講師(宗夜)ブログ

2023-01-08 20:47:00

●2023年よし庵お稽古初め

2023年の初めのzoomお稽古は鶯の谷渡りでした。私たちがこちらのお点前に向き合うのは今回で3回目になります。

3年という月日を経て朧げながら見えてきたものがあります。

 

最初に目にした時。

『実はこんなお点前もあるんだ。ちょっと見てほしい』と宗嘉から紹介された時。

 

いったい何というお点前だろうか…と驚きました。派手であることにまず驚きました。

そして格好いい。

しかし直感的に危うさも感じました。

 

派手さが目につくけれども、その裏には何か意図があるように思えました。

茶道は単なるパフォーマンスではないという思いから、このお点前は宗嘉による披露に留め、お教えすることは控えております。

 

このお点前を目にして3年。

今年になって、初めて内在する精神性に触れたような気がします。

 

私たちの現実世界では色々なことがあります。

逃げたくなることもあるし、見たくないこともあるし、耳にしたくない言葉もあるでしょう。

 

いっそのこと全てを逆さまにして、

逃げたいなら逃げればいい。

見たくないなら見なくていい。

聞きたくないなら聞かなくていい。

翼を持つ鶯になって、桃源郷に逃げてしまえ。

暖かくて優しい場所。

もう誰からも傷つけられない。

そこでは全てが逆さまなのさ。

今まで良いと思ってきたことが良くなくて。

良くないと思ってきたことが良かったり。

そんなこともあるんだよ。

さぁさ、お茶でも一服お飲み。

美味しいかい。

気持ちは落ち着いたかい。

 

じゃあね、やっぱり帰るんだよ。

時々来ても良いけどね。

やっぱり最後は帰るんだよ。

 

心配しなくても大丈夫。

今度の現実は以前とは違うよ。

見え方が違うよ。

今からあなたは鯉に姿を変えて、滝を遡るのさ。

昇れるよ。ちょっと痛いけどね。

昇ったらね、そしたらね…

思いもよらない自分の姿に驚くと思うよ。

 

皆さま『鯉の滝のぼり』の逸話を聞いたことがあるでしょうか?

水墨画に用いられたり、神社の柱などに彫り飾られているモチーフです。

鯉は滝を遡ると龍となる。

たくさんの魚が滝のぼりに挑戦したけれども、鯉のみが成功し、その後に鯉は龍に姿を変えたという故事に由来します。

登竜門という言葉の基になったもので、立身出世を願う『鯉のぼり』もその象徴です。

 

最初にこのお点前を目にした時、

『なぜ、鯉?』と不思議でした。

3年経ってようやく見えてきました。

 

私は女性ですから、立身出世という気持ちでこの最後の鯉を見ていません。

 

宙を翔ける龍となって、

遠い視点から物事を見てみれば、

大きな岩に見えていたものは実は小石だったのだ。

その先に美しい花畑があったのだ。

 

そんな風に捉えています。

そしてそれはそのまま、私たちの考える茶道です。

 

『ものを見る角度によって人生が変わる』

宗嘉がことごとく口にする言葉です。

捉え方なんだよ。全ては捉え方。

 

きちんとした身なりで茶道に向き合う。

お茶を点てて頂き、味わう。

ほろ苦く、最後に甘みが残る。

次は自分が点てて、召し上がっていただく。

今日のお稽古で出来たところ。

そして出来なかったところ。

どちらも大事。

お稽古も、ほろ苦くて甘い。

帰り道は足取りが少し軽い。

 

そんな時間を共に持てることを、私たちはお稽古の旨としております。

まさにお稽古初めにふさわしいお点前でございました。

ご覧いただきましてありがとうございました。