おしらせ

2018-06-21 06:10:00

相続権のない方(友人,遠い親戚など)が,本人の死後,本人の通帳からお金を引き下ろして,病院代などを支払うことは出来るか?について

 相続権のない方が,本人の死後,本人のお金で,死亡直前にかかった病院代の支払いなどを行うことは許されるのでしょうか?これは,「横領」にはならないないのでしょうか?

 先日,ふとそうした相談があり,本人のお金で入院費などを支払ったことが,あとから親族などから文句を言われないか,心配になっているというご相談を頂きました。

 

 結論からいえば,これはもちろん許されます。

 というのも,死亡直前にかかった病院代(だいたい死亡後1~3ヶ月で請求が来る)は,それが正当な請求である限り,必ず払わなければなりません。もしも払わなければ,遅延損害金がかかり,本来払うお金に支払いが遅れた分の遅延損害金を足して払わないといけなくなってしまいます。

 もしもそういった病院代の請求を,死亡した本人の財産から支払ってあげた場合,遅延損害金がかかるなどの損害が発生したり増えたりすることを「止めて」あげたことになります。

 このような行為は,本人(相続人)にとってもプラス(有益)な行為なので,法律上,第三者が勝手にやっていいことになっているのです。

 

 これは「事務管理」といわれる行為で,法律では民法の697条以下に規定されています。

 なお,事務管理にとしてどこまでやっていいかについては,「処分行為」については本人の追認(同意)が必要となるというのが判例です大判大7・7・10民録24輯1432頁)。

 逆に「保存行為」「管理行為」については,本人の追認はいらないと解されます。そして,債務の支払いは「保存行為」に該当するので,本人の死後に相続権のない方が行っても,問題はないことになります。(ただし,いったん本人の代わりに事務管理を行った場合は,きちんと最後まで継続して行う義務を負います(民法700条)。また,本来払わなくていい債務を支払ってしまったり,どさくさにまぎれてちょっとお金をもらったり紛失してしまった場合などには,責任を負う可能性もあります。)