講師(宗夜)ブログ
所作(22)●私の心を支える言葉①
《偽りても賢を学ばんを賢といふべし》
徒然草 第八十五段の最後の一文です。
目まぐるしい変化の毎日。
時々私は妙に不安になります。
意図せずとも膨大な情報がドッと流れ込んでくる日々。轟音を発する濁流に呑みこまれそうな気持ちになるのです。
自分を見失ってしまいそうな時、自分の正気を保ちたい時に、好きな一文を呟くようにしています。徒然草はとても好きで、時々眺めています。
《偽りても賢を学ばんを賢といふべし》
良い言葉だなぁ、励まされるなぁ、といつも思います。
みんな賢くなりたい。
でも賢くなる前には、賢くない時代がある。
でも良いんだ。
結果が出てなくても、賢くなりたいと思って行動している時点で、実は賢くなっているんだ。
そう言い切っている一文。
まず、リズムが良い。
心にストンと来る。
講師の仕事をしていて一番苦慮するのが、如何にして生徒さんを上昇気流に乗せるか、です。
やる気スイッチと言えるかもしれません。
よし庵での私の担当は、茶道の入門・初級・中級と着付けです。
そしてお行儀とお作法なども担当しています。
教室に入ったらまず手洗いをしてくださいとか、
バッグはテーブルに置かないでくださいとか、
茶室には裸足で上がらないでくださいとか、
貴重品は自分で管理してくださいとか、
返事は『うん』じゃなくて『はい』ですとか…
生活のこまごまとしたことから指導します。
あまり口うるさく言いたくないのですが、すべて茶道に繋がる大事なことですので、面倒がらずに指導しています。
基本的な生活態度が整ってからでないと高価な茶道のお道具を安心して任せられないのです。
生徒様の多くが私よりも年長者です。
最初から素直に聞いてくれるわけではありません。
『あなたに言われなくないわよ』という顔をされることも多くあり、たまに睨まれます。
それでも根気強く指導していると、こちらの熱意が伝わり、徐々に態度が変わってきます。
その変わり方は、劇的です。
まず、外見が綺麗になります。
髪型や服装に気をつけるようになります。
体型がスリムになる方もいらっしゃいます。
お肌が綺麗になった方もいらっしゃいました。
見るからにシワが減って内心驚きました。
成長の上昇気流に乗ると綺麗になります。
しかしそう簡単に上昇気流に乗れるわけではありません。
上昇気流に乗るまでの期間は、人により様々です。
入門後数ヶ月で乗る方もいらっしゃれば、年単位の時間が掛かる方もいらっしゃる。
そして、良くなる前には悪くなる。
講師としてはこの時期が辛抱の時期です。
反抗期のような状態です。
年齢は大人ですが、一旦子どもに戻ります。
『本当にやる気あるのかな…』
そう思ってしまう時もあります。
生徒さまご本人も辛いのだと思います。
大人になってまで注意されたくないのでしょう。
それでも来てくださるのだから感謝しなければなりませんが、ここで迎合してお客様扱いしてしまうと指導になりません。
私たちは指導をサービスとしている業態です。
指導を中途半端にすることは職務怠慢です。
そんな時、この兼好法師の一文が私の心の支えとなります。
驥(き)を学ぶは驥(き)の類(たぐい)。
舜(しゅん)を学ぶは舜(しゅん)の徒(ともがら)なり。
偽りても賢を学ばんを賢といふべし。
驥(き):優れた馬のこと。
舜(しゅん):優れた名君の名前。
たとえ形だけに見えても学ぶことに意義がある。
時代の波を乗り越えて生き残る言葉には、とても力があり、励まされます。
無秩序と思われる中世の時代。
兼好法師の生きた時代は鎌倉時代末期から、南北朝時代と言われています。(1283頃〜1352頃)
為政者や為政の地が変わる、権力闘争の世。
時代の転換期で、先を見通すのが難しい世であったことと思います。
教養人であった兼好法師も、時勢を読み違えないよう苦労したでありましょう。
賢くないと生き残れない時代。
それは今も同じです。
では何をすれば賢くなるのか?
体と脳を正しく使うことだと私たちは考えます。
日本人の体の構造に合った、体の力を目覚めさせる、正しい動き。
まっすぐ立ったり、
まっすぐ座ったり、
まっすぐ歩いたり。
そして心の訓練。
まっすぐな心で、まっすぐに聴く。
時間が掛かっても良い。
最初から出来なくて良い。
真似でもなんでも良い。
《偽りても賢を学ばんを賢といふべし》
とにかく、やる。
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和から学ぶ気品ある仕草 美しい所作教室