう大事なことは最初に言ってほしいよね。ってことはあの石を守ればいいってこと。でもそれなら日本にいる俺なんか関係なさそうだけど。」

「今はね。でもこれから新しくあなたにやってもらうことになる『ダイブ』を体得したらそういうわけにはいかなくなるの。それを危惧したおじいちゃんに頼まれてわたしがきてるってわけ。」

「つまり・・・・その・・・・深刻ってこと。」

心配そうに小さくうなずく紅美に覚悟を決めて言った。

「わかった。つまりこういうことだ。俺が頑張らないと、さくらも村長や村の人も・・・紅美も大変なことになるってことだな。よし、そういうことならやってやろうじゃない。でもらーめんに『ダイブ』するってどうやって潜るの。」

ちょっと安心した顔になった彼女はまた先生の顔に戻り

「それはまず基礎を体得してから、それにはもう一つクリアーしなければならない課題があるの、『ダイブ』のための装備が必要なの。どうしてかはわからないけど体を小さくして『ダイブ』すると体感温度が数倍に上がるの。一族の中でも何人も失敗して命を落としたの。だからそれを克服するための装備を開発しないといけないの。」

「ちょっと待って、それってそのための耐熱スーツを作るってこと?それって材料工学だぜ。俺の好きな化学が役に立つってことじゃない。でもまだ高校生でそんな高度なことは・・・でもその関係の学部のある大学にいって関連企業に入ればあるいは・・・・・霊的パワーと科学の力の融合って俺じゃなきゃできそうもないかも。それで御先祖も俺に力を貸してくれてるのかな。今からほかの勉強もしないと間に合いそうにないな。これはどえらいことになってきたぞ。もー、もっと早くいってくれよー。そんなこと言ってもしょうがないか。紅美始めようか。」

(ふふ、おじいちゃんやご先祖様たちもあながち間違ってなかったのかな。でも油断は禁物ね。目を離さないようにしなくっちゃ。)

まずは基礎練習なんだけど覚えることいっぱいだし、霊力を融合して動くとこれが結構体力を消耗するんだよね。なんていうのかどんどん垂れ流しちゃうような感じで、すぐ空っぽになっちゃう感じ。この蛇口全開状態を絞ったり開けたりするのが難しいんだよ。集中してないとすぐ漏れちゃうんだよね。しかも少しだけ開けてそれを手だけに集中させるとか。要するに力を思うようにコントロールする修行。これが基礎練習で手のひらに集中させると訓練次第であの有名なかめはめ波みたいないわゆる発頸(ハッケイ)を打つことができるらしい。手に集中させるだけで一苦労でちょっと動いただけで意識がそっちに行って失敗。これの繰り返しなんだけどこれだけですんげ―腹減るんだよね。漫画と違って無限に力が湧いて出てくるわけじゃないからそうなるのが当然だけどね。だから中国に行ってからものすげー食べる量が増えた。食べるばかりじゃ悪いので調理の手伝いをしていたら見よう見まねで中華料理を作れるようになり、意外にもみんなに大うけだった。紅美は12歳の時からこの修行をしている大先輩だ。大先輩の教えは厳しく、解らないだろうとやっているふりをするとすぐ叱られる。紅美曰く『やっているうちに力の動きが見えるようになる』らしい。だからさぼるとすぐばれる。そしてどうやらこの一連の動きは太極拳の源流の一つで相手の気を読めるようになるらしい。練習をしいてる俺の手に触れるだけで体調から思考などがある程度分かるらしい。体術だけは小さいころからやっているらしいんだけど気の訓練は12になるまで止められていたという。子供には危険な技なのだろう。気の練習も一段落して今度は体術、紅美の動きの型と同じことをするのだけど、呼吸まであわせるのでこれが大変。しかも呼吸のイメージまで。息を吸うときに太陽の力を吸い込むように、そしてその力が体中をめぐるようイメージして。全身をめぐったその力をへその下、いわゆる丹田に収め息を吐くと同時に力を外に出す。それを繰り返す。とその時、玄関の扉が開き

「藍、何やってんだ、おまえ。その人だれだよ。」

ジミーだった。もうそんな時間かと思いながら紅美と顔を見合わせる。なんて説明したらいいのか戸惑っていると紅美が、

「ニーハオ、私、隣に越してきた紅美と言います。あいさつ代わりのに私の国の太極拳を教えていたんです。あなたは?」

「あ、はじめまして俺は、ジミー・ブラウン。藍の幼馴染で高校の同級生です。藍よりは頭は良いです。」

「いらねーこと言ってんなよ、地味―な茶色君。早かったな。もう3時か。あがれよ。」

「じゃあ、私はこれで失礼します。」

と言いながら俺に近寄り小声で

「さぼるんじゃないわよ、明日も来るからね。」

とにらみを利かせて帰っていった。やっと解放されたと思ったら急に腹が減ってきた。そういえば朝はパンだけだった。

「ジミー腹減ってない?なんか食うか。俺作るけど。」

「おー、食う食う。なにつくるの。」

「炒飯でいいか。残り物ぶっこんだ奴だけど。」

2020-04-19 18:15:01

dive12

「そろそろ帰るね。おじさん、また来るね。」

さくらが先に玄関を出るとおじさんが、急に真面目な顔をして

「ああ、藍(あおい)、さくらのことたのんだよ。」

「うん。わかってるよ、おじさん、おばさんもありがとうね」

 「藍ちゃんよく頑張ったね、あんたのおかげだよ。おばさんはあんたたちが大好き。」

 そういってまた抱きしめられた。

 「おばさん、恥ずかしいよ、ありがとね。」

そう言って逃げるように親戚の家をでた。待っていたさくらが顔を赤くしている俺を茶化してきたが嫌な気はしなかった。親代わりとはいえ母親にあまりあまえたことのない俺達には本当にお母さんのような存在だった。

「さくら、よかったな、また剣道できるようになって。たまには俺も顔出そうかな。」

「そうしなよ。私が稽古をつけてあげるから。先生と呼びたまえ。」

(うわっ、その言葉、ちょっと前に紅美にも言われたっけな。そういや修行さぼってるな俺。黄さんもそのうち来るって言ってたらしいけど、いつ来るんだろうな。でも怒った紅美もかわいいよなー)

「お兄ちゃん?どうしたの?ほら帰ろ。」

家に着くころには薄暗くなっていた。あの黒塗りの車はなかったが、家の中に明かりがついていた。もう普通に暮らし始めているようだ。キッチンの換気扇からいい匂いがしてくる。何のにおいかわからないけどおいしそうな匂いだ。前にいた老夫婦の時には焼き魚のにおいがしていたのをよく覚えている。匂いから今度の隣人の料理を作る姿が目に浮かぶ。きっときれいな人だろうと思って鼻を効かせていると突然、ニンニクと辛いにおいがしてきた。八角の香りも漂ってきてアジアな食卓を感じさせる。作っている人のイメージがぐしゃぐしゃになって、どんな人なのか明日こそ確かめてやろうと思いながら家に入った。

2日経ってさくらが道場へ行っている間のことだった。高2の夏をこのまま終わらせるのはつまらないと幼馴染のジミーに連絡を取り、お昼2時ぐらいにうちに来ることになった。10時頃に遅めの朝食をとりぼーっとテレビを見ていると、ピンポーンとチャイムの音が。ジミーが来るにはまだ早いし、またなんか宗教かなと、インターホンで答えると、

 「あの、隣に越してきたものですけども。」

 返事をして、一昨日の想像を思い出しながら慌てて身なりを整えドアを開けた。

 「あなた、修行さぼってんじゃないでしょうね。」

 そこには久しぶりに見る鬼教官の顔があった。

「えっ?紅美?何してんの?さぼってないよ。ちゃんとやってるって。」

「はい、不動の印。」

「えっ!はいっ!えーっとあれこうやって・・・・」

「やっぱりやってない。ちょっと中にはいるわよ。」

そういうとずかずかと上がり込んできた。赤い服のきれいな人というのはその通りだけど気が強いというおまけがつくだけでこんなに招かれざる客になるとは想像すらしてなかった。

「へぇー、日本の暮らしってこんな風なのね。黄から聞いていたけどやっぱり来てみないとわからないものね。で、学校はいつから、妹さんの具合はどう?」

「さくらのことはありがとう。おかげさまで今は剣道の練習に行ってるよ。学校は来週からだけど。」

「あっそう。じゃあ今日から特訓再開ね。あなたまだ基礎すら体得できてないんだから、そんなんじゃすぐにやられちゃうわよ。」

「やられちゃうっていったい誰に?来たばっかりなんだからこの辺案内でもしようか?」

「あなたには言ってなかったけどあの宝石を狙っている組織がいるのよ。そしてうちの一族の知ってる秘密もね。それを守るためにあなたには戦ってもらわないといけないの。今はまだあなたの存在も知られていないからいいけど、備えておかないと。」

「誰と戦うんだよ?何で狙ってるわけ。病気を治す薬ならみんなに分けてやればいいんじゃない。」

「あの宝石には秘密があるの。実は薬にもなるけど使い方によっては毒にも兵器にもなるの。だからほしがる奴はいくらでもいるの。それを守ってるのが私の一族。いろいろ研究もしたわ。そのおかげでいろいろわかったの。妹さんが倒れたのもあの石に関係があるのよ。」

2020-04-16 19:46:37

dive11

(やっぱり黄さんもあの一族の一人だったんだ。最初から分かっていて俺にあの村に行かせたんだな。まったくあの一族は恐ろしいな。でもまぁさくらが治ってよかった。今度は俺がエライことになっちゃったけど。)

「で、黄さんは?」

「なんか急用があるみたいでさっき帰っていったよ。『もうすぐお兄ちゃんが帰ってくるから待っていなさい』って言ってお薬おいて出てったよ。」

そうしゃべっている妹を見ていたらなんだか急にほっとして力が抜け泣いていた。そりゃもう号泣レベルで

「さくら、よかったな。ほんとによかった。うんうん・・・ほんとによかった・・・・」

「うん、ありがとね。お兄ちゃんが黄さんに頼みに行ってくれたから・・・わざわざ中国まで行ったんだって。黄さんが教えてくれたよ。お兄ちゃんの必死さと熱意を感じて中国から来たって。」

(ん?ちょっと違う、いやだいぶ違うけど、治ったばかりのさくらに心配かけるし黙っておこう。にしても黄さん、お礼ぐらい言いたかったのになぁ。)

「あ、でも黄さん、またすぐ会えるって言ってたよ。」

「まぁ黄さんのことは置いといて、さくら、お前中華料理好きだったよな。」

「うん。」

「治ったお祝いにお兄ちゃんが本場で教えてもらった料理を作ってやるよ。おいしすぎてびっくりしちゃうぞ.。」

「えー、大丈夫、私また病院行くの嫌だよ?」

「なめんなよ。向こうじゃみんな『ハオチー』っていってくれていたんだぜ。本場の人もびっくりって。」・・・・・・・・・

こうしてさくらはうちに帰ってきた。ご飯を食べ早めに休ませた。寝顔を見ているとほんとにちょっと前まで寝たきりだったのが信じられないくらいだった。短かった夏休みももうすぐ終わる。二学期からまたさくらも学校に行けるだろう。これですべて終わった気でいた。しかし、この話はそんなに簡単ではなかった。

翌朝、隣の引っ越しがまだだいぶかかっているのか、外がにぎやかだった。中国での毎日と違い朝はゆっくりしようと思っていたがそうもさせてくれないようだ。うちは俺たちが小さいうちに両親が離婚し母子家庭だった。しかし4年前母が交通事故で亡くなり兄弟二人となった。幸い近所の親戚がいろいろ世話をしてくれることと、親父からの仕送り、事故の保険金などで暮らしていけている。その親戚にもさくらを合わせたかったので、朝二人で報告に行こうと家を出たところ隣の家の前に高級車が止まっているのを見かけた。

「あの古ぼけた家に引っ越してくるにしてはずいぶん高そうな車だな。車の名前はよく知らないけど黒塗りのスモークバリバリの車なんてこの町に合わないなー。なんだか物好きなセレブがいるんだなー。」

「でもお兄ちゃん、朝ちょっと見かけたけど、きれいな女の人だったよ、お兄ちゃんよりちょっと上くらいかなー。きれいな赤い服を着ていたから覚えてるよ。」

(へぇー、どんな人かなー『お友達からよろしくお願いします』なんてなー、お姉さんか~)

「早くいくよ。」

親戚の家に行くとおじさんもおばさんも俺と同じでぐしゃぐしゃに泣きながらさくらを抱きしめていた。それを見て俺もまたうれしくなって4人でわんわん泣いた。そのうち泣き笑いになり、そのあとはなんだかわからないけどげらげら笑った。おじさんの知り合いの道場に通っていたさくらは、また道場に行きたとおじさんに告げるとすぐにおじさんが師範に電話をしてくれた。学校にも連絡をしてくれて二学期から行けるように手配をしてくれた。

「さくらちゃん、師範も先生もすごく喜んでいたよ。なんたってさくらは成績優秀、剣道の腕は全国クラスだからな。また、試合の応援に行かなくっちゃな。今度は旗作ってやるからな。」

「ヤダ、おじさん恥ずかしいよ。」

「何言ってんだ、おじさん桜色のハッピ作ったんだからな。もう後には引けんぞ。」

ちょっとさくらがかわいそうな気もしたが、俺は一緒に通っていたがそんなに強くなく成績もいいのは化学と英語ぐらいであとはぱっとしないからな。俺の分までよろしくってことで。しかも俺の英語がいいのは幼馴染のジミー・ブラウンっていうやつがハーフで家に行くとアメリカ生まれのお母さんと英語でしゃべってるから俺も一緒にしゃべってたらなんとなくなれただけなんだけどね。だから一番好きなのは化学なんだ。大学も理科系に行くつもりでいる。何しろ実験とか研究とか大好きで、一日中やってていいっていうならそんな仕事に就きたいと思ってるぐらいだから。そんなあまい会社はないだろうけどね。おじさんもそんな俺のことをわかってくれているようで本はいくらでも買ってくれた。

dive12に続く・・・

2020-04-14 19:08:46

dive10

実際豚の血を固めた豆腐のようなものとか、カエルとか蛇なんかも出てきたがバクバク食べている俺を見て向こうが驚くくらいだった。きっとこれも此処のご先祖のご加護のせいかな。飛行機に乗ると今までの緊張のせいか疲れが雪崩のように押し寄せ、日本につく直前、アテンダントに起こされるまで眠ってしまった。空港で荷物をまっていると本当に今まで夢を見ていたのかと思うほどだったが、両手の十字傷を見て現実であることに引き戻される。荷物をレーンから引きずり下ろすと任せておけと言われた妹のことが気になり急いでバスに乗った。バスの中で日本語を聞くとなぜだか違和感を覚え旅行に来ている気分になった。いったん家に帰り荷物を置いてから妹がいる病院に向かうことにして急いでいると、隣の家に引っ越し業者が来ていた。隣には老夫婦が住んでいたが近々息子さんのところへ引っ越すと言っていたのでそのためだろう。挨拶ぐらいしておこうかなと思い覗いてみるとおかしなことに引っ越し業者の人が荷物を家の中に運びこんでいた。不思議に思い表に出ていた近所の人に聞いてみると老夫婦は家が売れたので一週間前に引っ越して行き、新しい人が越してくるということらしい。知らないうちにそんなことになっているとは本当に浦島太郎状態だ。どんな人が来るのか楽しみだけどそんなことよりも妹のところへ急がなきゃと荷物を引っ張った。久々にカギを取り出し開けようとしたがなぜか空いていた。閉め忘れることは多々あったが旅行の前には確かにカギをかけた覚えがある.。恐る恐るドアを開けると人の気配がする。

(おいおい、いきなりアクシデント発生、なんだか知らないけどご先祖様たちおねがいしますよ。)

おかしなことにテレビの音がする。どこかで聞いた笑い声だ。身構えながら中をのぞく。音をたてないようにそっと上がり息を殺して少しずつ動いてやっと30センチ。もう一歩反対の足を上げて踏み出そうとした瞬間、

「お兄ちゃん?お帰り。何してんの?」

「え?さくら?何でここにいるんだよ。っていうかお前体は?なんだよ?どうなってんだよ。」

「え?あれ黄(ウォン)さんから聞いてないの。おかしいなー。黄さんお兄ちゃんから頼まれたって言ってたのに。」

「黄ってあの黄さん。俺に中国に行けって言ったあの。っていうかなんでお前が黄さん知ってんだよ。」

「え?だって黄さんがお薬を毎日持ってきてくれたのよ。ケロッとよくなってお医者さんがびっくりしてたわよ。なんか黄さん中国で偉いお医者さんだったらしくて、先生慌てていたわ。」

dive11に続く・・・

2020-04-13 21:54:00

さすらいの2泊目

 今日はこれまた大好きな福井県。

福井に行ったのはもう何度もあるけど、あれはモビリオスパイクを買って初めての冬の旅。

民主党政権下高速道路休日1000円乗り放題という旅好きにはもってこいの日でした。

日曜日24時までに乗れば1000円なので昼の間に用意をしておき、仕事を早めに切り上げ、守山から逃げるように高速に乗った。

予報で知ってはいましたが一宮サービスエリアでひと眠りして出発しようとしたころには雪でした。

この旅はこの先どこまでいけるかわからないので今日泊まる宿も何も決めずに出発していました。

風の吹くまま、気の向くままとはいえできれば富山までいけたらいいねぐらいのことは決めていました。

北陸道に乗り継ぎ木之元インターを過ぎたころには道路は真っ白。スタッドレスでのブレーキの利き、操舵の具合を確かめながら左車線を先行車との車間距離をたっぷり開けて走っていると地元ナンバーの営業車が120キロぐらいでぶち抜いていく。北陸道は幅も広く圧迫感がなく走れるはずなのに緊迫感たっぷりで走行。夕日がきれいに見える刀根パーキングエリアでちょっと休憩。暖房をかけて運転していると温かさで眠くなってくる。どこを見ても真っ白な世界。ワイパーを止めれば車ごと埋もれていくような感覚。

(あー、雪国の人は冬の間この中で暮らしているのか)と思っている脳の半分は雪国といえば断崖で津軽三味線、波しぶきに地面に倒れ『あんたーーあんた―――』と叫び請う髪の乱れた襦袢姿の女を想像する。偏見のようだが、前に富山出身の子が名古屋に来て冬に太陽を見て一言『富山には帰りたくない』と言っていたことを思い出す。そうなるわなぁー。

気を引き締めて雪の山道を走りだす。峠を過ぎると鯖江の町が見えてくる。福井インターを過ぎたあたりからちょっと天気が回復しだしたと思ったとたん、突然の雹。フロントガラスが割れるほどにたたきつける音に恐怖が増すばかり。富山はあきらめ早々に高速を降り下道で北上

8号線を走っていると、大きな観音像を見つけ思わずそちらに向かっていくと。ショッピングセンターがあったので立ち寄りこの辺りの情報収集がてらうろうろしていると、橋立港が近いことを知り、お腹もすいたので海岸方面進路変更。漁師が経営する魚屋兼料理屋を見つけ早速行ってみました。

一階で魚を販売それを2階で調理してくれるというスタイルでした。そこで初めて香箱めし(セイコガニの混ぜご飯のようなもの)の存在を知り注文しまし。うまそうな真鱈の白子も。真鱈というと東北、北海道辺りでは、はえ縄漁が一般的でいっぱいかかるまで放置してあるため鮮度的には刺身レベルではない。その点北陸では刺し網漁でとっているため鮮度がよく刺身で食べることもある。鮮度というか、いわゆる寄生虫の問題。普段内臓にいる虫が魚が死ぬと身のほうに入っていくため、活〆で直ぐに内臓を撤去しなければならない。できれば血と神経も抜くと保存方法としては完璧ですが。もともと鱈は身に水分の多い魚なので足も速い(腐りやすい)。富山ではこの刺身に真鱈の子をばらして乾燥させたものをまぶして食べることが多い。北陸ならではの昆布締めもあるよ。そういうレベルの真鱈白子は色も段違い。そしてうまい。

ちょっと待つとセイコガニとごはんが出てきて、

『ここに醤油とお酢をかけて混ぜると香箱飯になるよと』説明してもらった。

醤油は地元の醤油で甘口のものだった。愛知県に住んでいると知らない人も多いけど九州、中国地方、北陸では甘口の再仕込み醤油を使うことが多い。九州旅行に行くと刺身醤油も甘口のものが一般的だったりしておいしいよね。この再仕込み醤油はアジアでは一般的で食堂なんかではこれの煮詰めた感じのドロッとしたものが置いてあったりする。海南飯(タイではカオマンガイ、シンガポールチキンライス、みんな同じものです)にかけたりもするよ。台湾でも普通に売ってる。金蘭醤油なんてのは有名だよ。

ご飯の上にカニ身、内子、外子をのせこの醤油にお酢を足しかけ混ぜるとあら不思議、まるでカニ寿司。こりゃうまい。なんだこりゃ。北陸万歳。でもこのセイコガニ資源保持のため漁の期間が決まっていて12月いっぱいぐらいまで(以前は1月半ばまでとっていたんだけどね)ほかの地方は規制が緩かったりします。北海道はタラバと毛ガニ以外は興味がないのかな。地元三河地方は渡り蟹以外に興味なし、まあズワイは取れないしね。

さて腹も膨れたころお店のお姉さんに今日泊まるとこ決めてないんだけどどこかいいところないかなーと聞いてみると。地元の人で温泉に行くのはやっぱり山中温泉あとは加賀温泉郷とは言うけれどあんまり行かないって。じゃあということで目指すは山中温泉。

行くまでにいろいろ地元スーパーに立ち寄り、地元の食材、調味料などを物色。キッコーマンに甘口醤油があるなんて初めて知った。北陸でとれる魚はこの時期(夏場は底引きが禁止)ならではのものがいっぱい。代表は赤ガレイ、若狭カレイ、甘エビ、ガスエビ(トラエビ、モサエビとかいろいろ呼び名があります)などで、地元の人は赤ガレイの煮つけなんかには例の甘口醤油のみで煮つけるっていってたよ。スーパーに行ってわからないことはそれを買っていく地元の主婦に片っ端から聞くこと。これ鉄則。

『私、名古屋から来たコックでどうやって使ったらいいかわからないので教えてほしい。』と言えばだいたい教えてくれます。

調味料なんか、どこのメーカーのものが地元の人に好まれているかは棚に置いてある数、種類を見ればわかるし、

『これどっちがおすすめ?』って聞けば『うちは昔からこれだけ。』とか『こっちはあんまりコクがない』とか教えてくれるし、いい人に当たれば他の地元情報も教えてくれる。私たちは1度旅に出るとこういう食品と情報を車いっぱいにして帰ります。そしてそれを休み明けのおすすめ料理として出しています。作っていくうちに自分の身となっていくので次にこのシーズンが来るのが楽しみになります。地元の人が食べているものを作って食べる、地元の人がどうやって暮らしているのかを一瞬でいいから体験する、それこそが旅の醍醐味。この土地の地理、歴史、風土を知り、そこに住む人たちを食を通して理解していくことは中華料理という異国の、されど変化しながら自国の料理となったものを理解していくのと何ら変わりはないのである。それは国境というものを軽々と超えていく料理のすばらしさ、そこには他国のものと複雑に融合していくもの、歴史を超えてその国になくてはならないものになっていくもの、移民たちが運んでいき地元に根付くものなど様々な変化を遂げたものが今日にに残っている。私がやっているのはその線の一点に過ぎないが、新たな変化の起点なのかもしれないと思うと感慨深い。以前に読んだ漫画に『ヒカルの碁』という物語がありまして、サイが消えていく名シーン。『神はこの一局を見せるため 私に千年のときを長らえさせたのだ』というセリフが頭にこだまする(知らない人は読んでみてね)。ちょっと大げさかな。

さて、山中温泉の観光案内所で宿を紹介してもらい1泊。朝、町を散策してみるも雪の平日、観光客も少なく、朝風呂はかえって風邪ひきそうだし早々に出発。永平寺に行ってみようと一本道を走っていくと山の中にポツンとお店、妻がガイドブックに載っていたお揚げ屋さんだという。お店の裏には工場もくっついていてここから発送しているようだ。お客さんはほかにおらず私たちだけ。入ってみると豆腐やさんでしたが大きなお揚げが名物だというので定食を注文してみた。揚げたてを食べてほしいのでちょっと時間がかかるとのこと。待っている間に店内を見ているとお揚げの炊き込みご飯なるものを発見。しかしこれはもっと時間がかかるというので断念。そうこうしている間にお揚げ定食登場。早速一口。

『何だこりゃ!うまい。』

普通のお揚げの大きさ約12倍(体積比)。外は揚げたてでカリッと、中は生揚げとお揚げの中間でじゅわじゅわ。こんなの食べたことない。

福井万歳!!

こういうものがあるって地元の人はうれしいだろうね!このお店、後にテレビにいっぱい出て全国的に有名になるのだけれどこの時はそこまでではなかった。このころ県庁所在地の福井市のでこのお揚げ扱っているところは少なかったが毎年行く度に有名になっていき福井市のどのスーパーに行っても置いてあるようになる。なんやったらここ名古屋高島屋でも売っています。偽物というか類似品もいくつかあるけどやっぱり竹田の谷口屋が一番うまい(ちょいちょい値上げされるので早いうちに食べてみよう、同じ食品関連、原材料費、経費の値上がりには悩まされますなー)。この後何回も福井へ行く間に福井のお揚げ事情、というか大豆食品事情にやけに詳しくなっていくのは言うまでもなく、その昔油が貴重だったころの話、揚げるということはものすごく贅沢なこと、豆腐の保存も含めてこのような文化になったのだろうと思う。スーパーに行くと他県の3倍くらい豆腐関連食品が並ぶ。大豆食品をたくさん食べるおかげか福井は御長寿である。給食のカレーにもお揚げカレーがあるそうだ。うらやましい。ちなみに薄揚げ、中揚げ、厚揚げ、そして一般的なお揚げ、この大きなざぶとん揚げ、がんもも小さいものから特大のものもあり秋冬のお鍋に、春夏はお揚げを焼いておろしポン酢なんて最高。福井にはこのお揚げを焼いて越前そばの上にのせ、そのうえに辛味大根おろしと鰹節をかけて食べるという何ともうまいそばもある。もう一度言わせていただこう。福井万歳!!

山を下ると永平寺に。曹洞宗の総本山、禅寺です。作麼生(ソモサン)、説破です。もともとこの作麼生は中国語の什麼(どう?)と意味の口語です。よく使います。こんなところにも中国が。文化は巡るなー。この寺で日々修行をする僧侶たちの無駄のなき生活を見ると己が恥ずかしい・・・寺の隅々まで雑巾がけでピカピカ。一休さんは臨済宗だけどそんな感じです。珍念さん、木念さんいるのかなー。何十枚の天井にはめられた絵を見て感動。しかし何も悟らないまま食欲に負けて直ちに下山。

 スーパー巡りのために福井市へ行ってみると、福井県に展開する地元スーパーハニー、24時間やってるワイプラザ、アピタエルパ、パリス、産直のある農協など、ここでしか売ってないものがそろってる。これまた九州、四国、北陸地方でよく食べられている親鳥肉もあるよ。福井を拠点にする秋吉があるからね。スーパーにも秋吉の純けいが売ってます。たまらんね。でもやっぱり秋吉は本店片町で食べたほうがうまいよね。あのカウンターで白10純けい10なんて頼んじゃいたいねー。その近くにはソースカツどんで有名なヨーロッパ軒があるよ。メンチカツののったパリ丼なんてのもおつだね。いやいやスーパーだったね。米どころならではなんだけどもちがいっぱい。普通のもち以外につぶつぶのうるち米が入ったこごめもち、大豆入り、黒豆入り、干しえび入り、よもぎ入りの斗棒(とぼ)もち、もち米もやっぱり福井もの、エルパには餅屋が2件も入ってる。餅の田中屋の焼き草大福は必ず買って帰ります。ちょっと小腹がすいたらお餅屋にいくと大根おろしが乗って醤油のかかった餅や、黄な粉餅なんかもあるよ。もちがあるってことはおかきなどの米菓子もいっぱい。米好きにはたまらない光景。地元で有名な米菓子メーカー「よしむら」で1コーナーあります。エルパ、パリスにあるお茶、フルーツを売るお店では、よしむらのお徳用があるよ。

そしてなんといっても冬にしか販売されない水ようかん。普通、水ようかんというとカップに入っていたり缶だったり、ちょっといい和菓子屋は竹筒だったりするけど、福井では平たいボール紙の箱にペロンと入っていて、黒糖たっぷり系が基本スタイル。有名どころで言うと、えがわとか久保田製菓なんかがメジャーどころかな。どこもそれぞれ美味しいよ。でも気をつけなくちゃならないのは水平に運ばないとそのままつるんと大事故になります。汁もこぼれやすいですので必ず平らなところにおいてね。あと賞味期限も短いから欲張って買わないこと。

さあ、では本陣お豆腐コーナーへ行ってみよう。豆腐で有名な織田(おた)という場所はあの信長の一族の故郷らしい。その名も「おたのとうふ」。薄揚げ、中揚げ、厚揚げはメーカーによって厚み、しっとり感、揚げ具合がバラバラ。名前も田舎揚げとか永平寺揚げとか。これは1度食べてみないと自分の好みはわからないでしょう。ここでアドバイス重さで中身の豆腐感、スカスカの揚げ感を判断材料に。もう一つ揚げ感が強いもの、水分が少ないものは冷凍保存しても大丈夫。豆腐感、水分が多いものは冷凍するとすかすかのスポンジ状になってしまいます。高野豆腐(凍り豆腐)みたいなもの。いっぱい買っていって試してね。あとがんもで有名な大野屋なんてのもあります。こうやって豆腐コーナーを見ているとお隣のコーナーに練り物コーナーが見えてくるでしょう。そこで地元メーカー安田蒲鉾の商品が見えてくることでしょう。卵の入ったばくだんなんかが売れ筋です。安田蒲鉾の商品が気に入ったならおすすめは8号線沿いにある福井市場の中にある売り場。アウトレットコーナーがあって午前中早くに行けばお得品が並んでます。ですがここで注意。冬はお鍋、おでんなどが多いためすぐに売り切れます。逆に夏場は遅くまであったりします。

 さあ福井市はそろそろおいとまし、お隣鯖江市に向かいましょう。8号線をそのまま南下していくと眼鏡で有名な鯖江市。走っていくと途中左手に農協の産直があります。ちょっと寄ってみてください。地元の食材があります。おすすめはまたかと思われるかもしれませんがお揚げ。しかし今までとは違う青大豆で作ったもの。風味が違うのでお試しください。あと地元民のおやつ、大豆の揚げ菓子その名も「豆板」。やめられない止まらない一品です。じゃあ鯖江に向かいましょう。

鯖江のおすすめはなんといってもここ「ヨーロッパンキムラヤ」。あの銀座木村屋直系です。福井のスーパーにも結構並んでいるパン屋さんです。お店に並んでいるパンはどれも噛めば噛むほどおいしいパンです。あとここに置いてある北海道のノースファームストックのディップソースはおすすめです。好きなのはブルーチーズディップ。止まらないねー。今はないけど前はパンの耳をごっそり売ってくれて、うちでフレンチ揚げトーストにして食べてました。ほうれん草のパンとかうまいですよ。

さて鯖江のインターの入り口の近くにAコープがあります。最後にここに寄っていきましょう。ここにも産直があります。ここの魚屋さん結構いいのがあります。さてここにはさっきの安田蒲鉾さんが作ってる魚ミンチフライが売ってます。そこでさっきのパン屋で買った食パンを出します。さあフライをパンにはさんで食べてみましょう。なかなかおいしいですよ。高速道中の小腹対策にもってこいですよ。福井の他の情報はまた次回にしておきましょう。行き当たりばったりの旅は何か気になったらすぐに立ち止まってみる。目的はたどり着く「地」ではなくその「旅」自体なのです。たとえたどり着いた宿が最悪で食べたものが最悪でもそれが思い出です。そんなことを誰かと共有(話したりして)してみてください。それもまた楽しい体験になるでしょう。旅は行く前も行った後も続いているんです。たまに「いいところを教えて」と言われます。私の人生とあなたの人生は全く別物です。私が楽しくてもあなたにとっては何が楽しいのか全くもって理解不能でしょう。大量のお揚げを見て目を輝かせるおっさんは端から見たらなんと気持ちの悪いことでしょう。何が好きなのかによって旅なんて何万通りもあるのです。あなたの旅はあなたが作って、その体験談を私に話してください。それは1冊の本を読むがごとく楽しい体験になることでしょう。皆さん旅を楽しんでね。

漂泊の旅は続く・・・・

 

 

 

 

 

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