乳幼児の発熱

発熱以外の症状に注意する
 子どもが急に熱を出したら,ほとんどがウイルスや細菌などの感染症です.発熱以外にどんな症状が出ているかを観察してください.発熱してから3日目くらいまでの症状の経過が重要です.
高熱 だけ

 高い熱のわりに元気で機嫌よい,飲食もまずまず,呼吸やお腹の症状はほとんどない --- これは比較的タチの良いウイルス感染症が予想されます.熱が3日間を超えて続かなければ大丈夫でしょう. ただ,怖い病気でも発症当初はこのタイプのことがあるので,経過に注意してください.

気道症状(鼻水,咽頭痛,咳など)が目立つ

 のどや鼻の風邪 --- 大部分はウイルスの感染です.症状が上部気道(鼻,のど)だけなら原因の詮索は必要ありません.ただ,症状の経過や流行状況によって,病原微生物の迅速検査をおこなうことがあります → ◎ 病原微生物の迅速抗原検査(下記).

消化器症状(腹痛,下痢,嘔吐など)をともなう

 ウイルスや細菌による急性胃腸炎を疑います.「お腹がキューと痛む」→「下痢便が出る」→「腹痛は軽くなる」ということを繰り返すのが特徴です.「胃腸炎ウイルス」以外のウイルス感染でも軽い下痢はよく起こります.下痢や腹痛がなくて,嘔吐だけの場合は,お腹の病気ではないかもしれません(👉 吐いた! でも,お腹の病気とは限らない

発疹 が出る
 はしか・風疹は,ワクチンのおかげで珍しい病気になりました.よく見るのは手足口病や水痘,溶連菌感染にともなう発疹です.ただ,発熱と発疹の組み合わせには,油断できない病気があるので(川崎病や免疫性疾患),注意が必要です.なお,風邪をひいたときに「じんま疹」が出ることがときどきあります.これには対症療法をおこないます.

◎ 病原微生物の迅速抗原検査 ----- 当院で実施できるのは,インフルエンザウイルス,新型コロナウイルス,RS ウイルス,ヒトメタニューモウイルス,アデノウイルス,溶連菌,マイコプラズマです.ただし,どのような症状の方に,どのようなタイミングで,どの検査を実施するべきか,かなり専門的な思慮が必要です.検査を希望されても,治療上の意義が薄い場合や(保険診療の範囲内では)実施できない場合は,お断りすることがあります.


発熱と「抗生剤」
 いわゆる
風邪症状をひきおこす原因の多くはウイルスです.抗生物質は細菌に対して有効ですが,ウイルスには効果がありません.普通の風邪や胃腸炎であれば,「抗生剤を投与しても,回復を早めたり重症化を予防する効果はない」というのが世界的に広く認められた考え方です.わたしたちも,本当に必要な場合だけに限って抗生剤を投与します.ただ,「本当に必要な場合」の判断が実はいちばん難しいのですが ---- .

「感染症以外の原因」による発熱
 乳児によく見るのは「ワクチンの副反応」です.これは接種当夜か翌朝に熱が出て,1日ほどしか続かないのが特徴です.また,子どもは体内に熱がこもりやすいので,暑い環境や厚着,活発に動いた直後などに体温が一過性に上がります(うつ熱).しかし,川崎病や免疫性疾患など,こわい病気もたまにあります.それを疑った場合は大きな病院へすぐ紹介します.

「新生児」の発熱
 生後3ヶ月くらいまでの赤ちゃんは,母親からもらった免疫が働いているので,あまり風邪をひきません.むしろ,この時期に高熱が出たら重大な細菌感染症の疑いがあるため,大きな病院へ紹介することが多くなります.

発熱と「けいれん」
 熱性けいれんが起こりやすいのは1歳~5歳で,高熱の出始めた当日か翌日です.突然に全身けいれんが始まり,数十秒間続いて(呼吸も止まって蒼白になることが多い),そのあと数分間ボーとしていま
す.5分以内に意識がもどって(視線が会って泣き始める),顔色が良くなり,その後にけいれんを繰り返さなければ,あわてる必要はありません.
 けいれんを繰り返したり,嘔吐を繰り返したり,「ぐったり,うつろ」な感じが続く --- 危険な「けいれん重積状態」であったり,髄膜炎や脳炎の症状なのかもしれません.すぐに救急受診すべきです.