栄月日記

2023 / 02 / 24
22:00

始まりの日

 

 ポッドキャストで「TAKRAM RADIO」の令和2年12月に放送された回を聞いたところ、コロナの流行が始まった最初の年末であり、その当時の激動ぶりを総括していました。

 店先からマスクがなくなった話を聞きながら、私は、初めてコンビニのレジの天井から透明なシートがかかっているのを見たときを思い出していました。

 

 初めて見た感想は、話しにくいな、ということと、すごい対策する店もあるんだなということでした。

 

 でも、その店舗がすべての発信源であったかのように私には思えるほど、その後私が行く先々で透明なシートが感染対策として使われ今日に至っています。過剰な対策かにも思えたこのシートもいまじゃすっかり風景に馴染んでいて、邪魔になるどころかすっかり使いこなして有料レジ袋の案内やQRコード決済のシールを張っていて、もうシートがない時のことを思い出さなくなりました。

 

 コンビニで透明シートを見たあの日と同じように、交差点で信号待ちをしているとなぜか車のエンジンをわざわざ停止するドライバーがいるなと思ったら車のアイドリングストップ機能だったと知った日や、歩きながら話している人がいるかと思ったらワイヤレスイヤホンで会話しているのだと気づいた日、といったごく個人的な初めてのをがいくつか思い出すことができます。

 記念日でもないというのに、なぜか強く記憶に残っています。

 

 そう、それで言えば、今日もまた始まりの日。ついに花粉症の症状が現れました。こうして日記に残すのも何度目になるか。ここから梅雨の入りまで長い戦いが始まります。

 

 僕が辛いと言ったから二十四日は花粉記念日   了)

2023 / 02 / 15
22:00

4年目の冬

 日々、「厚焼木の実煎餅を焼く」という作業を繰り返していると、毎日同じように作業しようにも天候、気温、湿度といった外的要因によって同じようにはいかないし、体調あるいは気分のような内的要因によってもまったく同じ日なんてないのであるわけで、日々の変化によって煎餅のコンディションは如実に変化していることを実感します。私は機械ではないので当たり前ではあるけれど日々コンディションが異なり、自然もまた日々変わるし、そうなれば煎餅も変わることになる。諸行無常とはまさにこのこと。

 

 煎餅を焼くうえで季節の変化は敏感にとらえなくてはなりません。”湿気”も煎餅の食感を損なうので梅雨なんかは十分注意しなければならないのですが、特に”乾燥”が煎餅の大敵で、硬い硬いと謳っている厚焼木の実煎餅ですら自然と割れてしまうことになります。

 

 昨年の冬、3年目にして初めて大量返品という事態に直面しました。商品が自然に割れてしまうのです。卸先に納品した一週間後には三分の一が返品、ということが続けて起こってしまいました。味や食感といった品質にはまったく問題がないものの割れてしまえば商品の価値はなくなります。売り場に並んでいてもわざわざ手に取ることはないでしょう。きっと私も避けます。この事態を契機に、久助として割れ煎を割安で売るようになったというのは裏話。

 

 当時、なかなか原因が特定できずに返品交換を繰り返していましたが、解決の目が見えたのは春先だったと記憶しています。

 

 それまで焼き加減、火力調整、焼き上げってから袋に入れるまでの時間等々、試行錯誤し最終的には仕込み段階での卵白の量を調整することで解決しました。

 祖父が残したノートの走り書きと壁にチョークで書き殴ったメモ、古くて分厚い文語体のような書きぶりの菓子大全からの学びから、ついに解決したのでした。

 

 そんなこともあり、4年目の秋には”乾燥”に対応した調合によって割れによる返品は全くありませんでした。

 とはいえ、4年目の冬には別の問題が起きないとも限りません。

 2023年1月25日には『最強寒波』がやってきましたし、2月10日には大月市で20㎝を超える積雪がありました。毎年、状況は違います。今年もまた学びがあるのでしょうし、それは今後に必ず活きてくるでしょう。

 いま師がいない私にとって、それはとても不安なことではありますが、元来、辛抱強く凝り性なうえ楽観的なのでそこはなんとかなると思っています。

 

 メフィラス星人の言を借りましょう。「備えあれば憂いなし、私の好きな言葉です。」

了)

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