おしらせ

2018-07-28 09:10:00

会社の「定款」とは何か?について

 会社を設立した際に「定款」というものを作成しますが,これは一体何なのでしょうか?

 

1 まず,法律の理屈でいうと,「定款」というのは極めて重要な書類です。

 時折「定款」は「会社の憲法」という言われ方をしますが,ようするいに「定款」というのは会社の中の「最高規則」なわけです。

 もともと,会社には「会社法」という法律の適用があるのですが,日本は自由主義経済ですので,会社の「自治」というものを幅広く認める必要があります。そのため,「会社法」で会社をがちがちに縛るのではなく,できる限り会社が自由に「会社法」の適用を拒否したり受け入れたり出来るような「自由」を認める必要があります。

 そこで,「会社法」では,仮に「会社法」に規定のあることであっても,(全部ではないですが)かなりの部分で「定款」で自由にそれを変更できることとしています。(定款自治)

 したがって,「定款」というのは会社の自治や自由な運用を実現するために,あるときには「会社法」以上に重要な書類となるわけです。

 

2 ・・・というのが,理屈なのですが,本当に「定款」って重要なのでしょうか?

 

 この点自分が思うに,正直なところ実際問題として日本のほとんどの会社にとっては,「定款」というのは現実には「重要」ではないように思います。

 

 というのも,そもそも「会社法」や「定款」は,主に会社の「株主」「役員」「債権者」の関係を規律する法令や自主規則です。

 

 したがって,それ以外の関係者との間では,「会社法」や「定款」が適用される場面がほとんどありません。たとえば,よく問題になる会社と従業員との関係については,「労働基準法」などの労働法令と「就業規則」などの自主規則が適用されますが,「会社法」「定款」はまず関係ありません。また会社と会社の取引先との関係については,「民法」や「消費者契約法」「下請法」など色々な法律が適用されたり「契約書」が重要な役割を担いますが,「会社法」「定款」については同じくほとんど関係ありません。

 

 そして,日本のほとんどの会社は,取引先や従業員は複数いても,「株主」や「役員」は一人だったり,家族や親族の「名義」をかりているだけで実質は『一人』という場合が多いので,そもそも会社法や定款が問題となる場面があまり存在しないわけです。

 

3 ただ逆に言えば,「株主」や「役員」が複数いる会社や,親族が「株主」や「役員」になっていてかつその関係性に問題がある会社では,定款というのものはやはり「重要」だと思います。

 その場合は「株主」や「役員」が,会社に対して何をいえるか,どういうことが出来るかは,定款の規定によるところが多く,その規定のありかた次第で,誰に何千万何億という「利益」や「損失」が帰属するかを決めてしまう場面もあるからです。実際自分も,定款の規定のわずかな見落としのせいで,会社に対して投資した何千万というお金がほとんど意味のないものになってしまう(せっかく株を購入したのに,株主として会社に何も出来ない)場面に出くわしたこともあります。

 したがって,「株主」や「役員」が複数いる会社や法人の場合は,やはり「定款」というのは相当注意して作ったり,チェックしておいた方がいいんだろうと思います。(契約書と同じで,普段は意識していませんが,「いざ」という時にはガチガチに縛られてしまいます。)

 

 あとは,上記のような意味での「重要性」はないにしても,時折手続きで「定款」というものが必要になることがあります。たとえば,「登記」や「許認可」の手続きをする際に必要となったり,あるいは場合によっては「融資」などの際に確認を求められることもあるでしょう。

 ですから,しばらく定款を使わないでいるうちに,「いつの間にか定款がどこに行ったか分からん」となってしまうと,そういった場面で困ったり,経営者としての「管理能力」を疑われることもあるのではないかと思います。

 したがって,とりあえず会社の設立に際して作られた定款は,(仮に使わないにしても)ファイルか何かに入れておいて,会社の重要書類をおいているところにまとめて保存・保管しておいて,いざという時にはすぐにひっぱり出せるようにしておいた方がいいのではないかと思います。