司法書士とは

≪司法書士の仕事は何でしょう?≫

 

 司法書士の仕事は、大きく3つあります。

①一つは、登記・供託(法務局)に関係する業務(司法書士法第3条1号~3号 法務局へ提出書類の作成・代理)

②もう一つは、裁判・後見等(裁判所)に関係する業務(司法書士法第3条4号~8号 裁判所・検察庁への提出書類の作成,簡易裁判所の訴訟代理)

③最後に、財産管理に関する業務(司法書士法29条1項1号、同法施行規則第31条)

 です。

 

 このうち①「登記に関する業務」は、不動産の売買や、会社の名前,住所,役員の変更などの際に必要な「登記手続」を代理して行う業務です。

  次に②「裁判所に関係する業務」は、一つは簡易裁判所が管轄する事件(140万円以下の民事紛争)の、訴訟や紛争の代理を行います。

 もう一つは、地裁など簡易裁判所以外の裁判所が管轄する事件について、裁判所に提出する書類の作成業務を行います。具体的には,訴状や準備書面など,訴訟を行うにあたって必要な書類を作成する業務です。 

 最後に③「財産管理に関する業務」は、第三者の財産を管理し、その代理人となることが出来る業務です。これには、成年後見や相続財産管理人など裁判所から選任されて行う管理業務と、金銭管理・財産管理の契約を結んで行う任意の管理業務の二つがあります。

 

≪司法書士と弁護士の違い≫

 

 弁護士と司法書士は,ともに「法務省」の管轄する資格職で,簡易裁判所においては弁護士も司法書士も共に裁判が出来るなど似たところが多いため,弁護士と司法書士の区別を一言で説明することは大変難しいといえます。

 この点歴史的にみると,弁護士は「代言人」という,法廷で本人に代わって裁判官や検察官と話をする職業をルーツにしています。

 一方の司法書士は,「司法代書人」という,法廷に提出する書類を作成する職業をルーツにしています。

 このルーツの違いから考えれば,弁護士は裁判所において「代理人」として本人に代わって弁論をする仕事で,司法書士は訴状や準備書面などの裁判書類を作る仕事といった「違い」があるといえるでしょう。

 もっとも裁判の遂行の大半は裁判書類の作成とやりとりですので,弁護士も裁判書類は作ります。一方,司法書士も最近は簡易裁判所のおいては「代理人」になることが出来るので,一定の範囲では「本人に代わって弁論をする仕事」も行います。もちろん「刑事事件」についは司法書士が関わることはまずありませんので,その点での区別は明確ですが,「民事事件」については両者の違いを法令上の業務権限だけで説明すると,かなり分かりにくいように思います。

 

 ただ実際の業務の現場をみると,司法書士と弁護士は対象とする顧客が大きく違うように思います。すなわち,司法書士は主に「個人」や「家庭」の法律専門職,弁護士は「企業」や「事業主」の法律専門職という傾向があります。

 というのも,弁護士という業務は,対立当事者の一方の代理人というのが本来的業務であり,報酬についても,紛争の額が大きくなればなるほど,一方当事者の利益をたくさん獲得すればするほど,報酬額が増えます。これに対し,司法書士はあまり紛争の額が大きくなりすぎたり,激化すると業務の範囲を超えて,業務が続けられなくなります。そのため,常にそうとは限りませんが,概して司法書士は,紛争を拡大させない方向,裁判にいかせない方向に「丸く収めようと」仕事を進める傾向が出てきます。

 そういった傾向の積み重ねの結果,「強い」味方を要求する企業系の問題では,弁護士がこのまれる一方,あまり裁判や紛争の激化を好まない家族や個人の問題では,「丸く収める」方向の業務へのニーズが高く,弁護士よりも司法書士を選択する人が増えるのだろうと思います。(また,もともとの報酬が,一般的に弁護士より司法書士の方が安いというのもあるかもしれません。)

 たとえば,「成年後見人」という,個人に法律専門職がついて財産などを管理する仕事については,「家庭内での問題」がほとんどですので,司法書士が弁護士よりも多く選任されています。

 

 

※参考資料 平成28年に家庭裁判所が選任した成年後見人の立場(職業)の統計