栄月日記
花粉症
今シーズンの花粉症が終わっていました。
「花粉症明け」は私にとって「梅雨明け」より嬉しくて、「徹夜明け」と同じくらいの解放感があります。朝、アラームに設定した ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「旅立つ君へ」で目が覚めたとき、前日の夜に薬を服用しておらずともスッと鼻が通っていることがどれだけ幸せなことか。雨で濡れた路面や焼き立てのトーストの匂い、何度洗っても取れないエプロンの山椒の香り、なんでもない匂いが感じられることがどれだけ喜びに溢れているか。今日も空気が美味しい。ありがとう。ちょうど2日前、耳鼻科に行って処方箋を貰い、調剤薬局で1ヶ月分の飲み薬(柿ピーに入っているピーナッツくらい大きい)と2ヶ月分の点鼻薬(野球の主審が使うインジケーターみたいな形)を手に入れたばかりではありましたが、それも瑣末なこと。瑣末なことなのです。来シーズンまで台所の棚の奥、正露丸の後ろあたりにしまっておけばよいのです。
梅雨
梅雨入りしてしばらく経ちますが、例年に比べて過ごしやすい日が続いているように感じます。
外階段の壁にどんぐりほどの小さなカタツムリがいました。そのカタツムリは私が階段を通るたびにいます。いつも殻の中に閉じこもったままで。あまりに動いた形跡がないので一日中じっとしているのかもしれません。あるいは私が毎日仕事に向かうように、決まった時間にどこかへ食事に出かけて、日が暮れる頃になると1階と2階の間の踊り場に戻ってきているのかもしれません。
小さいカタツムリですが、毎日の朝と夕方、階段を登り降りするさいに見かけるので、段々と私の意識の中でのウエイトは大きくなっています。
知らない定規
最近、映画館で映画を観るようになりました。これまでとの違いは少し気になった映画でも観に行くようになったことです。
今年の4月、なんとなくで観た『花束みたいな恋をした』が私の映画ベスト1になったのがきっかけ。こんな出会いが
あるのかと思ったのと同時に、こんな出会いをまたしたいと思ったのです。
先月には『フリー・ガイ』という映画を観ましたが、これもまたベスト1にしたい映画でした。
「最も面白い映画の一つ」と呼べるものに立て続けに出会いました。
映画も漫画もアニメも小説も曲も、野球やボーリング、名所であったり絶景であったり、なんならラーメンなんかであっても、一度味わった感動体験が忘れられないから繰り返し見たり聞いたりやったり食べたりするのだと思います。
映画を観る本数が徐々に増えるにつれ、体験したことのないものにも興味の裾野が広がります。
つい先日『オールド』というスリラー映画を観ました。スリラー映画は初めてで、劇場という空間も相まって異様な恐怖感でしばらく感想も思い浮かんでこないのです。どう咀嚼すれば良いのだろう、と。
私は『花束みたいな恋をした』や『フリー・ガイ』がとても面白いと思いましたが、『オールド』に関しては作品を測る定規をそもそも持っていなかったのです。その段階で「理解ができない=つまらない」と切り捨ててしまうのは、今後の映画鑑賞人生において大きな損失である可能性もあります。好きなジャンルでなければ少しずつフェードアウトしていけばいいのであって、何も切り捨てることはないように思うのです。
映画の内容についてはまだ感想をまとめられないのです。同ジャンルの他作品を観ていけばわかることもあるかもしれませんが、このままフェードアウトということもあるかもしれませんし、それこそ、もう一度あの異様な恐怖体験をしに劇場に行くかもしれません。
ともあれまだまだ観たい映画はたくさんあります。シネマイレージカードも作りましたし。
また「私の映画ベスト1」に出会うのが楽しみです。了)
御城印煎餅の話
7月4日日曜日大安より『御城印煎餅』を新しく発売しています。
何かとバタバタしておりまして、日記も更新できなければ宣伝もTwitterに画像を何点か投稿するのみとなっておりました。
発売開始から2週間が経ちました。驚くことに遠方からのお問い合わせを多く頂いております。歴史愛好家の方々の中で情報が共有されているようで、私が情報発信を満足にしていないことを恥じつつ、大変ありがたいと思っているところであります。
愛好家の皆様の検討の足しになればと思い今回の御城印の【限定要素】を挙げますと、これまで押されていた岩殿城城主・小山田氏の「丸円に抱き沢瀉」とは違う「印」が押されているのであります。この「印」はこれまで数種類発売されてきた岩殿城趾御城印のどれにも使われていないとのこと。
私自身、蒐集家の端くれであった時期もあるのですが、それもここ最近は鳴りを潜めています。シンエヴァの通称「薄い本」を手に入れられなかったのは痛恨の極みでした。まあ、そんなこともありましょう。公式が画集なりBD初回限定生産版なりで出してくれるのを祈るばかりです。
閑話休題。
御城印煎餅の話でした。煎餅の話もしておきます。プロ野球チップスも神羅万象チョコも、そして御城印煎餅も、お菓子を食べるまでが商品ですよ。よろしくお願いします。よろしくお願いします。
『御城印煎餅』といいつつ中には「御城印煎餅」と「厚焼木の実煎餅」が入っています。
「厚焼木の実煎餅」は当店名物のとっても硬い煎餅です。山椒風味の甘味煎餅で、手焼で三層に重ね焼するので硬くなっています。初めて食べる方はちょっと驚かれると思います。重ね焼きする製法は全国的にも珍しいかと思います。
「御城印煎餅」はクッキー風の生地に白餡を練り込んでいます。山椒の風味はありませんが、当店の「岩殿山せんべい」のアレンジであります。ただ、白餡独特の風味が際立つように調合を改めています。仕上げに「抱き沢瀉」の焼印を押すのですが、焼印の焦げ目が白餡風味の煎餅にメリハリをつけていて、とても良い味になっています。
ポテトチップスが好き、ウエハースが好き。そして、煎餅が好き。そんな方のために御城印はついていませんが煎餅だけの商品もございます。よろしくお願いします。
商品は当店、もしくは大月市観光協会で販売しております。
通販もありますので詳しくは下記リンクから必要事項や注意点を確認の上で、お問い合わせページよりご依頼いただければと思います。どうぞよろしくお願いします。
https://r.goope.jp/eigetsu-seika/free/haisou
以上。
6月のある曇りの夜に100パーセントのゆで卵を食べることについて
6月のある曇りの夜、私は100パーセントのゆで卵を食べました。
それは100パーセントのゆで卵であり、世界で一番悲しいゆで卵でした。
世の中の多くの人がそうであるように、私自身もまた、仕事での立居振る舞いと家なんかでの立ち居振る舞いで違うことが往々にしてあり、例えば、仕事相手との電話と家族・友人との電話での声音であるとか、仕事に行くときは襟付きだけれど休日にはステテコで出かけるだとか、いわば「オンとオフ」での違いであり、挙げだせばキリがないです。
なかでも特に振る舞いが変わってしまうのが卵に対してなのです。
仕事においての私は煎餅の製造量に合わせて仕入れて厳密に在庫管理する訳ですが、プラベートとなると1人で食べ切れもしないのに10個パックを買ってきてしまいます。
それをまあ、なんとかして食べ切ればいいのです。食べ切れない量でも食べていればいつかは食べ切れるのですから。
ですが、プライベートの私は厳密に在庫管理するどころか消費期限も厭わないから手に負えません。私は消費期限が切れたとて、火を通せばいいと思っているのです。もちろん、それは一面の真実ではありますが、消費期限のうちに消費できないことが前提になってしまうと、10個中4個くらいしか生で食さないことになります。
そしてたいてい、ゆで卵になります。
10個パックを買ったときには、そうしようと計画していないのに、6個のゆで卵ができるようになっているのです。
消費期限が過ぎた卵たちは小さな鍋に入れて水を張り、蓋をして火にかけて沸騰させ10分ほど放置します。
放置してできる料理が好きで、よく鶏むね肉やささみを一口大に切って沸騰した湯に入れ蓋をし、火を止めて同じく10分ほど放置する、というのをよくやります。こうするとむね肉やささみでもしっとり柔らかで美味しいのです。火もしっかり通ります。焼くとどうしても中に火が通ったかわかりにくく、焼き過ぎればどうしても堅く筋張ったような仕上がりになってしまいますので茹でるのがおすすめです。茹で肉の味付けは塩コショウと香りづけのごま油、ポン酢で。これが美味しい。目につくところに置いてあるものをかけているだけですが。
ゆで卵の一番の問題は、殻にあります。殻を剥くという作業はゆで卵を食べる上で唯一の重労働です。
食べる段階では、食べることだけに集中したい私は必ず殻を先に剥いてしまいます。茹で上がった卵をステンレス・ボールに移して冷水を入れ、その中で殻を剥いていきます。大きなピースで殻がつるりと剥がれたときの快感といったらないです。お風呂に入るまでは面倒だけれど入ってしまえばとてもスッキリ絶対損しない、というような感覚。億劫の先にある幸福。
ただ、ゆで卵は殻を剥いてしまうと(実際のところはわからないですが)足が速くなってしまうように思いますので、めんつゆを使って「づけ卵」にします。
この「づけ卵」がとても美味しい。
タッパで一晩寝かせた卵は半身がつゆの色が染み込んでオメカシします。ラーメンのトッピングや酒のつまみ、なんでもありです。私はその日、カットキャベツの上にまるまるとした「づけ卵」をのせ、づけのつゆを軽く回しかけ、マヨネーズをイタづらにかけるという、健康的なのかそうでないのか判断し難い方法で食べることにしました。
「づけ卵」は箸で持とうとすると跳ね返してくるような、潰れてしまうような危さで、なかなかうまく掴めません。箸を突き刺したり、半分に切り分けるなんてもったいないことはしません。この危うい卵にかじりつきたいのです。
割れるか割れないかの強さで箸で挟み込むと、箸によって白身部分がくびれ、なんとか持ち上げられます。カラダ半分をつゆ色に変え、勢い余ったマヨネーズがかかったお手製「づけ卵」。
思わずにやけてしまう、そんな美味しさでした。
卵の弾力の中に黄身のとろんがめんつゆの味わいと合い、これこそ100パーセントのゆで卵だと感動しました。
かじりついた途端にもう半分の卵は端から滑り落ちてカットキャベツにダイブしていましたが、その行方も気にせず、今回もうまく茹で上がったと自分の才能に感心。濃縮タイプのめんつゆの割り方もベスト。ゆで加減も程よい半熟。半熟。
消費期限切れであるというのに100パーセントの半熟ゆで卵を作ってしまっていました。
火が通っていないのです、「危うい卵にかじりつきたい」どころか「危ない卵にかじりついていた」のです。
昔々、あるところに固茹でのゆで卵を作ろうと思っていたのに100パーセントの半熟ゆで卵を作ってしまい、そうとは知らずに一口頬張って慌てて正露丸を飲み、もう一度茹で直すわけにもいかないとレンジで火を通そうと試みるのも虚しくなかなか黄身に火が通らず、爆発寸前までチンしたら目玉焼きのように表面がパリパリで香ばしい不思議なゆで卵を食べることになった男の子がおりました。
悲しい話だと思いませんか。了)