大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive12
「そろそろ帰るね。おじさん、また来るね。」
さくらが先に玄関を出るとおじさんが、急に真面目な顔をして
「ああ、藍(あおい)、さくらのことたのんだよ。」
「うん。わかってるよ、おじさん、おばさんもありがとうね」
「藍ちゃんよく頑張ったね、あんたのおかげだよ。おばさんはあんたたちが大好き。」
そういってまた抱きしめられた。
「おばさん、恥ずかしいよ、ありがとね。」
そう言って逃げるように親戚の家をでた。待っていたさくらが顔を赤くしている俺を茶化してきたが嫌な気はしなかった。親代わりとはいえ母親にあまりあまえたことのない俺達には本当にお母さんのような存在だった。
「さくら、よかったな、また剣道できるようになって。たまには俺も顔出そうかな。」
「そうしなよ。私が稽古をつけてあげるから。先生と呼びたまえ。」
(うわっ、その言葉、ちょっと前に紅美にも言われたっけな。そういや修行さぼってるな俺。黄さんもそのうち来るって言ってたらしいけど、いつ来るんだろうな。でも怒った紅美もかわいいよなー)
「お兄ちゃん?どうしたの?ほら帰ろ。」
家に着くころには薄暗くなっていた。あの黒塗りの車はなかったが、家の中に明かりがついていた。もう普通に暮らし始めているようだ。キッチンの換気扇からいい匂いがしてくる。何のにおいかわからないけどおいしそうな匂いだ。前にいた老夫婦の時には焼き魚のにおいがしていたのをよく覚えている。匂いから今度の隣人の料理を作る姿が目に浮かぶ。きっときれいな人だろうと思って鼻を効かせていると突然、ニンニクと辛いにおいがしてきた。八角の香りも漂ってきてアジアな食卓を感じさせる。作っている人のイメージがぐしゃぐしゃになって、どんな人なのか明日こそ確かめてやろうと思いながら家に入った。
2日経ってさくらが道場へ行っている間のことだった。高2の夏をこのまま終わらせるのはつまらないと幼馴染のジミーに連絡を取り、お昼2時ぐらいにうちに来ることになった。10時頃に遅めの朝食をとりぼーっとテレビを見ていると、ピンポーンとチャイムの音が。ジミーが来るにはまだ早いし、またなんか宗教かなと、インターホンで答えると、
「あの、隣に越してきたものですけども。」
返事をして、一昨日の想像を思い出しながら慌てて身なりを整えドアを開けた。
「あなた、修行さぼってんじゃないでしょうね。」
そこには久しぶりに見る鬼教官の顔があった。
「えっ?紅美?何してんの?さぼってないよ。ちゃんとやってるって。」
「はい、不動の印。」
「えっ!はいっ!えーっとあれこうやって・・・・」
「やっぱりやってない。ちょっと中にはいるわよ。」
そういうとずかずかと上がり込んできた。赤い服のきれいな人というのはその通りだけど気が強いというおまけがつくだけでこんなに招かれざる客になるとは想像すらしてなかった。
「へぇー、日本の暮らしってこんな風なのね。黄から聞いていたけどやっぱり来てみないとわからないものね。で、学校はいつから、妹さんの具合はどう?」
「さくらのことはありがとう。おかげさまで今は剣道の練習に行ってるよ。学校は来週からだけど。」
「あっそう。じゃあ今日から特訓再開ね。あなたまだ基礎すら体得できてないんだから、そんなんじゃすぐにやられちゃうわよ。」
「やられちゃうっていったい誰に?来たばっかりなんだからこの辺案内でもしようか?」
「あなたには言ってなかったけどあの宝石を狙っている組織がいるのよ。そしてうちの一族の知ってる秘密もね。それを守るためにあなたには戦ってもらわないといけないの。今はまだあなたの存在も知られていないからいいけど、備えておかないと。」
「誰と戦うんだよ?何で狙ってるわけ。病気を治す薬ならみんなに分けてやればいいんじゃない。」
「あの宝石には秘密があるの。実は薬にもなるけど使い方によっては毒にも兵器にもなるの。だからほしがる奴はいくらでもいるの。それを守ってるのが私の一族。いろいろ研究もしたわ。そのおかげでいろいろわかったの。妹さんが倒れたのもあの石に関係があるのよ。」

