◆「奈良大学学友会」との交流(鎌倉における関東支部講演会)
奈良大学学友会の関東支部が研究発表会と特別講演会を開催しました。
学友会の方々から招待を受け、
鎌倉の会場まで出かけました。
会場は、学友会の方々で満員で、
奈良大学の卒業生の方々の研究発表会があり、
それに続いて、奈良大学の国文科の木田 隆文先生が特別講演を行いました。
木田先生の所属は、国文学科で、
専門分野は日本近現代文学です。
日本の古代史を中心に勉強している私たちから見ると、
今回の講演はかなり異色で、
はて、どうしたものか、
私たちの知的好奇心を満たすに足るようになるかどうか、
はなはだ危ぶむところでしたが、
意外なことに、今回の近現代史の話には、大変な感銘を受けました。
(講演をする木田先生 2023 2 25)
講演のタイトルは「海の彼方の日本文学」
今回の講演内容の三本の柱として、
◆中国および東アジア各地での日本語文学
◆文学・映画とプロパガンダ
◆出版と検閲...文学表現と歴史の関係
を中心に据えて、講演は進みました。
■木田先生の強調した点
第二次世界大戦の時代、上海や台湾、満州において、
日本の占領地では、日本軍部が中核となって大政翼賛会が組織されます。
この組織のもと、日本のすべての組織は再統一され、
大政翼賛会の下部組織となります。
芸術の組織も言うまでもありません。
芸術は、その独立した芸術そのものの世界を失い、
軍部のプロパカンダをもっぱらにする宣伝機関となり果てます。
が、それを行いつつ、芸術家魂というものは厳然と残っていて、
大組織の原理原則に盾をつくこともしばしばです。
上海では、大政翼賛会下のもと、上海文学という雑誌まで刊行されます。
武田泰淳という作家もこれに寄稿します。
「中秋節の頃」という作品が発表されます。
主人公は、日本の文化工作機関に勤務しながら、
中国人との交流と付き合いの中で、
自身の中国人に対する無理解さと、
日本の文化工作に嫌気がさします。
日本の軍部のプロパガンダには、ほとほと弱り、
軍部の指導する文化の国策的宣伝には批判的になっていきます。
日本人の海外における日本文学の創作は、
表面的には、軍部への追随を表明しつつ、
内心は、その逆へと向かっていきます。
ここが芸術の面白いところです。
芸術は、芸術以外の目的に合致しません。
いわば独立した精神そのものの現れです。
芸術家たちは本能的にそのことを知っていて、
表面はどうあれ、本能は表れてきてしまいます。
ただ、惜しいかな、日本の敗戦とともに、
これらの海外文学は閉鎖され、破棄され、あるいは隠蔽されました。
が、これらの文学には、当時の生活と日常の感情がそのまま表れております。
異なった時代になると、異なった時代のイデオロギーが支配します。
そのイデオロギーに則って、私たちはその時代の記録を査定します。
ここが難しいところです。
その時代には、その時代の空気があり、
空気の中に身を置かないものには、
なかなかその時代の人々の苦悩がわかりません。
先生は最後にこう結びます。
「歴史は各時代の価値観やイデオロギーによって評価が変わる。
後世の人々が、出来事を再審するためにも、資料(史料)の発掘・
整理・保存と、それを時代に受け渡すことが重要。」
ー終わりー


