講師(宗夜)ブログ

2024-08-11 21:55:00

●後醍醐天皇の気持ち

歴史の見方には様々な切り口があります。

茶道にスポットを当てれば茶道史、書道にスポットを当てれば書道史と呼ばれます。

勉強をしていると、歴史上の人物の気持ちを近くに感じることがあります。

最近、後醍醐天皇の気持ちをふと感じました。

 

後醍醐天皇は1333年の建武の新政で有名です。

教科書には

『天皇や貴族を中心とした政治に戻すために力を尽くした人物で、その後足利尊氏ら武士との戦いに敗れて吉野に逃れて南朝を築きました。』

と紹介されています。

 

数行で済まされていますが、自分で和歌などの肉筆の書を勉強するようになると、活字には上らない先人の呼吸感のようなものを体で感じることがあります。

 

最初に後醍醐天皇の名前を知ったのは中学時代。

その時には『ゴダイゴ天皇』とひと続きで人名として捉えていました。

だいぶ大人になってから『後・醍醐天皇』という意味であったことを知りました。

 

後〇〇天皇と名乗る主な理由は、御所の所在地が同一のときに個人を特定するためだったり、先人の功績をリスペクトする復古主義だったり、とされています。

後醍醐天皇の場合には、後者の『醍醐天皇をリスペクト』と見られています。

 

ではまず醍醐天皇とは…

平安時代の中ごろに天皇中心の政治(天皇親政)を行った人物。

古今和歌集(全20巻)編纂や、延喜式(律令の細則をまとめた古代法典)編纂の勅命を出しました。

ともに延喜5年(905年)。

文化も政治も経済も、天皇が全てを掌握しているのだと知らしめています。

 

歴史上のイベントとして字面だけを追っている時には遠い出来事に感じていました。

でも高野切・関戸本・元永本といった古典の臨書をすると醍醐天皇に感謝したい気持ちになります。

『素晴らしい文化を形にしてくださった』

 

薫り高い貴族文化にうっとり魅せられます。

しかし古典は難しい…

上手に書けない時に、書の先生が目の前でお手本を書いてくださいました。

 

コロコロチリリン…

 

流れる筆から鈴音が聞こえました。

達人は筆で音楽を奏でるのかと目が丸くなりました。

 

平安時代〜鎌倉時代〜室町時代の人々は、現代の私達よりもはるかに官能の感覚が鋭いでしょうから、和歌の音楽性を書で味わうことは日常であったと思われます。

 

その雅な平安の文化と政治を取り戻したいと動いたのが後醍醐天皇でした。

建武の新政は1333年。

延喜式の勅命(905年)から400年以上が経過しています。

鎌倉幕府も最初のうちは西に勢力を伸ばせなかったようですが、じき力を誇示するように六波羅探題を置きました。

経済面においても印象付けるが如く仏教建築物の多くを各地に残しています。

文化面でも、後鳥羽上皇の命による新古今和歌集には源頼朝の和歌が2首採用されるなど武士の教養の高さも示しています。

 

しかし当時の朝廷側からすると、武士は乱暴で教養のない人々と見られていたようです。

『字は書けるのか?』

くらいに低く見られていたと聞きます。

その様子を2年前の大河ドラマで三谷幸喜さんが表現されていました。

戦況を書で御家人たちに報告させる様子。

『うわ、汚い字。まったく読めんな。』

『おっ。小四郎(義時)は綺麗な字を書くじゃないか。』

『しかし何が言いたいのか分からんな。』

文治に弱いところが強調されていました。

あながち演出ではなく、朝廷や京都の文人からは本当にそのように見られていたようです。

だからこそ建築や仏像の作成など、人目につくように建造物に力を入れていたのかも知れません。

 

それでも武士(もののふ)の野蛮なイメージは拭えず、後醍醐天皇はもう一度朝廷が文化・経済・政治の中心となるべく命を出しました。

『後』は単なる『あと』ではなく『neo』『new』などが相応しい意味に思われます。

当時の武士は本当に暴力的だったようです。

後醍醐天皇は京都が血で穢されるようで許せなかったのかもしれません。

 

その京都を室町幕府は本拠地としました。

仏教勢力や朝廷文化が根付いた地に、後から入り込むことは容易ではありません。

武士独自の文化を作り上げて求心力を高める必要があります。

そこで生まれたのが『茶道』

同朋衆と呼ばれる教育係も付けて万全の体制。

庭に、建築に、衣類に、食に、美術品に、書に、香に…

全てを包括した総合芸術。

後醍醐天皇も御宸翰(ごしんかん:天皇直筆の書)と呼ばれる消息をこの時代に遺しています。

 

朝廷文化が貴族のみの限定的だったものに対して、茶道は門戸を庶民にまで解放し長く広く愛される文化に成長しました。

地の底から湧き上がるような力強さと、己を律する志。

稽古を積むたびに奥深さに気付かされます。

お稽古で体得することも大切ですが、伝統文化であるため座学も大切です。

どちらが抜けても学びとして結実しません。

 

今後よし庵では座学にも力を入れていくつもりです。

テキストも作成し、ちょっとしたテストも行う予定。

どうぞお楽しみに😊📝