おしらせ

2017-12-10 20:21:00

要らなくなった不動産を、国や公共団体に寄付できるか?

 管理の出来ない山林や原野などを手に入れ(てしまっ)た方が、しばしば要らないので国や公共団体に寄付したいとおっしゃることがあります。

 そのような、寄付は出来るのでしょうか?

 

 結論から申し上げますと、国や公共団体には寄付を受け入れる「義務」はありません。とはいえ、寄付を受け入れては「いけない」わけでもありません。したがって、国や公共団体の意向によって、寄付出来る時もあれば、出来ない時もあります。

 実際私どもが業務の中で関係したところで言えば、寄付を受け入れて下さったときもありましたし、受け入れてくれなかったときも、両方ともありました。ただ、通常はなかなか簡単には受け入れてくれないな、という印象です。

 

 ちなみに、相続人が一人もいない場合、相続財産管理人が選任され、相続財産は国庫に帰属すると法律で定められています。しかしそんな場合でも、かつては、不動産などの現物を国庫に帰属させるのはなかなか大変で、何としてでも売るようにと裁判所から相続財産管理人へお達しがあったそうです(最近はだいぶん緩めになってきたかも。。)。それっくらい国は、不動産を受け入れるのを拒みたがるわけです。 

 

 よくよく考えてみたら、寄付を受けなくて国民の誰かの所有になっていれば、公共団体は「固定資産税」を受け取れるわけで、国や公共団体としてはなるべく誰かに買わせて税金を納めさせないんでしょうね。。。

 

 ちなみに、1960年代から80年代位にかけて、いわゆる「原野商法」がはやりまして、当時これにひっかかって北海道などの遠方の山林や原野をいくつか所有してしまっている方がいらっしゃいます。またそうでなくても、先祖代々山林や原野を引き継いでおられる方もいらっしゃるでしょう。そのような方々の相続の際には、どうしてもこういった遠方の山林や原野の処分が問題となります。

 その場合は、大変困ったことになるのですが、現状では国や公共団体が寄付を受け入れて下さらない場合は、何とかして売るか、誰かに相続してもらう以外に方法がないのが現状です。

2017-12-07 21:12:00

遺言書の取り消しの方法について。

一度書いた遺言書を取り消したい場合、どうすればいいのでしょうか?

 

1 一番、手っ取り早いのは、作った遺言書を破って捨ててしまうことですね。遺言書そのものを世の中から無くしてしまえば、遺言書は書面がないと効力はありませんので、間違いなく遺言を取り消した(というか、「無しにした。」)ということになります。

 ただ、公正証書遺言で作った遺言の場合は、そうは簡単には行きません。というのも、公正証書遺言の原本は公証役場で保管されてあり、しかも名前と生年月日を伝えれば簡単に検索で見つけてしまうことが出来ます。ですから、手元の公正証書遺言を破って捨ててしまっても、遺言書の原本は公証役場で保管されており、かつ簡単に見つけることが出来るので、遺言書そのものを世の中から無くしてしまうことが出来ないのです。

 

2 では、公正証書遺言を取り消すにはどうしたらいいのでしょうか?

 

 この点は、再度新しく遺言書を作って、そこに前に作った公正証書遺言を取り消す旨を記入すれば、取り消された(正式には「撤回」と言います。以下同じ。)ことになります。

 

 そして、その「新しい遺言書」は、自筆で書いた遺言書(自筆証書遺言 以下同じ)でもかまいません。しばしば、公正証書遺言を取り消すには、再度公正証書遺言を作り直さなければいけないと勘違いされる方もいらっしゃいますが、そこはそうではなく、自筆で書いた遺言書で、公正証書遺言を取り消したり、内容を変更することが出来ます。

 

 ただ、その場合いくつか注意点があります。

 

①まず自筆証書遺言は、相続開始後、裁判所の「検認手続」を受けなければなりません。これをしてないと、自筆証書遺言は効力をもちません。

 ちなみに、公正証書遺言は「検認手続」がなくても効力を有するため、せっかく自筆証書遺言を作っても、「検認手続」を受けないと結局公正証書遺言の効力が勝ちになり、公正証書遺言を取り消せないということなります。

 「検認手続」自体は、そこまで極端に難しい手続きとまではいえないので、相続開始後誰かがやってくれれば問題はないのですが、相続人に手間が増えることは事実です。ですから相続人に手間をかけさせたくないのであれば、やっぱり公正証書遺言は公正証書遺言で取り消した方がいい(相続人の負担が減る)とは思います。

 

② また、遺言書は「要式行為」といって、一定の法律で定めた「要式」を満たしていないと有効とはなりません。具体的には、「氏名」「日付」「全文」を、「自筆(手書き)」で書面に書く必要があります。この点、自筆証書遺言は、時々「氏名」「日付」が抜けたりしてしまうこともあるので、注意が必要です。

 あと結構多いように思うのが、遺言書の文章自体の意味が、第三者から見てあまりよく分からない文章になってしまっているケースです。おそらく「遺言書」ということで、肩に力を入れてあれこれ文案を練っているうちに、結局何を言っているか訳が分からない文章になってしまうのでしょう。

 この点、決して法律知識がないと遺言書が書けないわけではなく、そんなに難しく文章を書く必要はないので、自然にご自身の想っておられることを普通の分かりやすい文章にして遺言書を作られるのが、一番いいのではないかと思います。

 

 以上の二点に気を付ければ、自筆証書遺言でも、公正証書遺言を取り消すことは可能です。

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