マスターのひとりごと ⑤ (Ironman Swizerland Ⅰ)

 

IRONMAN ZURICH (SWIZERLAND) 参戦記

 

 

 

 スイスからオーストリアを巡る7日間、700kmの自転車旅を終えて、今年の私のIRONMANの地、ZURICHに戻ってきたのは大会4日前の深夜。オーストリアのLINZで電車を一本逃してしまった為、2時間遅れのZURICH着。

 

 「予約していた、HIROSHI ITOですが、私の予約はまだ生きてますか?」というと、

 

 「勿論ですよ、Mr, ITO」という返事でひと安心。7日間の旅に出る前にそのホテルに一泊して、旅で必要な荷物以外は全て預かってもらっていた。深夜着とはいっても首尾は上々。6泊分¥80000弱をカードで払って爆睡。スイスは何でも高いぞー!

 

 翌日、レース会場を下見がてら、走って会場に向かう。この大会はT1T2とも同じ場所にあるので何事も簡単&楽。ところが思っていたよりも少し遠い。とはいってもホテルからは5kmほどか。まあ、レース当日、歩いて行くにはちょうど良い距離だ。

 

レジストレーションを済ませ、200mと離れていないSWIM会場へ向かう。トライアスロンとは関係ない人々も久しぶりの太陽を逃すまいと日光浴に積極的だ。ウェットスーツを着ないでZURICH湖に入る。波が結構高いが、透明度はまあまあ。魚もよく見える。水を飲んでみるが、何か石灰質っぽい味がしてゴクリゴクリと飲めるような代物ではない。湖岸の芝ではトップレスの女性もチラホラ見えるが、これはエチケットとしてじろじろ見るべきものではないような気がして、チラ見で終わり。

 

大会前々日。やることといえば、競技説明会、パスタパーティーに参加することだけ。スイスというお国柄、ドイツ語、フランス語、スペイン語、イタリア語、英語と5か国

 

の競技説明会が行われる。英語の会に参加して帰ろうとしたら突然のシャワー。まあ、1日に2、3回あることなので上がるまで待とうと思っていたら、フランス語の説明会が始まったのでしばらく聞いてみるが理解不能、フランス語手強し。こうなれば、ホテルに帰ってもまたすぐパスタパーティーに戻ってこなければならない。というわけでトライアスロン用品を売っているEXPOのブースを散策して時間潰し。

 

 パスタパーティーではスイスならではの音楽の生演奏で終始、和やかな雰囲気。翌々日の為に、頑張って食べる。喰えない選手は強くなれない。

 

 レース前日は本当にやることがない。まあ、BIKEの調整と試運転ほどか。7日間の自転車旅行に使ったホイールはあくまでも旅用。決戦用のZIPPに交換して、ブレーキの当たり具合を調整。後輪の回りがいまいち滑らかでないような気がするのは気のせいか?空気圧を高めにして準備完了。実際のコースを20kmほど走る。そのコースは7日間の旅の際にZurich脱出の際に走ったコース。路面の状態の良さは日本の比ではない。ほんの少しの凹凸、段差でも必ず注意喚起の表示がされてあり、自転車が大事にされていることがよくわかる。トランジッションバック&BIKE預託にBIKEで出かけ、帰りに明日の朝食のサンドウィッチと今晩の食事を買い込む。円換算で¥2500もする「SUSHI BENTO BOX」を冷蔵庫から取り出す。やはりレース前には飯粒でなければ戦えない。何しろ日本を出てから14日間、飯粒と魚を一切口にしていない。そんな経験は私の生涯で初めてである。冷蔵庫に入っていた「SUSHI BENTO BOX」は想像通り、飯粒がボロボロこぼれ落ちる代物。しかしそうはいってもやはり飯粒、腹に感じる例え難い重量感が良い。胃袋が歓喜している。明日はいつも以上の快便間違いなし。天気予報は曇天。まあ、一度や二度のシャワーは覚悟せねばなるまい。少し緊張感があって11時過ぎまで寝られなかった。

 

 レース当日。腕時計のアラームが鳴る30分ほど前に起床。6時間弱の睡眠は確保できた。問題なし。すでに夜は明けている。サンドイッチ頬張りながら歩き出す。スタートまであと2時間、問題なし。RUNのコース上に設けられているトイレに寄る。快便、問題なし。愛車を点検、問題なし。補給食をBIKEに装着し、2度目のトイレ。そして早めにウェットスーツを着る。何しろ少し小さめ(太った?)なのでちょっと手間取るのである。15分間だけ許されている試泳に間に合わせなくてはいけない。去年のIRONMAN JAPAN以来、1年間振りのウェットだ。入水、首の裏が痛いので少しジッパーを下げ、直す。このまま泳いでいたら大変だった。

 

「スタートまで5分!」。の放送が流れる。

 

10分刻みに設けられた目標タイムの書かれたボードの下に集合する。私は70分の所に行く。この大会のSWIMスタートは8列に並んだ選手が5秒ごとに飛び出す仕掛けになっていて、バトルがそれほど発生しないような工夫がされている。たかが5秒というなかれ、これが完璧に機能していた。心臓がバクバクする間もなく、「GO !」と号令がかかり、湖に駆け出す。が、50mほど進んだ辺りで、心臓バクバク! 立ち泳ぎで呼吸を整える。を3回ほどやってしまった。3.8km、一周回の長いSWIMの旅に出発だ。

 

 過去、6か月、週二回のSWIM トレーニングを欠かさずやってきたのであるが、スイス、オーストリア、ドイツ、チェコの二週間の旅の間では一度も泳ぐことがなかったので、泳力が落ちていることは予想されていたので焦らず、空蹴りになる癖のある左の蹴りを意識しながら、リズム良く泳ぐことに努めた。2.5kmほど泳いだ辺りから進みが良くなった感じがあったが長続きはしなかった。波もそれほどなく、非常に良いコンディションだった。SWIM のゴールが見え始めたあたりから、皆そこを目指すために多少のバトルが発生したが極めて穏やかなSWIMを無事ゴール。腕時計を見ると120‘、遅いなあという印象。遅くても115’程度かと思っていたのですが。

 

 

 

SWIM   12041”   5054歳 79/155人    全体 937/1583

 

 

 

T1。焦らず、のんびりウェットを脱いで、補給を済ませ、BIKEに跨り、180kmの長旅に挑む。湖岸の道30kmほどは完全にフラット。世界中から集まる観光客の声援を受けながらペダルを踏む。スピードメーターは36km/hを指しているにも拘わらず、どんどん抜かれる、参った。一度Zurich湖に別れを告げ、山に入るとますます抜かれる!斜度10%というぶどう畑の中の九十九折を登る、「The Beast」という名物の坂ではごぼう抜かれ。   

 

私の背中のゼッケンを確認したのだろう、追い越し際、丁寧に「MrHiroshi 大丈夫かい?」と声をかけてくれる人までいる。「ああ、今のところはねえ」と返事を返す。その男の背中のゼッケンを見ると60-65歳のエイジの表示。あっという間に見えなくなってしまった。強いなあ。ある女性は、TT Barの間にある、私が自作した補給食を入れておく100均製、針金でできたメッシュの籠を見て、「それは良く出来てるわねえ」といいながら勢い良く追い抜いて行ってしまった。「ああ、俺のアイディアさ」と自慢したのですが多分、聞こえていなかったでしょう(チクショウ!)。その「The Beast」を登り切るとしばらく高原地帯を走ることになるのですが、この辺りの軽いアップダウンが思いの外、キツカッタ。そういったところで実力差が出てしまうわけです。登れば必ず下りが来るわけで、それを楽しみにしていたのですが楽しむどころではありませんでした。前後に選手がいないことを確認して下り始めたまでは良かったのですが、怖いほどスピードが出ていました。スピードメーターをチラッと見たところ70km/hという表示が・・・。路面状態も非常によかったのでそのまま下ります。BIKEごと、体が浮かびそうな恐怖心との戦いです。実のところそれほど戦わなくても良いのでしょうけれども、それは競技者の性です。ブレーキを引きながら下ればいいものなのでしょうが、どうもブレーキを引くことを潔しとしないのが競技者なのです。そのスピードで転倒しようものなら結末は火を見るよりも明らか、リタイヤだけで済むはずはありません。まあ、そこもなんとかクリアー。

 

湖岸に戻ってきて、スタートした地点を通り過ぎると13%の登りが2kmほど続く、「The Heart Break Hill」が待っています。ツール・ド・フランスのDutch Cornerと同じで、登っている坂のその先の道が応援する人の波で見えません。完全に道が塞がれている状態です。嫌がらせを受けている感覚になります。人々は選手にぶつかるほどの近距離で大声を張り上げて選手を鼓舞しますが、選手のBIKEが自分の目の前に来た瞬間には辛うじて道をあけて選手を通すのです。その身のこなしの素早さは驚くほどで、感心させられます。20回目のIRONMAN ZURICH 、応援する側だって20年やってきているわけですので慣れたものなのでしょう。