マスターのひとりごと④

 10/20/2013(sun)



「ドイツ&フランスを巡る自転車旅」





DAY 1  06/03/2013



 Belfort の町を朝のラッシュが始まる前に脱出することにして、早朝の静かな

ダウンタウンをペダルを漕ぐ。

 一昨日の世界ロングディスタンストライアスロンレースの残り香はもうどこにもなく、

ただの忙しない新たな一日がフランスの田舎町にもやってこようとしている。

 そんな中、私はひとり、晴れ晴れとした気持ちで、20数年振りにもなる、

自転車旅行に出た。五日後、そこBelfortに戻ってくるという決まりごとが

あるだけである。背中のデイバッグに五日分の荷物を背負っているだけの身軽な旅に

いざ出発!

 

 昨日まで雨模様だったフランスの北東部、アルザス地方は、その日からしばらくは

晴天が続くという天気予報、 やっと日焼けもできそうだ。

 一路、 北を目指してアルザスからロレーヌへと向かう。

 トライアスロンレースで走った自転車コースを少しであるが重複する。が、いざ走ってみると

そこを走った記憶など全くない。まあそれだけレースに集中してしていたということだろう。

 景色を楽しみながらのんびりと一日100kmほど走るサイクリングにするつもりだったのだが

どうもコースがそうはさせてはくれない。日々のトレーニングとそれほど違わない、

いや、もしかするとそれ以上のサイクリングになってしまっていた。アルザスの山々は、手強い。

 交通渋滞を避けようと朝の5:00にBelfortを出発して、途中30分ほど休憩しただけで

走り続ける羽目になった。山登りなので休憩するタイミングが難しい。

 ふと空腹を感じたがその時は既に、アルザス山中に分け入っていて、食料を購入するタイミングを

逸してしまっていた。こりゃ、辛い一日になりそうだと覚悟を決め山を登る。おまけに寒い。持ってきた

すべてを着込んで、ペダルを踏む。

 やっと山の尾根に辿り着いたようだ。すると今度は風が凄い。一気に眺望が開け、

私がこれから走るであろう遥か彼方の道までも見渡せるが、それは容赦ない、切ない、登りだらけの眺めでもある。

 そこに天お助けか・・・、レストランが現れた。冬はスキーリゾートであるらしいその辺りには大きなレストランが

何軒か並んでいるのだった。地図を覘いてみると、「Le Hohneck」とある。サンドイッチとコーヒーで人心地がつく。

 旅の初日は3:00pmまで走って終わりにし、ホテルでのんびり過ごそうという計画だったので、

ロレーヌ州の「Fraize」という街の観光案内所でホテルを探そうと訪ねると「営業時間4:00pm~」となっている。

観光案内所の営業時間が4:00pmからなんてことが・・・一体全体・・・、と思ったものの、

「慣習は国の数だけある」といった高名な誰かの言葉を思い出し、じっと待ったのでした。

 4:00pmに女性の従業員がやってきたので、英語でホテルの事をを尋ねると「フランス語とドイツ語は大丈夫だけど

英語はねえ・・・」と頼りない。何とか意思疎通を果たして聞き出した結論は、「この街にはホテルはない・・・」とのこと。

30km戻ればあるらしいが、それはさっき、下ってきた激坂を登れということ。そりゃ無理な相談です、おばちゃん。

 「それじゃあ、30km先のSt-Die-des-Vosgesという街まで走らなきゃないわね」。何とも妙な名前の街であるが

どうやらそこまで行くしかなさそうである。まったく走る気を失っていたのですがまあ、基本的に下りでしょうからのんびり

行くことにしましょう。やれやれ。

 その妙な名前の街に着いて、観光案内所に行き、希望の値段をいい、ホテルを尋ねると即答してくれた。それも英語で。

やっぱり都会はそういう点、いい。

 宿に着くと二階に通された。古い建物なので私一人には明らかに広すぎるツイン部屋ですが、

勿論文句などあろうはずななどありません。おまけにそこには浴槽までありました。

日本を出て約二週間振りにゆっくり湯につかったのでした。

 一階にあるバーはホテルのフロントとつながっていて、チェックインをしてくれた若いアルジェリア人と思われる男が

バーテンも兼ねているのでした。読めもしないフランス語の新聞をめくりながら、一日の旅を振り返ります。サイコ―です。

 心地よい疲労と、久しぶりの入浴のおかげでしょう、アルコールが体の隅々に染み渡る様子が手に取るように

わかります。見たことも聞いたこともない名の街のバーで、その日の旅を振り返りながら過ごす夕刻は

例えるものが思い当たらないほど完璧です。レースの為に日本を出て味わった時の解放感も格別でしたが、

旅に出るとそこからまたさらに大きく解き放たれる感じがします。

良い旅の初日でした。


ホテルは朝食込で47.50ユーロ。    GOOD DEAL!!!

本日の走行距離  128km







DAY 2    06/04/2013



昨日の反省から昼食をきちんと準備して走らなければならないと思い、朝食のパンとチーズ、ジャムで

サンドウィッチを作っていざ出発。その後の旅でもそうでしたが、ホテルでの朝食の場には宿の人は誰もいません。

完璧に準備されていますから必要ないのでしょう。そんな訳で、私以外の人も平気で昼食用にサンドイッチを作って

いるようでした。

 その日の旅も坂ばかりです。まあ、山が見たくてそのコースを選んだのでしようがないのですが・・・。

 いきなり舗装が途切れ、ダートが始まりました。ほんのわずかの距離だといいのですが・・・。

何しろ、私の自転車はトライアスロンのレース用に作られた自転車です。タイヤが細く、未舗装の道など

走るようには作られていません。しかしそのダートは延々と続きます。それも急こう配の連続です。

おまけに数時間走って、ひとっこ一人出会いません。まあ私は常々そんなところばかりを選んで走る質なのです。

と、そこに五人の人間が現れました。明らかに人間でした。皆、登山用の杖を両手にしっかり持って歩いています。

出現した私と自転車にびっくりしていました。 

 やっと舗装の道に出て一息。Hegustという地名だけは残っているものの

打ち捨てられた家がたった一軒だけ残っているの場所で昼食です。東部ロレーヌ、天気も最高、快適です。

うとうとしていたら何やら物音。おやおや、自転車乗りがやって来るではありませんか。

よくまあ、こんな山中まで自転車でやってくるもんだと感心していると、

路肩に倒してあった私の自転車に気づいたのでしょう、私を見るなり、

「コンニチハ!」と叫んで通り過ぎていくではないですか。びっくり仰天。

 午後からは山を下ります。夕方、Haugenauというちょっと大きい街でホテルを探します。

 駅前のホテルに飛び込むと朝食付き90ユーロ。昨日のホテルの倍だ!外装のわりには

ちょっと高い気がするが・・・。「少し安くなりませんか?」と英語で値切ると80ユーロになった。

「OK!」という訳で、無事寝る場所を確保。階段を上がるとビックリ仰天。立派な内装でした。

自転車用のスパイクで歩くと、「カチャカチャ」と廊下が鳴ります。部屋は狭いのですが清潔で新しい建物です。

 シャワーを浴びて、街に出、手ごろなバーに入って、黒ビールを2杯飲みました。勿論、その町の地ビールです。

 次は食事する店を探して歩きます。一見して高級そうな分囲気を醸し出しているレストランがありました。

まあ、そんなときの為に、日夜働いているのです。たまには贅沢をしても罰は当たりません・・・ように神様、仏様。

 ワインから始まって、しっかりフルコースを食べたら24.90ユーロ。心配したほどではない。ふー。

 今日も厳しいコースでしたが、良い1日でした。明日はライン川を渡ってドイツ入りです。

 
今日の走行距離  130km





DAY  3   06/05/2013



増水でFERRYが欠航してしまっているライン川にかかる橋を渡り、無事ドイツ入りも、結構難儀した。

地図を見間違えて30kmほど余分に走ってしまうという大失態。ドイツに入ってからどうも事がスムーズに進まない。

まあ、そりゃそうだ、すべての表示がドイツ語に変わったのだから・・・。フランス語もチンプンカンプンだったのだが

ドイツ語も同様にチンプンカンプン。ライン川を渡って、そこにあるはずの、日本語の「ようこそドイツへ!」

にあたる標識すら識別できない始末。それらしい標識があることはあるのですが「Germany」という単語が

見当たらない、というのも、至極当たり前の事なのですが・・・。おまけにもうドイツに入っているというのに、

私はまだドイツの地図すら手に入れていないのでした。フランスではその名にし負う、「ミシュラン」の道路地図が

私を完璧にサポートしてくれました。旅を通して使う地図はひとつの会社のもので通したいものです。途中から

地図の尺度や言語や単純に色合いが変わると何かと不便なことに陥ります。

とはいうものの現実はそう願うように進まないことは国境を越えた途端にはっきりするわけです。

ドイツに入った途端にミシュランの地図を目にすることなどまったくなくなりました。

それでもAchernという街の観光案内所でやっとドイツの地図を手に入れ、ひと安心。

 

 ライン川を渡ってRhelnauという街に入り、そのままドイツの山を目指しました。Achernまで快適な道路です。

しかし路肩がほとんどなく、自転車旅行者には難儀な道のりです。しかし、どうした訳か追い越す車、

対向するする車が私にむかってクラクションを鳴らして行き過ぎます。ふと横を見ると何やら幅3mほどの道路が

今私が走っている道と並行して走っています。草をかき分け

その道路に降りてビックリ仰天「自転車道路」の標識があるではないですか。先ほどらいのクラクションは、

「おい、自転車道路を走れ!」という合図だったという訳です。

 結局、Achernで手に入れた地図を見て驚愕の事実が判明。ドイツには恐ろしいほど完璧に整備された

自転車道路が国土を縦横無尽に走っているのでした。 

しかし、その自転車道路を完全に信用すると思わぬ

ところに連れていかれたりします。

その自転車道路は私のようないわゆるロードバイク乗りの人の

為だけに造られているわけではありません。

そうですマウンテンバイク乗りの人が楽しめるようなコースも取り入れているわけです。

ですから時々舗装が途切れてとんでもないダートになったりします。

私は一度、丘陵地帯に延延と続くにワイン畑の中に

自転車を乗り入れて、エライ目に遭いました。

まあ、そんなこともありますがドイツの南西部の山々は一様に深く、

その辺りに点在する街はどこも一様にかわいらしいたたずまいなのでした。

その日の旅の宿は途中の観光案内所から電話を入れてもらって予約していた、

「SEEBACH」という完全に山の中にある街、街全体が斜面の上に建てられています。

ですから、水平を保っているのは建物の中だけです。一歩外に出ると全てが傾いています!

 




本日の走行距離  81km

 

 

 

DAY 4  06/06/2013