◆終了した講演会◆H 31 1 20

八幡台地の渡来文化

ー剣崎長瀞西遺跡を中心としてー

古墳時代中期後半(5世紀後半)

 

三浦先生の講演は、群馬県高崎市にある剣崎長瀞西遺跡に関するものでした。

とくに、この地域に移住してきた朝鮮系の人達がもたらした文化に関するお話でした。

韓式系土器と呼ばれる朝鮮半島由来の土器が多く出土しています。

 

 

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(ヤマダ電機4階ホールは、170名の聴衆でいっぱいでした。)

 

 

◆ 八幡台地

 まず話は、この高崎市にある八幡台地はどこにあるか、ということから始めます。

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碓氷川方面から撮った八幡台地です。

関東平野の最北部といってもいいでしょう。

このあたりから徐々に榛名連峰に向かって勾配を増して行きます。

鉄道線路の向こうにある小高い木々の茂みと家々が八幡台地です。

この台地を越えて、向こう側へ行くと、今度は烏川が現れます。

いわば、碓氷川と烏川に挟まれ、平地からの比高20m~30mの台地です。

 

この台地から多くの渡来系「韓式系土器」が出土しました。

 

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◆ 韓式系土器はこの八幡台地にある6か所の遺跡から出土しました。

とくに、剣崎長瀞西遺跡からは、多くの韓式系土器が出土しました。

三浦先生は、韓式系土器について、植野浩三氏の説を引用して、次のように定義しています。

 

「朝鮮半島からもたらされた土器、あるいはその影響下で渡来人および

在地の者が日本で制作した土器」

 

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特徴は、タタキと呼ばれる技法です。

その文様は、「格子たたき」「平行たたき」「縄蓆文たたき」の三種が見られます。

(鳥足文たたきという文様がありますが、群馬県では出土していないとのことです)。

 

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◆ 剣崎長瀞西遺跡

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 (剣崎長瀞西古墳)

 

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この遺跡の古墳時代の中期には、14軒から韓式系土器が出土しています。

 

ここで、剣崎長瀞西遺跡の全体図を見ておきます。

(三浦 茂三郎氏「八幡台地の渡来文化」P5)

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I区、II区、III区と別れています。

 

I区の古墳配置図も見ておきます。

(三浦 茂三郎氏「八幡台地の渡来文化」P5)

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10号墳からは、金製の垂飾付耳飾りが発見されました。

これは、純粋に当時の朝鮮のものと判定されています。

 

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 (高崎市教育委員会資料より)

 

13号土壙からは、馬の轡(くつわ)が発掘されました。

ここからは、馬の馬具も出土しています。

また馬の歯も出土しました。

 

馬は、14,5歳でした。一頭分が、四肢を下に向けて埋葬されました。

ただ残っているのは、歯のみです。

 

114号住居からは1歳未満の子馬の馬骨一体分がでました。

一体分といっても、残っていたのは、顎、歯、大腿骨の骨でした。

 

◆ 八幡台地の韓式系土器

この狭い範囲の八幡台地ですが、韓式系土器に関連する遺跡が4か所あります。

中原遺跡、七五三引遺跡、八幡遺跡、八幡六枚遺跡、

タタキ紋のある韓式系土器、甕や甑(こしき)その他小片がでています。

 

先生はこれらを詳細に論じた後、

群馬県全体の渡来人の足跡に言及しています。

韓式系土器が出土するのは、

子持山南麓から榛名山東麓、

また榛名山山麓から井野川中・下流域、

そして藤岡方面に広がっています。

 

◆ 最後に、先生は、渡来人の果たした役割について

まとめとして若干の考察をしています。

海を渡ってきた渡来人は、

それまで日本に無かった様々な文化や技術を伝えています。

ー須恵器の生産(登り窯をつかって高温で焼く)

ー鉄器生産(朝鮮半島から輸入した鉄素材を炉で熱し。

鎌や鏃(やじり)などの鉄製品を作った。)

ー竈(かまど)の導入と生活様式の変化

(今までの炉に代わって煮炊き用に壁際に作られた。

調理器では、蒸し器の甑(こしき)が使われ始めた。

ー馬生産(日本には、元来、馬はいなかった。

そこへ馬を導入した。軍事、運搬、農耕などに大転換をもたらした。)

 

◆ 渡来人のルート

高田貫太氏の意見を参照しながら、

先生は、東日本の垂飾付耳飾りの分布を通して、

古東山道を帰還ルートとして、

そこから若狭湾沿岸地域と上毛野地域を結ぶネットワークの存在。

群馬と朝鮮半島を結ぶ一つのルートとして、

古東山道ー分岐した道ー若狭湾ー朝鮮半島、

こういうルートがありえたという推論を展開しました。

ー終わりー