ノルウェーを巡る旅 

 


ノルウェーを巡る旅


 


20時間の空路、移動の後、ノルウェー西海岸の街 Haugesundに辿り着いたのが昨日の夕方。自転車を組み立てて、活気のない人口35000の街を少し走りながら、ピザ屋で夕食。どうやら私の郷里、岩手県の沿岸部の街よりもさえない感じの街である。しかしそれよりももっと私の気持ちをさえなくさせているのが明日の天気予報。どうやら雨模様らしい。気温も朝に至っては五度らしい。


 


 


DAY 1 2018/6/19


 


 なるほどノルウェーの夜は明るかった、というよりは暗くならなかった。夕暮れが朝まで続く感じだ。


 時差もへったくれもない。とにかく走り出す。そうすれば、いつのまにか土地の時間に体が慣れるに決まっている。それにしてもこの雨はいやだ。一昨年のスイスアルプス越えからのオーストリア、チロル入りを思い出させる。雪混じりの中を夏装備で標高2000mの辺りを彷徨った。あの再現は御免こうむりたい。今日はフィヨルドの標高ゼロ地帯を走るので標高による寒さ心配していないが、六月中旬とはいえ、ここは北国ノルウェー、なめてはいけない。


霧雨の中、漕ぎ出す。今日の目的地は180km先の小さな村、Tyssedalである。


「それじゃあ、再来週の木曜日に戻ってきます!」というと、ホテルのオーナーは、雨の中走り出す私を気の毒そうに見送ってくれた。おいおい、もう少し景気よく見送ってくれよ


 


20kmほど走った辺りで何やら嫌な予感。一度走った道?ではなかろうか・・・


走り始めた街、Haugesundは小さな街とはいえ、ノルウェーではれっきとした都会に属されます。何しろ国民が500万だっていうんですから。自転車旅はそんな都会を出る時は必ず苦労します。幹線道路を車で走るというのであれば方向さえ間違えなければ何ら問題はない町からの脱出なのですが、自転車でとなると少々話が違います。結局、結論は、街を周回するコースを走ってしまったらしいのです。そこからは自転車道が消え、一般道を走ることとなりました。路肩は極めて狭いです。因みに車両は日本と逆、右側通行で、信号はほとんど存在しません。いわゆる、ターンアラウンドという円形交差点です。時計の針とは逆に回ります。左折したくても、まずは右折から始めて270度回転してから右折です。(少々ややっこしいですが=左折となります)


昼過ぎから本降りになりだした雨に打たれながら、自転車を走らせ続けます。


左手には広大なフィヨルドの岩盤山が続きます。その懐には水面を揺らすことのない海が広がっています。内陸にむかってサイクリングを続けましたが、それでもまだ海が続きます。フィヨルドの海は大変入り組んでいて、その海水を四方八方、陸地奥まで届けます。ですから場所によっては、大海(ついつい河口と書きたくなります)がこの流れの右なのか左なのか皆目わからなくなることがあります。川のように流れがないからです。内陸に200km入っても海水が入っているところすらあるのですからビックリです。フィヨルドの岩山は一見、一枚岩のように見えます。1000m級の一個の巨岩の山です。土はまず、見えません。ですから海岸線に沿って作った道路の苦労は相当なものだったはずです。しかしその岩は家々の基礎部分に使われたりしています。その基礎の上にログを組んで強固なログハウスが建っています。木と石の文化といえるかもしれません。


と悠長なことを書いていますが、雨は降り続けていて、足を休めればたちどころに体が凍えます。午前中に100kmをクリアーしましたので何とか、予定通りいきそうです。   


ノルウェー、何がいいかって?いくら夜遅くなっても夜道が明るいってことです!最悪、頑張って走り続ければいいんです。これは、気持ちを楽にさせました。


さて、今日の行程、残りあと20kmほどの地点。下り坂の真っ最中。両手は凍え、ブレーキを引く握力が足りず、半ばやけになって、転げ落ちるように坂道を下っていました。そこの突然、スーパーマーケットが出現!地獄で仏に会ったような気分でした。さっそく、中に入り、甘そうなパンを3個買い、「温かい飲み物はないですか」と聞くと、全身ずぶ濡れの私を見て、レジのおばちゃん、コーヒーマシンのところまで案内して使い方まで教えてくれました。店内には椅子やテーブルといったものがなく、仕方なく、外に出て狭い庇の下で、温かいコーヒーを飲もうと思いましたが、あまりの震えで、コーヒーがこぼれ落ちます。冗談はよせよ!と自分に言いたいほどの震えで、こぼれ落ちるコーヒーは熱く、やけどすらしそうです。口に運ぼうとしても手の震えで上手に出きません。それどころか。口の周りに勢いよく溢れて、これまたやけどをしそうです。飲みたいのに全く飲めないという事態です。結局、ほどよくこぼれ落とした後、やっとありつけたコーヒーでした。


その様子を見ていた完全装備のオートバイ乗りの夫婦。


「あんた、そんなに震えて大丈夫かい?」


「だ、だ、だい、大丈夫っす」と激震え状態、しかも引き攣っていたであろう笑顔で答えました。


しかし、あまり休んでは体が冷えます。手袋を交換(予備装備)しようとしても、手がかじかみ過ぎてそれに5分ほどもかかりました。そんな私の様子をオートバイ乗りの夫婦はじっと見ていました。よっぽど気の毒に見えたのでしょう。しかし私は強がって自転車に跨り「じゃあ、また」といって勇躍、漕ぎ出しました。が、その後ろ姿は自転車ごと大きく凍えていたはずです。


 


そこから5kmほど先には巨大な2本の滝が、ずばり、その大量の水を道路に叩きつけることで有名な場所があります。そこではノルウェーでは珍しい、渋滞が起きていて、皆、路肩に車を寄せて、その様子を写真に収めているのでした。私は下り坂の途中でその絶景ポイントに辿り着きましたが、どうせ全身ずぶ濡れの身、いまさら、大量の水を浴びたところで何ら大勢に影響はありません。滝直下で、滝をちらっと見上げたまま通過しました。しかし、そんな私の様子を写真に収めている人がけっこういました。ちっ、ひとの気も知らないでよ、と半べそ。

 

来年からは車で回るってのがいいかもなあ・・・と弱気にになる自分がいました。

 

 

その夜、辿り着いた宿のシャワーの嬉しいことといったらありません。

 

同室のチリ人が「ハポンがコロンビアに勝ったぞ」と教えてくれました。


 


本日の走行距離 174km

 

 

 

 

 

DAY 2

 

 

 

前日の夕方、同室のポーランド人の青年が「頂上は雪降りでしたよ」といっていた、世界的な景勝地、トロルの舌(標高約1100m)、まで往復約28kmのトレッキングに朝6時出発。多少の雨や雪に会ったとしても、そこを訪ねられる一生に一度のチャンス、逃すわけにはいかない。昨日のサイクリングの疲れがないわけではないが、ハイキングとなると使う筋肉も違うわけで、それほど悪い影響になるとは思えない。

 

普通の人で往復1012時間かかるといわれるハイキングですが、私は半分で終える予定です。

 

宿のすぐそばにバスが来るというのでそれに乗っていざ出発。ふもとの駐車場で下車。

 

売店で食料を調達しようとしたのですが、朝7:00では営業もしていません。リュックには昨日の食べ残しのコッペパンが一個あるだけですが、まあ、大丈夫でしょう。水は流れ落ちる滝の水で問題なし。途中トイレがないというので、無理やり排便を済ませ、勇躍出発!も、いきなりの斜度10%以上の九十九折の激坂、結構ここで出鼻をくじかれ、心まで折れる人もいるでしょう。ワタクシは上着を脱ぎ捨て、登ります。

 

4kmほど登ると、公道(そこは車も走れる)が終わり、いよいよ、本格的トレッキング開始、平坦な岩場を登ります。約2週間後にはIRONMAN RACEを控えていますので、私にはトレーニングを兼ねてのトレッキングです。走れるところは軽く走ります。岩場が多いので踏み固められた道があるわけではなく、ところどころ道に迷いそうになりますが、そういう時は立ち止まり、周囲を見回して、トロルを指す「T」のサインを探します。途中、段差の激しい巨岩の階段がありますが、そこが正念場です。また、2度ほど雪道を歩かされましたが、靴を濡らすことなく突破。川も流れていますが、うまく岩を伝って突破。ワタクシ自転車旅の身なのでトレッキングシューズなどというものは持ち合わせていません。ジョギングシューズのみです。「ちょっと無茶かもなあ」という人もいましたが、無い物はしょうがありません。

 

残り1kmという看板を過ぎ、いよいよだぞ、と思っていると次に現れた看板には「下の駐車場まで13km」という看板!!! 何てこった、一本道のはずなのに。どこかで復路に紛れ込んだらしい。すれ違う人に「あのぉ、道に迷ったらしいのですが」と聞いたところ、「そうだよね、あなた、さっき私たちを追い越したんだよね」と女性。「引き返して、あの3人組を追いかければ大丈夫よ」と教えてくれた。やれやれ。というわけで、2km余計にトレッキング。

 

時々軽い雨にもあいましたが、2km余計に歩いて3時間半ほどで到着。なるほど、世界の絶景のひとつに数えられるだけのところです。垂直に切り立った岩壁から水平に伸びた、まさに舌のように薄い岩塊?の直下は800m何もありません。想像していたことではありましたが、私はそこに立つことはおろか、その岩塊に降りることすらできません。たまたまの裏側がスースーする感覚に襲われます。そこの先端に座り、足をぶらぶらさせたりする人の動作を見るだけでやはりタマタマの裏側が・・・・というわけで、頂上滞在は10分ほどにして、コッペパンを頬張りながら帰路を歩き出しました。すぐに私が間違えた道が現れました。周囲を見回し過ぎて、帰路にあった「T」が目に入ってしまったようです。

 

体力的にはまだまだ余裕があります。登ってくる人たちが私を見て「彼は私たちと一緒に登りだした人よね」などといっている声が聞こえます。

 

高山植物がきれいです。皆、背が低く、小さな花弁で、歩くことに集中していると見逃しそうになりますが、風にあおられ小さく震えるように揺れています。

 

下りは結構、足に負荷がかかります。駐車場まで3時間ほどで到着。合計すると6時間半で終えたことになります。一件落着と思ったら、ふもとの町までのバスがありません。早朝登り始めた人が到着する時間に合わせてバスは夕刻に迎えに来るらしいのです。そこで3時間も待っているよりは、というわけで私は約6kmの下りの道のりを歩き出しました。30km36kmも大差はありません。そのまま夕食の買い出しにも歩き続けて、その日は40kmほどのハイキングとなりました。生涯でこれほど歩いたことがあったでしょうか。

 

 

本日の歩行距離 約40km  やれやれ

 

  

 

 

DAY 3

 

 

 

  同部屋の二人が5時には起きて、トロルの舌に向かったので、私も起きて朝食をして出発の支度に取りかかった。6時半、2日目のサイクリングに出発。寒い、気温は10℃ぐらいだろうか、曇天である。フィヨルドの海岸線沿いを北東に向け、フィヨルド観光の基地として有名なFlamの街を目指す。実際の名はこのaの上に小さな○がつく。意味も読み方も皆目見当がつかない。が、向かう。160kmほどのサイクリングになる。

 

 左に海、右には傾斜地に綺麗に植えられたさくらんぼ畑をみながら早朝のNorwayを走る。32kmほど走って、コンビニ発見。寒いのでコーヒーを探すも見つからず、「ホットコーヒーが欲しいのですが」と女性に訪ねると、付いてこいの仕草。店の事務所のようなところに連れて行かれ、従業員の為のものと思われるサーバーから紙コップに一杯コーヒーを満たして差し出してくれた、「いくらですか」と尋ねると、「ただよ!」といいながら満面の笑み。いやあ、これだから旅はやめられない。いい1日になりそうだ。

 

 あと30kmほどで今日の目的地という辺りで強烈な下り坂が現れ、狂喜乱舞した。自転車乗りには登りの対価としてこれがなくちゃ、やってられない。<この先18%の下り3km>という看板を通過。うひょ~、こりゃ相当強烈な下りだぜ。と思ったのも束の間。どう考えても自転車で下る類の坂ではないことを認識、即、自転車を降りたのでした。20mほど横移動した後、尋常とは思えないヘアピンカーブ、そしてまた20mほど横移動、そしてまた・・・が3kmも続く道だったのです。断崖絶壁に何とか道を作りましたという態です。自転車に乗れば3km常に全力でブレーキレバーを引き続けなければなく、もしブレーキワイヤーが切れようものなら、死しかありません。下り坂を自転車で押して歩くという経験を初めてすることとなりました。しかし何という事でしょう、そんなところに観光バスがやってくるではありませんか!ヘアピンカーブのところでは車体が今にも倒れそうです。腹を擦りそうです。乗客は車内で相当エキサイトしている様子です。自転車を押している私の姿を写真におさめている人もいます。私が生涯で走った下り坂で最も恐怖を感じた坂に違いありません。しかし、最もホッとしていたことは、ルートが逆じゃなくてよかったという事でした。まあ、最も登れませんが・・・

 

 

 

 坂を下り終えるとGudvangenという村に辿り着きます。そこでは恐れていたことが現実となりました。その先のトンネルは自転車走行禁止なのだそうです。今日の目的地Flamに行くにはフェリーを使うかバスという手段しかありません。フェリーはフィヨルドを回りながらのんびり行く観光フェリーです。フィヨルドはもう結構見ましたのでバスにしました。待ち時間に絵葉書を書いて過ごし、やってきたバスの腹に自転車丸ごと放り込んで終了。辿り着いた街が目的地Flamです。世界一美しいといわれるFlam観光鉄道のチケットを片道分買ったら「帰りはどうなさるんですか」と聞かれたので、「走って帰ります」と伝えたら、「はぁ???」という顔をされてしまいました。

 

 

  その日は宿代をケチって、ユースホステル泊まり。

  6人部屋といわれていましたが、入ってみると、何と男女共用部屋でした。20歳代前半のスウェーデン人らしき女性二人がスマホを見ながら何やらキャーキャーいっています。もう一人の女性は香港人でしょうか?その後、インド人かパキスタン人らしき若い男が私の向かいのベッドに来ました。私は早々と食事を済ませ、ベッドに入り、その後すぐに寝てしまったようでした。ところが何時ごろでしょうか、目が覚めてしまいました。その理由はすぐにわかりました。向かいに寝ているインド人かパキスタン人がたてる強烈ないびきです。粗末な作りの宿の板張りに響くほどです。しばらく我慢しましたが、収まる様子がないので、意を決して、金を出して借りていたバスタオルを投げつけましたが、いびきは一瞬止んだだけでした。次に枕を投げました。顔面に命中したようで、「うむっ、なんだ」とでもいったのでしょうか。しばらくいびきも収まりました。その隙に私は眠りについたようでした。しかしそれもほんの数十分だったようです。3人の女性たちも寝返りを打ちながら苦悶に耐えているようでした。寝てはいません。寝られるはずがありません。投げるものがなくなった私は立ち上がり、彼の二本の足を思いっきり引っ張りました。すると彼はばね仕掛けの人形のように上半身をムクッと起こし、恐怖におののいている表情を私に向けるのでした。「そのいびきを止めてくれないか、皆、寝られないんだよ!」怒りを込めてというと、まだ、夢の中にいますといった表情で23度首を縦に振るのでした。結局、その晩は彼の足を三度引っ張ることになりましたが、彼のいびきは止まることがありませんでした。三度目、彼の足を引っ張った後に、香港人と思われる女性がムクッと起き上がり、私に近寄ってきて何かを差し出しました。白夜のほの暗い明りを頼りにそれを確認してみると、耳栓でした。「ありがとう!」といって、すぐに耳にぶち込んで寝てみるとなるほど、少しは、効きます。

 

というわけでそれから、明け方まで23時間寝ることができました。

 

 

 

 ひどい夜でした・・・ 宿代をケチった代償は大きかったです~

 

 

 

 本日の走行距離 164km

 

 

 

 

 

 

 

DAY 4

 

 

 

睡眠不足は否めません。しかし、予定はきっちりこなさなければなりません。

 

 

 

今回のこのNorwayの旅だけは毎日の宿を予め日本で予約を済ませていたのです。

  何しろ、Norwayという国、日本とほぼ同じ面積の国に500万人しか住んでいないのです。

  町が少ないという事に等しいわけで、町と町の距離も相当離れています。そうなればホテルも同様に少ないわけで、見つけたホテルに取りあえず泊まっておかなければ、次のホテルまで数十キロという事になりかねません。蚊の大群に襲われながら野宿という経験は若いころ十分に済ませましたので、もう遠慮します。一日の終わりは、汗だらけの体をシャワーで綺麗に洗い流し、旨いビールをあおるという旅に方針転換です。

 

 

 

4日目のその日も結構ハードな1日になるはずです。寝不足のおまけまでついてしまいました。

 

8時過ぎのFlam観光鉄道に乗って、標高867mまで登ります。

 

6月下旬、観光シーズン始まったばかりのNorwayですがもう既に、中国人が大挙してやってきています。のんびり車窓からの眺めを味わおうと思っていても彼らがそうはさせません。高価なカメラを振りかざし、車内を我が物顔で駆け回ります。窓ガラス越しでは良い写真が取れないとかいいながら、私の座っている窓を勝手に開け何枚か写真を撮って、そのままどこかへ行ってしまいます。車内にいるその他大勢の乗客たちもその様子を見て怪訝な顔をしていますが、多勢に無勢、数で圧倒され何もいえません。それと同じことが、全世界で繰り広げられています。全く困った人達です。

 

不愉快なまま、終着駅Myrdal到着。も、寒いです。帰路21kmを走って帰るつもりだったので、薄着です。こうなれば、さっさと走り出すだけです。

 

走りだしてすぐに自転車の集団に追いつきました。あまりの急傾斜に自転車を押して歩いているアメリカ人の集団でした。帰路をマウンテンバイクで下るというのが人気のアトラクションのようです。抜きつ抜かれつを演じながら、最後は私の勝利!21kmを走り切りました。

 

 

 

しかしこの日はそれからが本番です。午後から100km程度のサイクリングが待っています。

 

  隣町まで10kmほど走り、スーパーマーケットで食料を買い込み、外のベンチで昼食をしていざ出発。

 

道が不確かなので、付近で水道工事をしていた若者に聞くと、「ああ、この道をそのまま行けばいいんだけど、山を越える長い道のりだよ」といいながら、表情が曇っています。明らかに気の毒がっている様子です。こりゃあ、相当キツイルートだなと痛感。海のすぐそばからですからきっちり標高ゼロをスタート。

 

すぐ、平均斜度8%の九十九折が始まりました。15km続くとの表示があります!さっきまで休憩していたAurandsの街が瞬く間に一望のもとに眼下に見下ろすことができます。新道は約30kmに及ぶトンネルの道なのですが、トンネルではサイクリングになりません。いくら険しいルートとはいえ景色を眺めながら走ることに意味があります。と、いいながらもあまりのキツイコースに弱音も出ます。まあもっともトンネルは自転車は走行禁止でしょうが。

 

何故か100mごとに路面にペンキで標高表示が書いてあります。多分先週誰かがそのコースをやはり自転車で登ったのでしょう。激を飛ばすようなセリフまで書き添えてあります。車で先導する人が自転車で登ってくる友を励ましたものに違いありません。それにしてもいったい標高何メートルまで登らされるのでしょうか。私の所持している地図(いまだに紙地図派です。といいますか、i-phoneなどというものは所有しておりません。携帯電話の類もですが)には峠の表記が見当たりません。周囲に1600m級の山々があることだけは知らせてくれます。下ってくる車の運転手たちが一応に、驚きと気の毒がる微妙な表情で、坂を登る奇妙な東洋人の私を凝視していきます。誰もがキャンピングカーです。一家に一台といったほどの量でノルウェー人はそれを所持しています。テレビや冷蔵庫を買うようにキャンピングカーを買うのでしょう。それで旅するのが典型的なノルウェー人の夏のバケーションの過ごし方のようです。

 

標高が高くなるにつれて寒くなってきました。当たり前です。それでも登っていますので汗をかきますから凍えるほどの寒さにはなりませんが、風は相当冷たくなってきました。1000mを超えた辺りから眺望の利く広大な平原地帯へと風景が変わってきました。そうなるとますます風は強くなります。1300mを超え、明らかな峠越えといった感じがないまま、いつしか強風吹きすさぶ広大な頂上地帯になりました。その風たるや・・・

 

大きく上り下りを繰り返しますがさすがに大汗をかくほどの登りはもうありません。そうなると一気に体が冷えはじめました。普通100m登ると気温は0.6℃下がるといわれます。1300mを超えましたから、下界が15℃ほどと仮定して、そこの気温は7℃ほど。体感温度は34℃ほどでしょう。路肩に自転車を倒し、持っているすべての着衣を身につけます。この時ばかりは、面倒くさがらずに冬装備を持ってきたことを喜びました。冬装備がなければ確実に凍死していました。背中のリュックから物を出しながらも、風に吹き飛ばされないように手や足、尻ですべての物を確保します。自転車自身が風でじりじりと動かされています。突然、一台のSUBARU車が止まって、「大丈夫かい!」と声をかけてくれました。

 

風に煽られて転んで身動きできなくなっているように見えたのでしょう。

 

「あぁ、ひでえ風だけど、大丈夫だよ」と伝えました。本当は、乗せてくれないか?と頼みたかったのですが・・・

 

横風が自転車をもてあそびます。15%ほどもある下りをブレーキも掛けずに下る恐怖は例えようがありません。そこに横風が加わります。私の後ろを走る車は、あまりに私が右に左に煽られるので追い越せません。当たり前ですがそんな状況ですから私はセンターライン付近を走っています。何しろ左右に23mは簡単に軽く振られます。しかしそんな、後続車の事などかまっている状況ではありません。勝手についてきてもらいます。自分の自転車をまっすぐ走らせるのに精いっぱいです。倒れないようにするだけで必死です。それにしてもそれが向かい風でなかったことは非常にラッキーでした。この旅を通じて9日間、常に南風が吹いていて、北進する私にはいつも追い風だったのです。

 

1300mを一気に下って、夕方、標高ゼロのLaerdalに着きました。そこに宿を確保すればよかったのですが、何しろNorwayのホテルは高いのです。30kmほど西に走ったところに安宿、ユースホステルを見つけ、そこに予約を入れていました。

 

寝不足のまま午前中に21kmジョギングした後、午後から1300mのフィヨルドを越えた夕方頃には当たり前ですが、相当疲労困憊していました。が、¥5000程度の節約をするため、それから尚、30kmのサイクリングを強いられたのです。そして、翌朝はそのコースをまた戻ってこなければならないのです。Laerdalに到着してすぐに、その計画を後悔しました。その30kmの道中、何人もの人に宿の場所を確認しながら慎重に進みました。行き過ぎは最も精神にダメージを与えます。しかし、道を尋ねようにもNorwayには人がいません。何軒の家のドアをノックしたことでしょう。人なんかいやしません。全く困ったものです。やっとの事で30kmを走り終えたころには、正に、精も根も尽き果てた状態でした。おまけに空腹でした。宿のドアをノックしたら「いやぁ、来たんだね」と妙に感心されました。日本から自転車旅行の男がやってくるなんて本気にしていなかったのでしょう。「何か食べる物はありませんか?」と聞くと「ごめんなさいねえ、何もないのよ」といわれました、「コカコーラはありませんか」と聞いても「ないわ」。私は数日前に買ってあった、スライスチーズを貪り食いました。シャワーを浴びる気力もないほどでしたが、ヘロヘロになりながら何とか汗を洗い流し、ベッドに横になって、屋根の下で寝られる喜びを噛みしめていました。そして、¥5000ほどを節約するために30km×2を走るなんて馬鹿げたことは今後一切しないよう心に誓って寝たのでした。

 

 あぁ、昨日も同じような後悔をしてたなぁ・・・

 

 

走行距離 RUN   21km

 

             BIKE  106km

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 DAY 5

 

 

 

まずは昨日走った30kmの道のりを逆戻り。またしても猛省。そして、同じ道を走るっていうのはどうも楽しくない。

 

 

 

途中、1180年建造という教会を見物して、Laerdal着。昨日も寄った観光案内所で、その先のトンネルの事を聞くと案の定、自転車走行は禁止、バスを使えとの事。そこで大粒のイチゴを買い込んでベンチで頬張る。バスの待ち時間にスーパーマーケットで食料を買い込んで、店内のベンチで昼食。

 

バスの腹に自転車を放り込んで、いざ、出発。楽ちんだぜ!嬉しいたらありゃしない!!!トンネルを抜けたバス、しばらく走ると今度はそのまま、フェリーへ吸い込まれました。全く良く出来ています。フィヨルド地帯を効率よく移動するにはフェリーは欠かせません。

 

何故か妙な賑わいを見せるSogndalの街から再び自転車旅です。湖なのかフィヨルドなのかわからない沿岸を走ると、「自転車は右折」のサインがあり、素直に従いました。さすれば、普通、少々勾配がきつかったりしますが風光明媚なところに連れて行ってもらえます。交通量が少ないっていうのが何よりも嬉しいのです。急勾配の道を下って辿り着いたところはフィヨルドの行き止まりでした。あっ、騙された、と思い、さっき下ってきたばかりの急勾配を思い浮かべ、意気消沈。と、そこへ、フェリー着岸。そこで、地図をよくよく見ると当局の意図にガッテン!!!フェリーで対岸へ渡り、のんびり走りなさい、どうせ行きつく先は同じ、Skjolden.。という意味が隠されていたのです。なかなか粋な計らいです。それだったらフェリー代金ももってほしいよなとは思いましたがまあ、我慢。

 

そこから35kmほどの道のりは、左に手を伸ばせば水に触れられそうなほど近くにフィヨルドを見ながらのサイクリング。時々、別荘でのんびりするする人を見かける程度、交通量はほぼゼロです。

 

あと10kmほどで今日の目的地であるSkjoldenと思われた辺りからちらほらトンネルが出現。この旅の為に、前後に灯りを装備していたことが役に立ちました。岩盤を手で堀り進めたのではなかろうかと思われるほど無骨な壁をあらわにしたトンネルです。

 

今回の旅を通して感じたのですが、Norwayにはあまり土がありません。フィヨルドの山に至っては高さ1500m、幅1000mの一個の巨岩とでもいい切っていいほどです。そこで私が辿りついたのが、ノーベルさんが開発したというダイナマイトです。岩盤を切り開いて道を造る、あるいは岩盤を切り刻んで家の基礎に使うには岩を砕く必要があったわけです。スウェーデン出身のノーベルさんですが、隣国Norwayにはノーベルさんのダイナマイトが必要不可欠だったのです。「必要は発明の母」というわけです。この推理には妙な説得力があって、我ながら自画自賛。悦に入って油断していたら、トンネルの前方が真っ暗。どうやらそのトンネルは長めらしい。おまけに途中で曲がっていそうな予感。30年ほど前に旅したアメリカの国立公園内にあったトンネルが思い出されました。そんな瞬間に車が来ようものなら、轢き殺されること必至。慌てて、前後のライトを煌々と点灯させました。完全な闇ですから並行感覚が失われます。壁めがけてライトを照らしていますのでそれで壁との距離を測りながら、壁ギリギリを押し歩くより進む手段はありません。と思っていると、やはり車がやってきました。最悪という状態は、それを想像した瞬間に現実になるという事がよくあることを私は時々経験しています。またしても、その再現です。そうなると、早く車に私の所在を教えてあげなければなりませんから、センターライン付近に一度大きく自転車を押し進め、また、壁際に戻ります。センターライン付近に進もうとしても、灯りを失っていますから全ての知覚は麻痺しています。路面を探る足裏だけが唯一の手段、ではなく足段という事になります。何とか車は私を認識してくれたようです。そしてわざわざ車を停めて、「大丈夫かい?」と声をかけてくれました。Norway人なかなか親切です。結局そのトンネル、2kmほどあったでしょうか。

 

何とか脱出成功。陽光が有り難いことといったらありません。

 

 

 

 夕刻、Norwayフィヨルドの最深部の街、Skjoldenに到着。街というよりは交差点と呼んだ方がいいかもしれません。私が泊まるホテルの他、民家が20軒、それに東洋人がビールを買うのに驚くような店員がいる小さなスーパーマーケットが一軒程度あるだけです。

 

 そのホテルは私のこの旅で最大の贅沢といえるほどのランクに属される宿です。まあ、その街に他に宿の選択肢がないというのがその理由ではありますが・・・。廊下には1850年頃から現代までのそのホテルの姿が写真で残されていて、歴史を感じさせます。

 指呼の間にフィヨルドの波間が見渡せます。大西洋ノルウェー海から200kmほどは内陸に入り込んでいますから、フィヨルドの海とはいっても潮面の変化はそれほどないのでしょう、風による穏やかな波があるだけです。

 シャワーを浴び、ビールを飲み、手洗い洗濯を済ませたらちょうど7:00pmになりました。

 一階のレストランで豪華なフレンチのディナーです。毎日食べるサンドイッチに飽き飽きしているのでとても楽しい食事でした。ワインを飲みながフィヨルドの海とそそり立つ岩山を味わいます。隣のラウンジではパーティーでしょうか相当賑やかです。

 

 「食後にコーヒーをください」というと、「二階のラウンジでお出しします」というので、いわれるまま、そのまま二階へ。なるほど、優雅なソファーがずらりと並んでいて、景観を楽しみながらコーヒーを飲めという趣向らしい。なかなか気が利いている。

 しかし奥のバーラウンジが賑やかだ。ドイツ対スウェーデンのW杯の試合の真っ最中だそうだ。ほとんどの客がお隣スウェーデンを応援しているようだが、ドイツ人旅行者は世界中どこに行ってもいる例に違わずそこにもいるらしくなかなかの盛り上がりである。

 

自室に戻り日記を書きながら明日のコースを確認します。相当な難コースです。標高ゼロのSkjordenから休むことなく1500mまで一気に登ります。頂上付近が北ヨーロッパ最高峰ガルホピッケン峰(2464m)です。こりゃ、早く寝ないと大変です。というわけで、即、就寝。寝ないと戦えません。

 夜半過ぎでしょうか、何故か目が覚めてしました。その原因はすぐわかりました。階下で何やら賑やかなパーティーが繰り広げられているのでした。どうやら私がディナーを食べた会場の横でやっていた宴会の続きのようです。いやいや、困ったものです。1時過ぎに部屋を変えてもらおうかと思いましたが、躊躇われました。あろう事かその宴会は延々3時まで続いたのでした。翌日の行程を考えると絶望的な気持ちになりました。そうしているうちに夜が白々明けるのでした。といいたいところですが、夏の間ノルウェーに夜はやってきません。

 

結局、高い宿泊費を払ったとしても、必ず安眠が確約されるとは限らないという事を学ばされたのでした。宿問題はついて回ります。

 

 

 

本日の走行距離  97km

 

 

 

 

 

 

 

 

DAY  6

 

 

 

 チェックアウト時に昨日の夜の喧しさについて文句の一言でもいってやろうと思ったのでしたがフロントの美しいNorway嬢の笑顔を見るとついついいえなくなってしまいました。

 

 

 

 15分ほど平坦なところを走ったら、即、登り始めました。早朝の空気はひんやりして爽快です。今日も標高ゼロから1300m超まで休むことなく三時間ほど登ります。途中一度だけ豪華なホテルに寄り、水をもらっただけでひたすら登りました。逆ルートで下ってくるサイクリストが4人いて、勇気づけられました。峠付近は二日前と同様、やはり平原地帯になっていて湖が点在していますが、相変わらずの強風地帯。すると突然、交通渋滞発生!

 

もの凄い数の車が路上駐車しています。何事だろうと周囲を見回すと、東側の雪山の斜面で何やら人影が動いています。目を凝らしてみると、スキー客でした。6月の24日だというのに、物凄い混みようです。クロスカントリースキーのようです。さすがスキー大国Norway。カラフルなスキーウェアーを身に纏い、結構なスピードで滑っているのが遠くに見えます。どこから来るにしたって遠いに違いない北ヨーロッパの最高峰の裾野まで良く来るものだなあと感心せずにはいられません。

 

 下りに入ると一瞬たりとも気を抜くことはできません。遠望が利く直線の下りはスピードに気を付けながら、ワインディングが続く急勾配の下りでは路面状況に気を使いながら走ります。その日は日曜日という事もあり、交通量が多かったので尚の事、注意が必要でした。勿論、完全冬装備で下りますがそれでも寒いです。最高速は70km/h!!!はい、転倒したら死にます。

 

Highway5515が交わるLomという街は、思いの外、賑やかな街でした。山登り、ハイキング、クロスカントリーといった人達のベースキャンプ的な街なのでしょう、街も華やかでおしゃれなKafeやレストランがたくさんあり、いい雰囲気です。私はガスステーションの椅子に座り、のんびり日記を書き、人間観察です。Norway人はアイスクリームをよく食べます。いったいどういうわけでしょう?

 

 

 

夕方、3:30pmにはその日の目的地Garmoへ到着。

 

「今晩こちらに予約している物ですが・・・」といって入っていったある建物の中では、皆で、W杯のサッカーを観戦中。「予約?」と何やら、いやな予感。

 

「ああ、あなたが予約を入れたのは、この先300mのところにある、B&Bだよ、左側だから」。と教えていただきました。

 

そしてやっと辿り着いたB&Bは、小さなログキャビンが5棟、Otta川を見下ろすように建つかわいらしい宿でした。私が案内されたキャビンは4人部屋で二段ベッドが二つにキッチン・ダイニングがひとつというこれまたかわいらしい部屋でした。昨日の寝不足もあり、少し体調不良を感じていた私はシャワーを浴び、7時に夕食の予約をし、すぐに寝ました。ひと眠りして目覚めた時には体調もすっかり戻っていました。

 

夕食中は宿のオーナー夫婦とお互いの国について話しながら、のんびりと過ごします。

 

「日本では夏休暇はどれぐらいあるんだい」というので、「5日から7日ぐらいかな」と答えると、「いやいや、夏休暇だよ」と念押しされます。「本当にそのぐらいですよ」というと相当ビックリしています。「ノルウェーでは5週間は休むようにと国からいわれているんだよ」とのこと。そのぐらい休まないことには、心をリフレッシュできないという事が根拠らしいです。なるほどねえ、毎年、5週間も休暇があったら、キャンピングカーで自国を隅々まで見て回れます。

 

そんな、気の良い夫婦が経営するB&B7時頃には何処からともなく現れた宿泊客で全てのキャビンが埋まり、明るい夜が静かに更けてゆくのでした。

 

昨日の夜の乱痴気騒ぎのせいで睡眠不足のまま走り出し、夕方に体調を崩しそうになりましたが、気合いで挽回。今日もきついサイクリングでしたが何とか予定の行程を終了。

 

ホッと一息。

 

 

 

本日の走行距離 100km

 

 

 

 

 

 

 

DAY 7

 

 

 

10時間程度寝たでしょうか、体調も完全に回復しています。B&Bで腹いっぱい朝食を食べ出発します。

 

 

 

朝っぱらから8%の登りが3kmほど続きました。ヘロヘロです。豪快な下りが終わると、何処からか列車の音がしました。この旅で初めて聞く列車の音でした。交通量皆無のT字路の芝生に座り込んで、地図を取り出して眺めてみると、なるほどNorwayを南北に貫く路線でした。それは明後日、私がTrondheimに辿り着いて、Haugesundに戻る時に乗る路線に他ありません。Selというそこの地名を頭に叩き込んでまた、自転車を走らせました。もしかすると帰路、列車の窓からその地点を眺めることができるかもしれません。結果的には見事、果たせたのでした。

 

私は自分の足跡を後日、改めて辿るという行為に何かセンチメンタルな感情を抱きます。これにはいったいどういったことに起因しているのでしょう。正直に申しますと涙すら覚えることもあります。その時頑張っていたであろう自分の姿を回想していることは間違いなさそうです。全く面白い感情です。

 

 

 

午後3:00にはその日の目的地、Dombosに着きました。が、その日の宿を探すのに相当の苦労を強いられました。良くある嫌なパターンです。

 

スキーリゾートと思われるその街のへそ的なショッピングセンター街に着いて、書き上げた絵葉書を出し、Norway人に倣ってアイスクリームを舐め、土産物屋の若い男にその日の宿のユースホステルの場所を尋ねると、「この建物の裏を通って、どこまでも登ってったところですよ」と即答。間違いなさそうです。こういったことには感が働きます。

 

国道を眼下に眺めながら陸橋を渡り、10%はある登りを登り始めました。気持ちはすっかり今日のサイクリングは終了!というお休みモードに入っていますので、キツイことといったらありません。蛇行しながら何とか登ります。いよいよスキーリゾートっぽい佇まいのエリアに着きました。庭の芝生でのんびり日光浴している若い女性に訪ねると「この先よ」と軽い返事。いい感触です。その少し先に、夏の間にスキー場のメインテナンスをしているのであろう作業員を発見して住所を書いた紙を見せると、「ああ、中国人が経営しているあの建物だなあ」といって、「この坂を下って、下り切る前の右側だよ」とこれまた、確信ありげに断言します。しかし、坂を下れという指示にはそう簡単に従うわけにはいきません。何しろ、またの登ってくる羽目にならないとも限りません。すぐそこには相当豪勢なホテルがそびえ建っていますが、ユースホステルと思しき陳腐な建物は見当たりません。そこで、少しだけ坂を下り、手当たり次第、住宅街のドアをノックして聞き込みを開始しました。が、まあ、どこの家も仕事に出ているのでしょう、全く応答がありません。やっと出てきたお婆さんが、聞きづらい英語で坂の上の方を指さします。これで、まず間違いなく坂の上の方にあることは間違いなさそうです。

 

私は道を尋ねるときは必ず数人に聞くことにしています。嘘を教えるという事ではなく、確信がないことを教えられることがままありますから、数人の話を総合して判断するわけです。自転車で旅していると、逆戻りという行為は全く以てマイナスの行為で、情けなく、憎悪すら覚えますから、極力慎重になるわけです。これって、実体験で得られた教訓です。こういう時はスマホのGoogle Mapなどで旅する人では養うことができない感が働く瞬間です。確信を持って教えてくれているのか?それとも自分でも少々不安なのかはその話し方でわかりますし、その話が私の頭の中の方位磁石と合致しているか否か。スマホの地図など持ち合わせない私は自分が進んでいる方向は常に頭の片隅に置きながら旅していますからトンチンカンな方向などを教えてくれた時は自分の感に従って判断できます。

 

 

 

スマホついでにですが・・・さっきの方角を推測する感や、思い出しかけている漢字をメンドクサイのでスマホで確認してしまうとかといった、以前は頭で考えていたはずの作業を今ではスマホが代わってやってくれています。それは便利ではありますが、その便利度と同等量の、本来人間が持っていた感や知識を失っていると私は感じています。

 

 

というわけで、その時はスキー場のメインテナンス作業員の話は間違いだと判断したわけです。おまけにその作業員は地元の作業員とは限りませんから。また戻って、少し坂を登り始めるとさっきの日光浴をしていた若い女性が、まだウロウロしているの?この先だっていったでしょう!といいたげな顔で私を凝視していました。その先に、リフト乗り場の小屋が見え、太っちょのおばちゃんがやはり日向ぼっこをしているのが見えました。因みに、Norwayの人達は陽が出ると、まるで決まりごとのように外に出てくる習慣があります。これ本当です。さっそく、そのおばちゃんに訪ねると目の前にある例の豪華なホテルを指さします。「いやいや、ホテルじゃなくて、ユースホステルですよ」といっても、「だから!」と念押しします。「その大きな木の奥だよ!」最後は半ば自棄になっています。私の話が信じられないのかい?とでもいいたげです。

 

その大きな木に向かって自転車を走らせると、果たしてホテルの看板の下に小さくユースホステルのサインがあったのでした。

 

坂道があったとはいえ、1kmほどの距離にすぎませんでしたが、結局1時間ほどかかってしまいました。やれやれです。そこにさっきの作業員がやってきました。休憩時間だったようです。

 「ここがユースホステルだったんですよ」というと、「ああ、そうだったのかい、まあ、いい運動になったと思えばいいさ」と全く悪びれた様子がありません。運動なら普段から結構やってる方だと思うんですけどねえ、まったく!


チェックインに行くと、「ミスター、ヒロシ・イトウ? 予約がないですねえ」といわれ、そんなはずはありません、とプリントアウトした予約確定の証しを見せると、「ああ、ユースホステルの客ね」といきなり態度が豹変。扱いがゾンザイになりました。部屋に行ってビックリ。素晴らし部屋です。トイレ、洗面所、シャワーが一緒になったその部屋だけで十分生活できそうな広さです。多分、普通にホテルに滞在する客と同じ部屋だと思われます。そんな部屋を安く貸し出すのですから、ホテル側とすればいい気はしないのでしょう。


一日の終わりにいい宿でのんびりするのは至極の時です。思いの外、暑くなりだした、Norway中部の好天にも助けられ、いい旅が続きます。


意味不明なNorwayのテレビを見ながら時間を潰し、7時にレストランへ行って、豪華にディナーです。とそこへ、中国人20人ほどの団体客がお目見え~。まだ旅行シーズンには早く、静かだったレストランが一気に騒がしくなりました。二人しかいないウェイトレスも大忙しです。オーナーと思われる女性もその中国人におおいに気を使い、おおわらわです。果てることない記念撮影に応じながら引き攣った笑顔を浮かべています。とはいえ、その20人が来なければ私を含むたった5人の客だけだったわけですから、商売的には大いに助かったに違いありません、粗末には出来ません。あまりの賑やかさに私以外の4人の客たちは誰もが迷惑顔です。この光景、今や全世界中で繰り広げられています。気が付けばその中国人達、皆揃って、そのホテルのTシャツを着ているではないですか。金の使い方が半端ではありません。やはり大事にされますねえ。


 


本日の走行距離  74km らくちんでした~

 

 

 

 

 

DAY 8

 

 

 

7:00、宿のレストランに食事に行ったのですが、誰もいません。仕方がないので周辺を散歩。ホテルに帰ると、そんなにいたの?ってほどの宿泊客が朝食に長い列を作っていました。例の中国人は見当たりません。まだ寝ているのでしょうか、それとももう出発したのでしょうか。おかげで穏やかな朝食時間を過ごせました。

 

 

 

Dombasの街からしばらく登りが続きましたが、その後は、大平原地帯を物凄い追い風をもらって、時速50km超のスピードで走り続けました。向かい風だったら心が折れていたことでしょう。というわけで、Oppdaleという街に昼過ぎに辿り着いた時には、その日のサイクリングは30kmほどを残すだけとなっていたのでした。速く走ると、早く着く、という事を改めて実感。

 

文句のつけようのない天気です。気温は21℃。湿度も低く快適なサイクリングです。しかし何故か、日差しが突き刺さる感じがします。紫外線が強い?って感じで、高温多湿の日本の夏とは全く逆な感じがします。

 

そんなわけですから、2:30pmにはその日の目的地、Berkakに到着してしまいました。

 

ジョギングシューズに履き替えて、ホテルの裏にある学校の周りを10kmほど走り、6日後のIRONMANレースの調整をします。サッカーグランドでは女子サッカーチームが練習をしています。それが終わると筋トレが始まりましたが、それが、一見してかなりのハードな内容で、俺でも音を上げそう、というかできないであろう内容でした。Norway女子サッカーが強いわけだ、と痛感。

 

W杯の2試合をテレビで見て就寝。

 

 

 

さすがに疲労が相当たまってきていますが、明日はいよいよ最終日です。

 

 

 

本日の走行距離 119km

 

 

 

 

 

 

 

DAY 9

 

 

 

6:30amには起きて、レストランで朝食を済ませ7:30amには出発進行!

 

その日は5日後のレースで身につけるウェアーで走ります。慣れておかないといけません。しかし寒すぎて、上着を羽織る羽目になりました。雲一つない晴天の空とはいいながらもさすが極北の地、朝晩はビリッと冷えます。思えば、旅の初日は氷雨模様で死にそうになりましたが、その後は天気に恵まれました。

 

 

 

この旅の最終目的地、TrondheimNorway建国当時、首都だった都市で、人口16万ほどの港町です。

 

いつもの事ですが、大都市に自転車で入る時はどうも憂鬱になります。交通量が増え、危険度も増します。周りを走る車の速度も上がりますので側道を走っている自転車までもが何故か急き立てられるように速くなってしまうのです。自転車道が完全に完備されている国ではそういったこともないのですが、Norwayはまだそこのところは発展途上。おや、いい自転車道路が出現したぞ、と思うと、それはたった数キロで終了。国道に合流してくださ~いとなることが多いのが現実です。

 

 

 

辿り着いたTrondheim、観光客がたくさんいますが、街自体はどうも活気がありません。

 

テナントの入っていない古いビルが散見されます。田舎では見ることのない物乞いの姿も目立ちます。

 

駅に辿り着いたところで、この旅も無事完遂となりました。自転車を輪行袋に詰め込んで、夕方の汽車を待ちますが、荷物から目を離せません。都会には犯罪が潜んでいますから。

 

一泊二日の汽車の旅に備えて、食料を買い込みます。

 

 

 

結局一度もパンクすることなく旅を終えられました。やれやれ。

 

 

 

本日の走行距離  97km

 

 

 

全走行距離  929km

 

 

 

良く出来ました!

 

 

 

あとは、Haugesundに戻って、3日休憩した後、IRONMAN RACEに参加です。ガムバルゾー!