講師(宗夜)ブログ
●光明皇后の書風
最近勉強した書道史の中で、光明皇后が取り上げられました。
書店でテキストを購入して眺めているうちに
『あれ?ちょっと待って。いま普通に私は眺めているけど、本当はこれ、すごい事なんじゃないの?』
とじわじわと感動してきました。
正倉院に納められていた国宝がテキスト化されて自宅にていま普通に眺めている。
744年に光明皇后が記したとされる
楽毅論(がっきろん)が本になって誰でも購入できる時代。
すごい時代になったなぁ。
さて、光明皇后の字。
『エネルギッシュ』
というのが最初の印象でした。
夫の聖武天皇の書風とは対照的。
聖武天皇は緻密で繊細で美しい字を書かれておられます。
聖武天皇と言えば、
・度重なる遷都
・大仏の建立
・国分寺、国分尼寺の建立
が有名です。
遣唐使によって大陸から様々な文化がもたらされた時代。
紙と墨が日本に伝わったのは聖徳太子の頃(約100年前)だそうですが、聖武天皇の頃にはそれらが花開いて唐文化が大ブームだったとのこと。
ファッションも建築も食べ物も学問も法律も、そして文字も。
すべてが唐様(からよう)。
その時に伝わった文字とは、書聖『王羲之(おうぎし):約300年頃』を始め、初唐の書家たちのもの。
虞世南(ぐせいなん)
欧陽詢(おうようじゅん)
褚遂良(ちょすいりょう)
だと言われています。
日本では当時これが最新のものとして紹介されています。
しかし、初唐の文化は大陸では約100年前のものです。
こんなすごい文化が大陸では100年も前に起こっていたのか!
と聖武天皇も光明皇后も驚愕したのではないかと思われます。
メディア文化の確立。
権威には絶対不可欠な要素であるから、それはもう懸命に学んだことでしょう。
遅れを取り戻さねば!
すこしでも早く!
私は女性であるので、どうしても光明皇后の気持ちを想像してしまいます。
進んだ文化への憧れ・焦り・畏れなどが入り混じった複雑な思いを持っていたのではないかと思います。
疫病や地震などで人の心が不安定な時代だから尚更です。
ところがどうでしょう。
このエネルギッシュな書風。
満々の意欲が溢れています。
不安を吹き飛ばすくらい、学ぶ喜びのようなものを感じます。
当時、光明皇后は44歳。
最新のものを学ぶんだ。
学んで学び取って自分のものにするんだー!
罫線?
関係ないない。
想いとかリズムとかが大事だから。
所々で中心線からはみ出す自由さ。
頼もしい。
私の目にはとても魅力的な女性に映るのでした。
がんじがらめになりやすい世の中。
精神を解放できるのは、このような軽やかさかも知れません。
軽やかだけど弱くない。
見習いたいと思いました。