おしらせ

2018-05-31 00:06:00

相続登記の「義務化」について

 今年に入って,政府や自民党の間で,相続登記の「義務化」の検討が進んでいます。今年の1月に官房長官が「義務化の検討」を表明。今月に入って,自民党の特命委員会が相続登記の「義務化」を政府に提言しました。

 

 実は,自分が司法書士の研修を受けている最中,配属先の事務所の先生は,「相続登記は義務ではないので,すぐにはしなくていいですよ。」とお客さんに説明されていて,自分もそれに影響されて司法書士になってからしばらくの間は「相続登記は義務ではないので,すぐにやる必要はありません。」と言っていましたし,特にそれで困ることもないだろうとも思っていました。

 

 ただ色々と経験を積むと,確かに,相続登記をしないままほおっておくと,結局2代か3代後の子孫の方が,色々と面倒なことに巻き込まれ,結果的に子孫にかなりの迷惑がかかることが多いのことも分かってきました。

 というのも,相続登記をしないでおくと,その子孫(相続権を引き継いでいった方々)全員が,あらためて実印を印鑑証明書を提出して登記をしないと名義を移せなくなってしまうので,代を重ねるごとに相続人の数が増え,時間が経てば経つほど土地の名義を移すための労力が増えるからです。

 実際に相続登記を50年近く放置していたため,相続人がどこにいるか訳が分からなくなって,結果的に土地を処分が出来ず,その土地を長年管理されていた方が大変苦労されるケースに出会うこともありました。50年近く相続登記をしてなかったので,その間3代を経ておられ,しかもそのうち1回は子供がいらっしゃらずに兄弟や甥姪が相続した代があったため,最終的には相続人が30名以上にのぼっていました。しかも,その中には認知症で判断能力がない方がいらっしゃったり,昔仲の悪い親族がいたりとかで,なかなか相続登記が出来なくて土地を処分できず,さりとてこのまま放置して自分の子孫にこういった課題を残したままにしたくもない,といったところで,土地を管理されている方が,大変悩んでおられたのを覚えています。

 ですから,相続登記を義務化しようという意見も,分からなくもないです。

 

 ただ,義務化すれば,その分お金がかかりますよね。問題はそこかなと。

 司法書士からすると,登記って,いつもお客さんから何十万何百万というお金を預かりますが,そのほとんどは「登録免許税」で法務局に支払うお金ばかり。200万円をいただいた登記で,自分の報酬は5万だけだった,なんてケースも決してまれではありません。

 相続登記を義務化することの必要性は分かるのですが,司法書士の立場から言わせてもらうと,「だったら登録免許税は,もっと安くして欲しい」と思う今日この頃です。