おしらせ

2019-03-08 22:09:00

新しい外国人の在留資格制度(特定技能)について【飲食店編】

マスコミ等でも取り上げられている,新しい外国人の在留資格制度(就労ビザ)についての,お知らせです。

 

1 まず最初に,これまでもマスコミ等で散々取り上げられてきましたが,新しい在留資格制度(特定技能)という制度が今年の4月からスタートします。

 これに伴い,今まで原則として「専門・技術系」の仕事しか認められなかった外国人が,いわゆる「単純労働」系の仕事も出来るようになります。

 

 ちなみに,これまでは「専門・技術系」の仕事しか認められてこなかった外国人ですが,現在でも①「技能実習生」という制度を利用する場合と,②「留学生」などが「資格外活動の許可」という資格をとって,週28時間の範囲で仕事をする場合には,「単純労働」系の仕事も出来ました。

 最近町でよく見かけるコンビニなどで働く外国人は,主にここの②だと思われます。

 なお,この①と②の労働者の数は,それぞれが,すでに「専門・技術系」で働いている外国人の数を追い抜いており,この「特定技能」の制度が出来る前から,すでに「単純労働」系の仕事に従事する外国人の数は(本来は原則であるはずの)「専門・技術系」の仕事に従事する外国人の数を,ダブルスコア以上の差で上回っていたことになります。。

 

2 さて,新しい在留資格制度が及ぶ範囲ですが,残念ながらまだ全業種ではなく,特定の業種のみです。

 その業種は14業種にわたり,①介護業,②ビルクニーニング業,③造船・船用工業,④航空業,⑤素形材産業,⑥産業機械製造業,⑦電気・電子情報関連産業,⑧建設業,⑨自動車整備業,⑩宿泊業,⑪農業,⑫漁業,⑬飲食料品製造業,⑭外食業,となります。

 ただし,上記の産業にあたればすべて働けるわけではなく,⑤~⑭については,更に「事業者要件」という要件があり,その要件を満たさないといけません。

 たとえば,自動車部品の製造業については,一見⑥産業機械製造業の範囲に入りそうなのですが,厳密には「事業者要件」を満たさないため,今回の「特定技能」のビザでは働けないと考えられています。

 

 また,それぞれの産業分野によって所轄官庁が分かれており,それぞれの所轄官庁で許可要件を上積みしたり,逆に緩和したりしているので,今回のビザの改正は,産業分野ごとに考えていくのが一番いいかなと思います。

 

3 ということで,今回はまず,当事務所の事業系のお客様で多い「外食業」と「建設業」にわけて,まず「外食業」からお知らせしていきたいと思います。

 

4(1)外食業で,今回改正されるビザによって,どのような範囲の仕事が新たに外国人に任せられるようになるか?について

 

 これまでは,飲食店のオーナーは「経営管理ビザ」,コックさんは「技能ビザ」で,長期に日本で働けました。しかし,留学生で「資格外活動の許可」を使ってお店でアルバイトしていた方などが,そのまま卒業後アルバイトと同様の,あるいはちょっとそれより高度な仕事をする場合には,適切なビザはありませんでした。

 これからは,そういった場合でもビザがとれるようになります。

 すなわち,飲食店の接客や,調理の補助,お店の開け閉めやレジ金の管理などの仕事をするために,外国人が就労ビザ(特定技能ビザ)をとることが出来るようになります。

 

 ただし,風営法に規定する「接待」をさせることは出来ません。

 

(2)「外食業」の範囲について

 広く「飲食店」全般が,これにあたります。また「持ち帰り・配達飲食サービス業」も入りますので,宅配弁当などのお仕事もこの「外食業」の範囲に入ります。

 

(3)今回改正されるビザ(特定技能1号のビザ)は,どうやってとるか(外国人がビザをとる「手順」)

ⅰ まず,ビザをとる外国人の方が,以下の二つの試験に合格する必要があります。

  ア 外食業技能測定試験(仮称)

   ⇒現地語及び日本語で試験を行います。

    国内及び国外で,年2回程度実施予定です。

    受験生は全科目を受けないといけませんが,申請時に飲食物調理主体,接客主体を選択することができ,その場合は,選択に応じて配点が傾斜配分されます。

  イ 日本語能力水準

    「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」に合格する必要があります。

    なお日本語能力試験N4というのはそこまで高いレベルではありません。日本語能力試験には,N1~N5まであって,N4というのは下から二つ目のレベルです。(日本語を勉強しはじめて3ヶ月~6ヶ月間程度の学習者が到達するとされているレベルです。)

 

ⅱ 上記の試験にとおったあと,働きたい会社と雇用契約を結びます。なお,外国人は18歳以上でないといけません。

 

ⅲ 雇用契約を結んだあとに,ビザの申請を行います。審査がとおれば,ビザが取得できます。

 なお,このビザ(特定技能1号)の期間は通算で5年までで,それ以上日本に在留したければ,更に難しい試験を受けて,次のランクのビザ(特定技能2号)に昇格させるか,他の「専門・技術系」のビザを取得するなどの対策をうつ必要があります。

 また特定技能1号のビザでは,家族を帯同させることは認められませんので,家族を呼びたければやはり特定技能2号に昇格するか,他の「専門・技術系」のビザを取得する必要があります。

 

(4)雇う側にも条件はあるか?(雇う側が準備しないといけないこと)

 

 実は,雇う側には色々と条件があり,そのすべてを満たすのはそれなりのハードルがあります。ちなみに,ここは詳細に書くとかなりの分量に上るので,一部を以下に列挙いたします。(実際は,もっと他に色々と要件があります。。)

 

 ⅰ 雇用契約が「適切」であること

   「適切」かどうかを判断する基準は,たとえば,

   ・労働基準法その他労働に関する法令に適合している。

   ・更に,日本人と給与や所定労働時間は同条件。

   ・フルタイムの直接雇用。

   ・外国人が一時帰国を希望した場合は,必要な有給休暇を取得させる。

   ・外国人が雇用契約終了時に旅費を持っていなかった場合,それを雇い主が負担する。

   などがあります。

 

 ⅱ 雇い主が「適切」であること

   「適切」かどうかを判断する基準は,たとえば

  ・労働,社会保険,租税に関する法令の遵守をしていること。(つまり,「社会保険」や「租税」の法律もしっかりと守っていないといけません。)

  ・外国人と雇用契約を締結した日前1年以内に,業務不振による整理解雇などをした経歴がない。

  ・外国人と雇用契約を締結した日前5年以内に,外国人の給与未払いや,外国人の旅券や在留カードを取り上げるなどの行為をしたことがない。

   などの「基準」があります。

 

 ⅲ 外国人を支援する体制があること

   たとえば,

   ・過去二年間に中長期在留の外国人の受け入れや管理を適正に行った経験があり

   ・上記の経験のある者を,支援責任者・支援担当者に選任している。

   などがあります。(※参照) 

 

 ⅳ 外国人を支援する計画が「適切」であること

   「適切」かどうかを判断する基準は,

   ・空港に来た外国人を,きちんと迎えにいく体制が整っているか?

   ・外国人の賃貸住宅の保証人になってあげるなどして,住居を確保してあげられるか?

   ・生活・医療の知識,出入国の届出の知識などを,教えてあげられるか?

   などがあります。(※参照)

 

※なお,ⅲ,ⅳの要件については,「登録支援機関」という機関に「外国人の支援」を委託することで,要件を満たすことが出来るように想定されています。そういった意味では,この「登録支援機関」が重要な役割を果たすことになり,もしもその登録費用などが高すぎれば,事実上外国人の受け入れは進まないかもしれません。また,特定技能1号の外国人についてはこのような「支援」が必要ですが,特定技能2号の外国人についてはこのような「支援」は基本的には不要となります。

 

 ⅴ また,外国人を雇用している間は,色々な届出があります。(雇用契約の変更,終了などのたびに届出が必要です。また,定期的に受けて入れている外国人の数などを届けないといけません。)

 

 ⅵ 飲食店の場合,上記に加えて,農林水産省,関係業界団体,登録支援機関その他の関係者で構成される「食品産業特定技能協議会(仮称)」の構成員になって,必要な協力をし,またこの協議会の「登録支援機関」に外国人の支援計画の実施を委託することなどが,義務づけられています。

 

 以上をおおざっぱにまとめると,雇う側は,①まず,「きちんと労働法令などの法令を遵守している」事業主でなければならず,②そのうえで,「外国人の人権」をしっかりとまもる体制を整備しておく(登録支援機関に登録してその「指導」を受けるなどをしている)ことが必要ということだと思います。

 なお私見ですが,上記の②「外国人の人権」関係については,特に注意が必要だと思います。

 実は,これまでの「技能実習生」の制度においても,日立グループなど日本を代表する企業体が「改善勧告」「指導」されるなどしています。(調査対象の会社の7割以上に,「法令違反」が認められています。)

 「法令違反」の内容で一番多いのが「労働時間」で,次が「安全基準」,そしてその次が「残業代等」です。

 残念ながら日本は,先進国7カ国の中で(調査が開始された)昭和45年から現在に至るまでずっと,「労働生産性」については最下位を独走中で,,,その結果一部の会社を除き日本の会社の多くは,日本人の労働者に対してすらなかなか「労働時間」などについての待遇を満足に保障出来なかったと思います。そういう会社の場合,特定技能1号の外国人を採用するとこれらの問題について入管関係法令の観点からもチェックされることになりますので,これからはより注意が必要です。(「労働生産性」の低さを,賃金を抑えた外国人労働者の「数」で補おうとすると,どうしても法令違反にならざるを得ないように思います。)

 

 

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