月いち発信
各職方から現場で学ぶ
10年ほど前に外部塗装のリフォームをしたとのこと。
軒裏の塗装が大きく剥がれ落下、お願いした施工会社は廃業してしまったということで相談を受けて、今回塗装工事を手配し現場を監理しました。
現場を確認するとなぜか内装材を裏側にして「重ねて張り増しているところ」と「そうでないところ」があり、なぜか既存の小屋裏換気孔がふさがれていました。
塗装が大きく剥がれ落ちた原因、下地処理の施工不良か小屋裏換気孔をふさいだことからくるか、両方に対応し工事を進めました。
下地によって塗装の処理が変わります。
下地板材料メーカーは塗装の際は必ず下地処理を行うようにと言い、
専用塗料材のメーカーは必要がないと言い、さて現場はどう対応するか、ということ教えてもらいます。
質の向上や現場の施工性を上げるため建築現場では常に変化していて、各職方に学ぶことが多く、
色々なことが進化していても「現場で学ぶ」ことは今も昔も変わらないことを実感しています。
そして今回は小屋裏換気のチェックや密集市街地での防火対策を総合的に対応をしたことに
「自分(職人)たちだけでは判断できないこと」として建築士が監理することを評価いただけたようです。
座りごこちの確認
造付家具を提案することが多いですが、ダイニングチェアは既製品をお勧めします。
百貨店のインテリアのお仕事では、日本の家具メーカーの多さと素晴らしさを学びました。
写真はマスターウォールのアーム付ダイニングチェアUC3です。
カタログではわかりにくいですが、
フレームの木、背の革、座面の布地、塗装と選べ組み合わせ自由で、
軽く、座面はカバーリング対応で機能的です。
好みや部屋のインテリアに合わせてオーダー出来ます。
最近は「軽い椅子」のご要望が多いので取り上げました。
既製品のダイニングチェアは座面の高さについて選べる場合が多く、デザインにもよりますがカット対応できるものもあります。
椅子は座りごこちに違いがあり、また、人間工学に基づいた座りごこちを追求した椅子もあるので
ネットやバーチャルでなく、是非実物を確かめてから購入してほしいものです。
都内には各メーカーのショールームが点在しています。
自分の感度確認に回ってみるのもお勧めです。
2021年4月から改正建築物省エネ法が全面施行スタート、建て主への負担は?
2016年に閣議決定した地球温暖化対策計画では4部門からなる産業・住宅/建築物・運輸エネルギー転換のうち、住宅/建築物分野でCO2排出量2030年度目安-40%削減が課せられ、いよいよ建築界では来年(令和3年)4月から改正建築物省エネ法が全面施行スタートとなります。
産業部門は-7%、運輸部門-28%、エネルギー転換部門-28%の目標値と比べると住宅/建築分野-40%削減は大きな数値です。建設費はもちろん、義務化される数値チェックなど設計や申請業務増による設計監理報酬増の負担も建て主に課せられます。負担を軽減するため効率化が求められ、法的手続きが容易になる「窓を小さくし高性能なエアコンを設置する」建物がスタンダードにならないよう、これからの場づくりを見失わないことを切に願います。
法律による義務化の性能基準を満たさなくても高窓から入る自然光が天井を照らし、夕方まで照明に頼らずとも部屋全体が明るい。
開放的なコーナー窓は熱損失が大きく基準を満たすには不利な開口部ですが、冬の午後の日差しを長く取れるよう配置計画を工夫するとこの12月でも日中は暖房いらず。夏も日当たりが良いですが庭の百日紅が葉を茂らせ西日を遮ってくれます。
地域や土地の個性を活かし個々の生活スタイルにあった場づくりと、設備に依存しすぎない省エネを考えていきたいと思います。
天井に和紙を張る
天井に和紙を袋貼りしました。
袋貼りとはのりを全面に付けるベタ貼りとは違い、下張りをして仕上げの和紙の四方の先端のみのりを付けて貼る施工方法です。
雨の日はブヨブヨとたわみ、快晴の日はパンッと張った、けれどもなんとも柔らかい表情の天井になります。
楮が入ったものや絵柄のある一見「見栄え」する和紙を選びがちですが、職人さん「この和紙は無地だけど貼りあがった感じは絶品だから!!」おススメ、とても素晴らしい材料と職人技術です。
上記写真は下地の「ちゃちり」を貼ったところ。
日本人の感性の素晴らしさを思い知らされる一面ですが、遠からず対応できる職人さんが居なくなることでしょう。
一度実物をご覧になってみませんか。