大将のブログ 冒険小説「らーめんダイバー」
dive26
涙ぐむバイロン、あたりを見回すホウウン。バイフォンのことを思い泣くジンリーとズーウェイ、ビール片手にうつむくオウリン。しんとした部屋の片隅に彼女が置き忘れた思いがそこにあるように俺もくうを見つめ考える。どこまで話していいものか、そして彼女もどこかでその黒い石を口にしたのか、黒い思いを受けたのか。知らない間にどんどん広がっている黒い組織に対抗する手段がこんなに力ない俺一人だなんて、俺が行く先々で先祖たちがくれた力が彼女のような人々の思いにこたえ、俺に伝えようと引き寄せているのだろうと思うとその人たちに会うたびに背負っていくであろう人の思いを今しみじみと感じ、その重さにこの先の戦いの深刻さを感じて逃げ場のないことを確認する。そして早く紅美や村長たちを探し、寺に行かなくてはと思い直す。
「アオイ、バイフォンの病は人為的なものなのか?君は『戦う』と言っていたがその者たちがバイフォンを殺したということなのか?しかし、何の恨みがあってあいつを殺したんだ。あいつは人一倍優しい子だった。争いを嫌い、穏やかで点心を作るのが大好きで・・・なあ、なんであいつが狙われたんだ。」
「それは、俺にもわからない。俺の妹もどこでそれを口にしたのかわからない。だがおそらく優しいものほど影響を受けやすいのではないかと・・」
「口にした?食べたってことか?いったい何を食べたらそんなことになるんだ。しかし毒なら検査すればわかるだろう。なあ、アオイ知っているなら教えてくれ。もしもこんなことを止めることができるなら俺も一緒におまえと・・・バイフォンのような悲しい思いはもうたくさんだ。」
「バイロン、君の気持はよくわかるし、俺にとってもありがたいことだけれど、正直、俺一人で決めていいものなのか、さっきからどこまで君たちに話せばいいのか迷っている。話せば確実に巻き込まれるだろう。そりゃあ、どこかでほかのみんなの関係者が被害にあわないとも限らないが・・・相手は平気で殺しに来るような連中だ。」
「じゃあ、君はそいつらをこのままほおっておけというのか?俺は妹を失った。もう関係者だ。聞かないままお前を返すわけにいかない。アオイ、さあ、話してくれ。」
「他の皆も聞けば巻き込まれる。バイロン、今は待ってくれ。バイフォンと先祖たちのこの力が俺を君のところに運んだんだ、いずれ君にも協力してもらわなくてはならないのだろう。だが今は少し時間をくれ。俺にこの力をくれたも人たちが行方不明で安否もさだかでないんだ。そして俺にもまだよくわからないこの力について、ある場所に行かなくてはならないんだ。必ず戻ってくるからその時まで待っていてくれないか。」
バイロンも少し落ち着いてきたようで俺の話を聞いて皆のこと心配そうに見まわし深呼吸をして椅子に座った。皆の張りつめていた空気もバイロンが座ったことで少しづつ解けていったようだ。ジンリーが気を利かせお茶を淹れだした。発酵茶の甘い香りが立ち始めほっとした。広東省の烏龍茶、鳳凰水仙であろうか、紅茶のような香りに先ほどのバイフォンの面影が重なる。
「このお茶バイフォンが大好きだったの、自分の名前と同じ鳳凰の冠を持つこのお茶と自分の作った点心をみんなにふるまっていたわ。彼女の点心は繊細で優しい感じのものが多かった。このお茶を飲むと彼女の点心が恋しいわ。」そう語りかけながらジンリーが皆にお茶を配る。一口飲むとオウリンが、
「アオイ、深圳に行くと言っていたけどそこに何かあるの?私でわかるなら案内するわよ。」
「いやそこから四川、成都に行くつもりなんだ。」
dive27に続く・・・

