おしらせ

2017-09-30 12:09:00

相続放棄は、「相続開始を知ってから」3か月以内にするのが、原則です。

相続財産に債務(借金など)があった場合、「相続放棄」という手続きを裁判所で行わないと、債務を引き継いでしまいます。仮に、相続人同士で話し合って、債務をゼロにしてもらたっとしても、債権者に対する関係では債務はゼロに出来ず、債権者から請求されたら債務を支払わないといけません。

 

ということで、特に相続財産に債務があった場合、「相続放棄」という裁判所で行う手続きは大変重要な意味をもつのですが、この「相続放棄」は条文上「自己のために相続の開始があったことを知った時(起算日)から三箇月以内に」しないといけない(民法915条第1項)に定めがあるので、注意しましょう。

 

 

この「自己のために相続の開始があったことを知った時」というのは、条文の言葉の意味から考えて、単純に「被相続人が亡くなったことを知った日」という意味ではありません。ただ、普通は被相続人が亡くなったことをしれば、その財産を相続することはわかるので、一般的には「被相続人が亡くなったことを知った日」から3か月以内に相続放棄をしなくてはいけないと思います。

 

ちなみに、この点については判例があり「3か月以内に相続放棄をしなかったのが、相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、このように信ずるについて相当な理由がある場合には、民法915条1項所定の期間は、相続人が相続財産の全部もしくは一部の存在を認識した時または通常これを認識しうべかりし時から起算するのが相当である。」(最高裁昭和59年4月27日判決)とされています。

つまり、被相続人が亡くなったことは知っていたが、相続財産が「全く」存在しないと信じるに相当な理由がある場合は、「相続財産の全部または一部を認識できた日」が起算日になります

 

ただ、「相続財産が「全く」存在しないと信じるに相当な理由がある場合」というのも、そうそうあるとは思えません。普通は、完全に1円も残さずにお亡くなりになられる方はいらっしゃらないからです。

したがって、基本的には「本人が亡くなったことを知った日」から3か月以内に相続放棄をしなくてはいけないのが原則と考えた方が無難だと思います。

 

 

なお、「自己のために相続の開始があったことを知った時(起算日)」が何月何日だったかというのは、相続放棄の手続きを行う際に、「自己申告」します。そして通常は、そこに証拠や資料を添付する必要はありません。ですから、放棄の手続きの際に、3か月以内の日付を自分で書いてしまえば、そのまま放棄が認められてしまうケースもあるかもしれません。(だからといって、嘘をいっても大丈夫ですよ、ということではありませんが(笑))

 

 

※いずれにしましても、これらの話は、相続財産に「債務」がある場合には特に重要ですが、プラスの「財産」しか残っていない場合には、そこまで大きな差はありません。

というのも、プラスの「財産」しか残っていない場合には、単純に遺産分割協議で「自分は財産はいらない」といえば、法律的に権利は帰属しないわけで、わざわざ裁判所で手続きをしなくても結論はそう変わらないからです。(世間一般で「放棄」といっている場合の意味は、半分以上はこちらの意味でつかわれていることが多いように思います。)

ただ、この場合は法律上の完全な「放棄」ではないので、何か手続きの際に、また印鑑証明書を出したり、意思確認に応じなくてはいけない「可能性」はあります。そういう意味では、他の相続人と完全に一切関与したくないという趣旨で「放棄」するのであれば、裁判所で放棄した方がより完璧です。

また債務がある場合は、前述のとおり仮に「自分は債務は負わない」と言って他の相続人の了承を得ても、債権者に対してはそのようなことは言えません。したがって、債権者から債務の支払いを請求された場合には、債務の支払いに応じなくてはいけません。