講師(宗夜)ブログ

2024-02-12 14:02:00

●ご家庭の中心に茶道がある喜び

対面のお稽古では、よし庵という茶道教室にお越しいただき、日常を忘れる異空間をお愉しみいただけるように心がけております。

 

zoomでは逆に、工藤が皆さまのご家庭に画面にてお邪魔させていただく感覚でおります。

それぞれのご家庭にて、茶道に対するご理解やご協力をいただき、本当にありがたいです。

ご家庭の中心に茶道があり、茶の湯がご家庭の話題になることも多くあるようで、茶道講師としてこれほどの喜びはございません。

 

盆略点前から始められて、先生(準講師)の資格まで取得された生徒さまたち。

ある生徒さまは、茶道を始められた時に、お子様が2歳でいらっしゃいました。

盆略点前を修められ、風炉に進みました。

『はい、ではここで柄杓を構えて…』

とアナウンスしたところ…

あら不思議!柄杓が、ない❗️

『え?え?』

と見渡すと、お子がブンブン振り回しておられる。

そうだよねぇ、この形は魅力的だよねぇ。

『返して』とママ。

『嫌だ、嫌だ』とお子。

背中に柄杓を回して必死の抵抗。

『じゃあさ、これと交換しよう』

ママはお玉を差し出す。

(えー、それ、いつものじゃん)

お子は不満。だけど、ママが困ってる。

大好きなママが困ってる。

(ま、良かろう)

交渉成立!お稽古続行!

 

ああ、そんなこともあったねぇ…。

お子はきっと忘れてしまうんだろうなぁ。

でも、ママは忘れない。

忘れられない。

大事な大事な思い出になるの。

 

そのお子が段々と大きくなって、画面の前でクルクル回って『大きくなったでしょ』と成長ぶりを私にも見せてくれたりします。

次々に洋服を変えてファッションショーをしてくれたりして、本当に楽しいひと時です。

パパさんも温かく見守ってくださっているご様子。

 

もうお一方の生徒さまも、生活の中心に茶道が置かれているのを感じます。

先日の台子のお稽古で。

ご主人と共に台子を手作りしてくださったとのこと。

『それが、先生。高さを間違えて低く作ってしまったんですよ。そしたら…』

尺立てが入らない❗️

尺立てだけが、ぴょこんと台子の外に置かれていました。

『はははー🤣。なんか可愛い尺立て!』

二人で大笑いしました。

笑っていながら、

工藤、図らずも涙がひと筋流れました。

涙がこぼれて初めて自分が泣いていることに気付きました。

(あ、私泣いてる)

感動したのでした。

そこまでご主人が協力してくださり、茶道のお稽古を続けてくださっていることに。

尺立ての中の2本の火箸が、愛情深く寄り添うご夫婦に見えました。

 

誠に、まことに失礼ながら…

工藤はそれまで茶道は日本人にしか分からないと思っていました。

お二方とも外国にお住まいの生徒さまなのです。

外国の地にて、このようにして茶道に対する深いご理解とご協力を賜り、自分の思い込みは誤りであったと気付かされたのでした。

お点前が出来るか出来ないか、ではなくて。

ご家族のご協力くださる優しさそのものに茶の湯の精神を感じます。

奥さまが真剣に茶道に向き合っておられるその御姿を見て、そこに神秘の力を感じてくださったのだろうと思います。

茶の湯そのものの力と共に、奥さまの神秘に満ちた力が、説得力を持つ形としてご家庭の中心に据えられたのでした。

遠く海外の地にて、日本人女性としてのアイデンティティを確立しつつある生徒さまたち。

工藤も講師として、精一杯エールを送り続けたいと思っています。