講師(宗夜)ブログ
●主婦のちから
仕事をしていて、一番役に立っているちからが『主婦のちから』です。
・整理整頓と掃除する能力
・限られた時間内に複数の仕事を行う能力
・これらの細々とした仕事に当事者意識を持つ能力
講師として色々な情報や技術をお教えしてはおりますが、時間的に見ると圧倒的に整理整頓と掃除が大きな割合を占めています。
ほとんどの時間が主婦業そのものです。
実はどの仕事の現場でも『主婦のちから』に支えられて成り立っていることが多いのではないかと思います。
そう考えると
『もっと主婦が認められても良いのに…』
と少し悔しい気持ちになるのです。
整理整頓や掃除は、誰にでも出来そうでいて、本当のところは能力によって差が出ると思います。
時間内に素早く丁寧に。
可能な限り次の準備も同時に行う。
お料理と似ています。
掃除も隅々まで丁寧に。
一見汚れていないようでも主婦は手を抜きません。掃除をすれば、毎回しっかりと汚れがとれるのを知っているからです。
誰のため?
愛する家族のため。
そしてもちろん自分のため。
快適に生活するため。
これが、『私の仕事なの』
これらの細かい用事が自分の仕事だとすっかり自覚し切っているところ。
ここが主婦のすごさだと思っています。
この自覚は早々には身につかない。
自分の家庭を持ち、支え続けてきたことで徐々に身につく自覚でしょう。
これは一つの大きな能力だと思っています。
私はその能力を持つ生徒さまに度々にわたり助けられております。
『先生、お茶の準備をしておきますね』
何かの用事で手が取られて、お茶の準備がまだだった私を助けてくださいました。
仔細をお伝えしなくても、綺麗に薄茶器になだらかな小山を作ってくださいました。
宗嘉先生が喜んでおられました。
もちろん、お稽古をされた生徒さまも。
『食器は洗っておきますよ。先生は茶道のご準備をどうぞ』
午前中の懐石料理教室の後に、茶道教室が控えていた日のこと。
たくさんの洗い物を一手に引き受けてくださり、それは綺麗に片付けてくださいました。
また、お茶事の時にも準備を手伝ってくださる生徒さまがいてくださり、本当に助かりました。
『濃茶の準備を手伝ってあげてもらえますか?』
私の手が塞がっていた時に、上級者の生徒さまに初級者の生徒さまのお手伝いをお願いしました。
『はい、承知しました。』
威張ることもなく、きちんとした準備を時間内に丁寧に優しく教えてくださいました。
このような生徒さまたち。
どなたも控えめで、用事が終われば皆さまの中に静かに混じって、ご自身の働きを主張しません。
ですけれども、私にはその方たちが輝いて見えます。
優しい光が全身から放たれていて、その方や周りの方々を包んでいるように見えます。
茶道では、そのような細々とした仕事がたくさんあります。
それらが茶人を輝かせているように思います。
輝くのは稽古場だけではありません。
水屋でのちょっとした会話で近くなる心と心。
よし庵では、水を大切に使うように生徒さまにお伝えしています。
お水指の水を洗い物に使うようにとお願いしています。
『お水指のお水をたらいに入れますね』
『ありがとう。ちょうど欲しかったの』
ほんのちょっとの会話なのに、私は心がとても温かくなりました。
皆さんが、よし庵を自分の家のように思ってくださる。
自分の居場所だと思っていて大切にしてくださる。
細々とした仕事を、頼まれたからやるのではなく、自分の仕事だと思って進んでやってくださる。
とてもとてもありがたい。
ありがたいのもそうだけど…
居場所を見つけた生徒さまからは自信を感じます。
〇〇が出来るからとか、そういう風に具体的な形のある自信ではありません。
そんなちっぽけな自信ではありません。
もっと大きくて確固たる自信です。
《自分の存在そのものに対する自信》です。
その自信の源となっているのが、主婦のちから。
世間では大きな評価は得られないかも知れない。
でも確実に自分を支える力となっています。
そのちからに気付いて認め合える仲間がいて…。
だからよし庵のお稽古は楽しいんだなぁと思いました。