講師(宗夜)ブログ
●プレイバック『竹取物語』
ふらりと入った本屋さんで
『ビギナーズ・クラシックス日本の古典』
というシリーズを見つけました。
今回私が購入したのは竹取物語。
やったなぁ、中学校で。
。。。。。。。。。。
今は昔、竹取の翁といふ者有りけり。
野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことにつかひけり。
名をば讃岐造(さぬきのみやつこ)となむいひける。
。。。。。。。。。。
この序文を暗誦する宿題が出て、私は言えなくて立たされたっけ。
改めて読むと、音が素敵。
学校の先生が暗誦させる気持ちが今ではよく分かります。
。。。。。。。。。。。
名をば讃岐造(さぬきのみやつこ)となむいひける。
。。。。。。。。。。。
この一文の『ば』と『なむ』がたまらない。
どちらも強調の助詞だそうで、無くても意味は通じます。
名を讃岐造といひける。
でもつまらない。
ちっとも面白くない。
名をば讃岐造となむいひける。
やっぱりこうでなくっちゃ。
竹取物語は人が人に話して聞かせるために作られた物語で、音になって初めて輝きを増すのだなぁと思いました。
この本は原文と現代語訳が並んで書かれていて、すぐに理解できるところ、時代背景を詳しく説明してくれているところなどに優れています。
例えば、竹取という職業について。
稲作中心の社会の中では身分の低い職業であるけれども、竹の神秘性は地域の信仰と結びついていることが多く、竹製の祭具作成は誰でもに許された職業ではない。
竹取のお爺さんは神事に係わる仕事をしていたことになる。
暮らしがつましいのに讃岐という姓を持っていること、
名の造(みやつこ)は『宮つ子』の意味があることから、
お爺さんは寺社経営の竹園を管理する最下層の公務員だったと考えられる。
へぇぇー、そうだったんだ。
すごく身近に感じます。
お爺さんの暮らしぶりや風貌まで目に浮かぶようです。
読み進めると、お爺さんがかぐや姫に結婚を促す場面がありました。
お爺さんは、
『自分は老い先短く、いつまでも養い続けるわけにもいかない。いつかは姫に誰かと結婚して欲しいと思っている。』
とかぐや姫に伝えます。
するとかぐや姫は
『どうして結婚せねばならないのですか?』
とストレートに問うてきました。
『姫は地上の人ではないから分からないかもしれないが、そういうものなのだ。』
と解きます。
『お互いによく知りもしないのに安易に結婚したら浮気されるかもしれないし。結婚後に後悔するのは嫌なのです。』
とまたもやハッキリと意思表示をします。
これが当時の時代背景を考えると、超絶ビックリな内容だと説明されていました。
女は男に養われるもの。
飽きられたら浮気をされるもの。
それをじっと耐えるもの。
そういうものでしょ?
という男尊女卑の時代において、真っ向から『私は嫌です』と意思表示できる存在の鮮やかさ。
かぐや姫が人間ではない異界の人だから許される発言で、竹取物語の作者はかぐや姫の口を借りて痛烈なアンチテーゼを提唱していたのかもしれない、と著者は綴っていました。
また、五人の求婚者の身分設定が凄まじく合理的だそうです。
・石作の皇子(いしづくりのみこ)
・庫持の皇子(くらもちのみこ)
・右大臣阿部御主人(うだいじんあべのみうし)
・大納言大伴御行(だいなごんおおとものみゆき)
・中納言石上麻呂足(ちゅうなごんいしのかみのまろたり)
皇子、右大臣、大納言、中納言と階級別に現れるところ
天竺、蓬莱、唐土、日本、宮中と活躍の舞台も遠近の順に設定されているところ
これらの構成が整然としていて、単なる思いつきや気まぐれで発想できるものではないそうです。
な・の・に
竹取物語はいつ・だれが書いたのか分からない。
おそらく平安時代初期であろうとされています。
原本はなく、書き写されて約1200年の時を経て現代に至るといいます。
最古の書写は、安土桃山時代の里村紹巴(さとむらじょうは:連歌師・茶人で千利休の弟子)の筆によるもので1570年ごろものだそうです。
驚きです。
古帛紗で有名な紹巴織の里村紹巴がここに登場しました。
調べると紹巴は国文学の研究に熱心な臨済宗の僧だったそうです。
ただ、紹巴が書き写した時点でも竹取物語が作られてから700年も経っていました。
不思議です。
ロマンです。
こうやって21世紀の自分が昔の物語を読んで心から楽しめていること。
詳細な説明のおかげで1200年も前の人物の気持ちがちゃんと理解できること。
時代ゞゞで物語を繋いでくれた名もなき多くの人の存在があること。
そこに愛を感じます。
2025年
数年ぶりに日本に清々しい秋の季節がやってきました。
秋を味わって
古典で心を豊かに…
日本独自の愛を次世代に繋いでいきたいものです。