講師(宗夜)ブログ
●毒親とは
朝ドラ『あんぱん』で、準主人公の嵩の母親(松嶋菜々子さん)が『見事な毒親ぶり』とネット上で評されていました。
ねっちょり、ねっちょりと嵩を追い詰めるあたり、確かに毒親。
でも人間は大なり小なり毒を持つ生き物。
そんな人間が子を持てば誰しも毒親になり得るのではないかなぁ、なんて思いました。
そう言えば私の母親も
『勉強しなさい』
とよくヒステリックに叫んでいたなぁ。
あれ、嫌だったなぁ。
同級生も同じような悩みがあったようで、母と喧嘩して泣いて目を腫らした翌日に、友人2人も同様に母と喧嘩して泣いて目を腫らして登校して、皆んなで一緒に笑ったっけ。
毒親でない親を持つ子は存在するのだろうか…
なんて逡巡していた時に読んだ本が『きもの:幸田文(著)』でした。
大正時代の女学生の日常を描いた作品です。
前半は何て事ない、ごく普通の家庭の風景。
3人姉妹の末っ子・るつ子が主人公です。
超美人の長女、まぁまぁ美人の次女、色白だけが取り柄のるつ子。
姉妹の喧嘩とか、友人の付き合いとか、よくある日常生活が描かれています。
後半から一変。
母親が病気で倒れます。
るつ子はおばあさんと一緒に懸命に看病をします。
そんな最中、るつ子は偶然に父親の想い人に出逢います。
母とは印象の違う女性。
若い学生るつ子には辛い出来事がその後も重なりますが、おばあさんの助言を得つつ、意外にも捻くれずに素直に育ちます。
おばあさんの深い愛情がるつ子の心の支えになっている様子。
読者としては
『どうか心優しいるつ子が幸せになりますように』
と願わずにいられないのでした。
ところが…
ふと出会った男性にるつ子は心を奪われて、そのまま押し流されるように結婚に向かってしまうのです。
『あの男はやめておけ』
普段静かな父親が珍しく強い口調で反対し、家族の誰もが口を揃えます。
するとるつ子はグッと口をつぐんでそれ以上話そうとしないのでした。
『頑固に黙りこくるところ、死んだ母さんにそっくりだ』
などと言われ
『そんな風にお母さんのこと言うのひどいわ』
と余計に強情になってしまいます。
しかしどうやら年長者の言葉通り、あまりよろしくない男性のよう。
読者もヤキモキさせられるのでした。
(ああ、これはきっと上手くいかない…)
そんな未来を匂わせつつお話が幕を閉じるのでした。
宗嘉先生にその小説の話と共に私の感想も伝えました。
工藤🔴:主人公は良い子なんですよ。優しくて素直で。それがどうしてハッピーエンドにならないんでしょうね。
先生🟦:可愛がられ過ぎたね。
工藤🔴:え?子供って可愛がって育てるもんじゃないんですか?
先生🟦:幼児まではね。それ以降に優しくされ過ぎてしまうと自我が育たない。
工藤🔴:おばあさんはすごく良い教育をしてくれたんですよ。人のこころの機微とか、細やかな心遣いについての教育を。
先生🟦:それだよ。良過ぎたんだ。親は未熟ぐらいがちょうど良いんだ。親も未熟、子も未熟で、未熟同士が『やいのやいの』とやり合って成長するんだ。
工藤🔴:ということは、毒親は…
先生🟦:分かりやすい毒親の方が立派だよ。
毒親が立派かぁ…
毒にも色々あるから、全ての人に当てはまることではないでしょうけれど…
でも、確かにあんぱんの嵩も、苦悩の後に自分らしい道を見つけました。
自分が一番好きなものを再認識できたのは毒親と言われる松嶋菜々子母のお陰かも知れません。
私の母の『勉強しなさい』も、
それなりに効果があったかも知れないと、五十路になってから認めるようになりました。
私は要領が悪くて効率よく点数を取ることが出来ませんでした。
勉強してるんだけど、点数が取れない。
こだわりが強くて好きなところばかり勉強するから。
要領が悪くてなかなか覚えられないから、長い時間机に座り、何度も何度も勉強する。
大人になっても劣等感が拭えず何度も何度も勉強する。
それが良かった。
気がついたら勉強が好きになっていました。
講師は、一生勉強をし続ける職業です。
この気質を身につけられて助かりました。
もしかしたら
苦労しながら親からの毒を消していく過程が、その人ならではのアイデンティティを作るということかも知れません。
毒を消すのは簡単ではないけれど、だからこそ価値があることのように思います。