おしらせ

2020-01-26 21:46:00

売主(日本人)が海外に在住している場合の,不動産売買登記について

売主(日本人)が,不動産を売却する前に海外に在住してしまい,日本に住所がなくなってしまっていた場合,「印鑑証明書」の代わりに何を取得すれば登記できるのでしょうか?

 

1 この点日本人が海外に住んでいる場合,印鑑証明書のような証明書の発行事務は在外公館(日本領事館等)で行うことになります。

タイ,韓国,香港,フランス,オランダ,シンガポールでは,在外公館(日本領事館等)が印鑑証明書を発行しています。

したがって,これを利用して登記が出来ます。

ただし下記に記載する「署名証明書」とは異なり,有効期限が作成後3ヶ月以内に限られているため,注意が必要です。

 

2 一方,「署名証明書」は上記以外の国の在外公館(日本領事館等)でも発行されており,有効期限の制約もありません。

これには,単純に署名(サイン)を単独で証明する形式のものと,登記の委任状と合綴してセットで証明する形式のものの二種類があります。

ちなみに、委任状と合綴してセットで証明する場合,委任状の日付が売買の日付より前ですと,若干問題が生じます。そもそも売買が成立していないのに、その前に売買の登記を委任するというのは論理的には矛盾するからです。しかし、売買の契約をしてから委任状を海外の領事館で証明してもらうとなると、売買から登記するまでの間が一定期間必要となり、売買した日に登記申請をしたりすることが出来なくなります。

この点、東京法務局ではそういった実務上の要請をふまえて、委任状の日付が売買の日付よりも前でもOKなんだそうですが,それ以外の法務局では事前相談をした方がよいとされています。

 

3 あとは,「現地(外国の)公証人による証明書」も利用することが出来ます。

「公証人」というのは国によって色々と違うようで,日本では基本的には裁判官か検察官だった人しかなれませんが,アメリカではNotary Publicとよばれる資格制になっていて,銀行員の方などでももっておられる方がいらっしゃいます。

そういった方に,登記の委任状に署名し,かつその委任状が書いた署名が公証人の面前で行った「自己の署名」である旨の「宣誓供述書」を添付すれば,印鑑証明書の代わりにすることが出来ます。

ただし,この場合は訳文が必要です。

 

4 最後に,海外在住の日本人が一時日本に帰国した場合,日本人の公証人によって委任公正証書が作成された場合,これを印鑑証明書に変えることが出来ます。

つまり,登記の委任状の内容を公正証書にしておけば,印鑑証明書はいらないということなるわけです。

 

以上いくつかありますが,1と2は訳文をつけなくていいですし,何より在外公館とはいえ日本の政府が発行している書類ですから,一番手間が少なく確実なのかなあと思います。