講師(宗夜)ブログ

2024-01-30 19:18:00

●初釜の茶事

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2024年1月28日正午

よし庵にて初釜の茶事が催されました。

皆さま華やかなお召し物でご参加くださり、お茶室に新春の空気が吹き込まれました。

外はまだまだ寒いのに、皆さまの少し上気した嬉しそうなお顔を拝見しましたら、いち早く春を見つけたような幸せな気持ちになりました。

 

待合での汲み出しの後に、お軸を拝見し、お作法通りに腰掛け待合へ…

亭主との静かなご挨拶。

手水にて両の手と口を清め、躙口で頭を垂れて、お茶室に入ります。

躙口は腰のところで身体を二つ折りにするようにしてお茶室に入るので、いつも少し呼吸が苦しくなります。

赤ちゃんがお母さんのお腹から生まれるときは、こんな感覚なのかなぁ…などと想像します。

だとすると、私たちはお茶事を経験すればするほど生まれ変わっているのかもしれません。

そのせいでしょうか?

お茶事によくご参加くださる生徒さまは、ご参加毎にぐんぐんと腕が伸びていくのでございます。

普段でのお稽古では経験し得ない、一回ごとの特別な行事が生徒さまの力をより引き出しているようです。

 

お茶室にはお正月にふさわしいお軸と、宗嘉先生のお庭のお花が荘られております。

お軸を見、お花を見、お釜を見、仮座に入り、皆さま揃って広間へと進みます。

シュッシュッと畳を擦る白足袋の音。

音まで白く清らかです。

亭主とお客様とのご挨拶。

その後に初釜の初炭。

 

真っ白な奉書の上の、大ぶりな炭。

立派でありながら、断面は美しい菊模様。

カラカラと音の鳴りそうなほどの乾燥が見てとれて、宗嘉先生の陰のお仕事振りが光ります。

 

生徒さまによる初炭手前が始まりました。

この日のために稽古を重ねてくださいました。

『手首を柔らかくしてお羽を舞わせてください』

お稽古中に生徒さまに申し上げました。

炉縁を清めるにはお羽の両面を使うのですが、お羽が翻るときの手首の動きが見どころのひとつであります。

宗嘉先生の手首の動きは本当に美しいもので、zoomでのご視聴の際は、ぜひ先生の手首に注目していただきたいとお伝えしました。

それら全てを心得て、生徒さまはよくよくお稽古してくださいました。

 

足捌きは迷うことなく滑らかに…。

お羽も美しく炉縁を舞いました。

嬉しく、頼もしく、お隣にて拝見しました。

 

炭を焚べているそばから、パチパチと爆ぜる音が炉の壁に反響しました。

炭と空気と火の競演

黒い炭が、ほの赤い色をゆっくりと帯びていくその変容のさま。

誰も口を開くことはなく、神秘的な雰囲気を肌で感じて、一瞬一瞬を愉しんでいました。

素晴らしい初炭手前を終えて、『ふぅー』と息を吐く生徒さま。

『良かった、良かった』とその生徒さまを労って囲む他の生徒さま達。

そしてお楽しみの宗嘉先生の茶懐石料理。

 

数々の美味しいお料理の後に、主菓子。

先生のお庭の柚子で作られた柚子羊羹です。

柚子の皮を器とした目にも嬉しい柚子羊羹。

直前までよく冷やして、生徒さまに供しました。

さっぱりつるんと爽やかな酸味が、身体の細胞ひとつひとつを目覚めさせます。

そして腰掛け待合へ。

 

後座にて、長緒茶入による濃茶席。

ご担当の生徒さまも、長緒の扱いを一生懸命に練習してくださいました。

音楽好きで手芸が趣味の生徒さま。

私から見ると、趣味の腕はプロ級です。

物静かな佇まいで丁寧に丁寧に技術を磨いていらっしゃる。

『手芸用の紐で練習していました』

柔らかく微笑んでくださいました。

努力の甲斐あって美しいお点前でした、と宗嘉先生も嬉しそうに仰っておられました。

 

その後、工藤の後炭手前を経て、薄茶席となりました。

 

薄茶席では、筒茶碗でのお点前。

絞り茶巾の独特の手捌きが美しいお点前です。

ご担当の生徒さまも、お茶巾の扱いを喜んでくださり、練習を積み重ねてくださいました。

この動き、遅すぎても速すぎても見応えが損なわれてしまうのですが、生徒さまはその塩梅をよくご理解くださっていた、と宗嘉先生が感心されていました。

羽化した紋白蝶が青空を楽しむが如く華やかな雰囲気を持つお席となり、お茶事を締め括ってくださいました。

 

その後、お作法通りにご挨拶をし、花入とお釜の拝見を経て、躙口から腰掛け待合へと移動して、亭主のお見送りを以ってお茶事が終了となりました。

 

生徒さまにはもう一度待合にお集まりいただいて、お白湯を召し上がっていただきました。

『今日のお席も実りある良いお席でしたね🌸』

と盛り上がっていくうちに、宗嘉先生の将来の展望へと話が進みました。

 

先生はこの数ヶ月のうちにお教室をリフォームなさいます。

『ここから階段を作ってお庭に降りれるようにするんだ。今度は内装の腰掛け待合ではなく、本物の外庭の腰掛け待合にするんだ。』

それから…

それから…

話が大きくて工藤の想像が追いつかないのですが、何しろ楽しそうです。

皆さまも

『実際に目にするまでは様子が分からないけど、とにかく楽しみですね!』

と口を揃えてくださいました。

 

春への期待に胸を膨らませつつ、初釜のお茶事がお開きとなりました。

よし庵のお茶事が皆さまから支持される理由はここにあるように思います。

未来への希望。

明日へのチャレンジ。

楽しく、美しく。

 

皆さま

春からの新しいよし庵でのお稽古とお茶事をどうぞお楽しみになさってくださいませ。

私もとても楽しみです😊