おしらせ

2018-06-30 18:22:00

ある程度の金額で契約を結ぶときは,必ず契約書をチェック・作成しましょう!

 日常生活のスーパーでの買い物から始まって,携帯電話の契約,生命保険契約の締結,車などの売買契約など,私たちの日常は実は「契約」であふれかえっています。

 

 しかし,このように毎日のように「契約」をしておきながら,「契約書」や「約款」のチェックだとか,作成だとかについは,ほとんど何もしない人が多いと思います。

 正直,自分もインターネットで買い物するときに,いちいち契約関係などをチェックなどしません。。(笑)

 

 ただ,職業柄,そういった契約書や約款をスルーすることで,本当に悔しい思い,夜も眠れないストレスを味わう人を,何人も見てきました。

 結局,いくら「きちんと確認していなかった。」と言っても,契約書にサインしてしまった以上は,原則としてその契約書に「拘束」され,そのときには大変悔しい思いをしたとしても,今更どうしようもないからです。

 そういった経験から考えると,やはり「一定金額」以上の契約をする際には,「契約書」や「約款」はチェックすべきだし,「契約書」がなければ「契約書」を作るべきだと思います。

 ちなみに,どこをチェックすべきかという点については,契約書ごと取引ごとによってそれぞれ違いますが,たとえば典型的な商品のインターネット取引などでは①クーリングオフの有無(解除・解約の規定),②「保証」の有無,その期間の長さ,などは最低限チェックすべきでしょう。

 なお契約書の話とは若干ずれますが,インターネット取引などの通信販売取引の場合,販売業者は「広告」の画面と「最終申し込み」の画面の両方に,「返品は出来ない」旨の表示をしないかぎり,返品に応じなければならず,これが事実上のクーリングオフのような制度になっています(特定商取引法15条の3第1項)。したがって,インターネットで商品を購入する際には,「広告」の画面と「最終申し込み」の画面の両方に,「返品は出来ない」旨の表示があるかどうかを確認した方がいいと思います。もしもその表示がなければ,商品到着後8日以内に返品をすることは可能ですが,表示があれば出来ません。特にパソコン・家具などの10万円単位の商品を購入する際には,きちんと確認することがおすすめです。

 

 以上は個人の取引を前提に書いていますが,事業取引などで,多額の金銭を支払う場合は,契約書のチェック・作成は本当に「必須」だと思います。特に,事業取引は,消費者取引と違って消費者契約法や割賦販売法のような保護してくれる法令がありません。従って,「契約自由の原則」,言い替えれば「自己責任の原則」「弱肉強食の原則」がより強く適用される世界なので,なおさらです。

 

 契約書を作らずに相手を信用して多額の取引をしたところ,しばらくしてから相手に裏切られ,多額の損失を被ったという話は,一つ二つではなく,本当にちょくちょくあります。

 もちろん,日本の契約はほとんどが諾成契約(書面がなくても,合意だけで成立する)ので,仮に契約書がなくても,合意の存在を立証すれば契約の成立を証明することは可能です。ですから,たとえば「Aという商品を買い,○○万円払うという売買契約が成立した。」という最低限度の事実の立証は,納品書や領収書の存在などからすることが出来るかもしれません。しかし,その売買契約の際に「Aという商品は,最低でも3年間は問題なく利用できることを前提で,売買契約を結んでいた」とか,もう少し細かいレベルの合意となると,書面やメールなどで証拠に残っていない限り,口頭の合意だけでそれを立証することは極めて困難です。

 

 そして,そういった細かいレベルの合意や取引の前提(と思っていたこと)こそが,多くの場合紛争の種になるので,やはり「失敗したら,事業に大きなダメージが残るレベル」の規模の事業取引を行うのであれば,契約書の作成やチェックは「必須」で,細かいレベルの合意事項や取引の前提と思っていることまで,しっかりと書き込むべきだと思います。

 そして,そのためにコストがかかる場合には,そのコストは最低必要経費の一つだと思います。逆に言えば,その契約を結ぶことによって契約書作成のコスト(大体は,数万円程度だと思います)を上回る「利益」を出す見通しがないのであれば,そもそもそういう「儲からない」取引の契約はすべきではないと思います。