講師(宗夜)ブログ
所作(49)●忘れる技術
忘れる技術を身につけなさい。
宗嘉先生から度々にわたり掛けられる言葉。
嫌なことを頭の中で繰り返す癖があるね。
どうやらそれは親御さんから遺伝させられたようだ。それ早く治さないと、病気を引き起こすよ。
本当だ。まったくその通りだ。
改善しないと。
だけどこの癖、自分の子どもには遺伝しなかったみたいだ。
子どもは小学生時代にからかわれました。
陰湿ではなかったけれど辛そうな時期もあり、見守る私もいい気持ちにはなりませんでした。
親として出来ることを常に探っていました。
本当はもっと大きな気持ちで
『まぁ、そんなこともあるさ』
と自分の子も相手の子も受け止められれば良かったのですが、そこまでの心の余裕がありませんでした。いつもイライラしていました。
『まったくどういうことなんだろうね!』
自分の子どもに言っても仕方ないのにぶちぶちと愚痴を言っていました。
うん、うん、としばらく子どもは私の愚痴を聞いてくれていましたが、堪りかねて強い口調でこう言いました。
『もういいじゃないか!人間なんだから、たまには誰かをいじめたい気持ちにくらいなるんだよ。その時たまたま僕が目の前にいたんだろ。』
驚きました。
まだ10歳にもなっていない子どもでした。
しかも嫌な思いをしている最中でした。
自分よりもよほど子どもの方が大人でした。
返す言葉は何もなく、その通りだと口をつぐみました。
それから数年経って、さらに驚く出来事が起こりました。
中学1年生の冬休み。
お正月明けに、突然かつてのいじめっ子が家を訪ねてきました。
しかも、いじめられっ子を伴って。
『よう!ゲームしようぜ。あ、こんちは!』
『おう!』
3人とも晴れやかな表情で、懐かしさと共に相手に対する愛情で満ちていました。
3人とも別々の中学に進んでいたので1年近く会っていませんでした。
私はそばにいない方がいいだろうと思い、飲み物とお菓子を出して、そそくさと自分の部屋に籠りました。
リビングから、わいのわいのと盛り上がる声が上がってきます。
そう言えばよくこうやって友達が来てたな。
私も懐かしく思います。
小学生時代は小猿のようにキャッキャ、キャッキャと騒いでいました。
中学生になって声変わりを経た息子たちの笑い声はドスが効いていて『ドドドドド…』と地響きのように笑っています。
(こ、こわ…。まるでおっさんやん。)
おっさん達はマリオカートとスーパーマリオを心ゆくまで愉しみ、お菓子を食べ散らかし、日が暮れた頃に解散しました。
『じゃな。ども、あざーす。』
『おう』
嬉しそうでした。
男の子というものは実にあっさりしたもので、
『またな』でもなく
『元気でな』でもなく
『おう』と『よう』だけで関係が成り立つようです。
相手を見届けることもせず、ドアを閉めたら静かにニコニコしているだけでした。
後にも先にもその子が突然訪ねて来たのは、その日だけでした。
何かの儀式のようでした。
それにしても、よくこの私からこのような性格の子どもが出来たなぁと思い、先生に伝えると…。
『学んだんだね。親を反面教師にして。』
そ、そうですね…。
何にしろ役に立てて良かったです。
人も状況も常に変化する。
水に流すとはこのことか。
嫌な思いは留めず水に流して。
すると次々に水が流れて気がつくと清流になっている。
清流には様々な生き物が集まってくる。
それが豊かな人生を作る。