お腹のぐあいが?

腹痛? お腹にはたくさんの臓器があり,病気もさまざま
 お腹の具合が悪くなるのは の病気でしょうか? おおむね当たっています.とくに,下痢している場合はそうです(ウイルスや細菌が起こす感染性胃腸炎).子どもでも大人でも,当院でみている急性腹痛の 80% 以上は胃腸炎です.
 しかし,それ以外の臓器が痛むこともあります.たとえば,消化器系の臓器では 胆嚢 膵臓 ときに肝臓が有力候補です(胃腸と同じく消化器内科/外科の守備範囲)腎臓 尿管 膀胱 のような泌尿器系の臓器泌尿器科の守備範囲),女性には 子宮 卵巣 があります婦人科の守備範囲).まれには 動脈 や 脈 の病気血管外科の守備範囲)も経験します.
 このように,お腹の臓器はたくさんあり,専門とする診療科もそれぞれ分かれています.胃腸が悪いと思って受診した患者さんが,じつは腎臓とか卵巣の病気だった,というケースは珍しくありません.たらいまわしを避けるためにも,最初の入り口を担当するのは私たちのような総合診療医がよいと思います.

吐いた!  でも,お腹の病気とは限らない
 嘔吐も  の病気でよく起こります.とくに,ウイルスや細菌による
急性胃腸炎は,発症直後からよく吐きます.ただし,いつも短絡的に判断してはいけません.
 そもそも,嘔吐は「脳」が命令して起こる反射運動です.たとえば,胃腸の具合が悪くなったら,脳に対して「嘔吐の命令を出してくれ」と胃腸から働きかけます(吐き気が生じる).これを受けた脳が「嘔吐せよ」と指令を出した途端にグエッと吐くのです.
 ところが,脳の嘔吐中枢に働きかけるのは,胃腸だけではありません
.たとえば,子どもは 発熱 の初期によく吐きますが,これは発熱または関連反応が脳に作用するためでしょう.また,(大人の)脳卒中や心筋梗塞が発症した時にも,嘔吐することは珍しくありません.したがって,病状の全体像をよく見て原因疾患を推定します


腹部エコー検査はスクリーニングに適した画像診断法
 お腹の病気は多種多彩なので,間口を広げたスクリーニングが必要です.腹部のエコー検査(超音波画像診断)はそうした目的に最適です.ガスが多い胃腸の超音波画像は作りにくいのですが,それ以外ならほとんどすべての腹部臓器を見ることができます.また,検査にともなう痛みがなく,放射線を被曝することもなく,外来診察室で簡単に実施できます(コストも低めなので,懐の財布にもやさしい!)
 エコー検査によって病気の
臓器が推定され,さらに精密な検査が必要になるのは10% 未満ですが,疑わしい場合は,それぞれの臓器の専門医へご紹介します.