講師(宗夜)ブログ

2023-10-29 17:24:00

●シンクロナイズド茶の湯

先日のzoomプライベートお稽古にて、とても心地よい時間を過ごさせていただきました。

お稽古の科目は『台天目』。

きちんと着物を着てくださってのお稽古でした。

 

ゆったりとした呼吸のリズムで淀みなく進むお稽古。

途中まで拝見していた工藤も、楽しくなって一緒に手を動かします。

口は動かさない。

手だけ。

静かに進む台天目のお稽古。

パソコンの画面を挟んだ、こちら側とあちら側。

太平洋と赤道を挟んだ、こちら側とあちら側。

ずっと並走していたお稽古で、時々生徒さまの手が早くなり、

『ううーん、ここで早くならないで…。一定のリズムを保ちましょう。1、2、3、4…。』

『はい』

リズムが元に戻る。

茶室に足を踏み入れたそのリズムに戻る。

1、2、3、4…。

 

それにしてもよくぞここまで身に付けてくださったとお稽古の途中で感服しました。

3年かけてここまで来ました。

盆略点前から始めました。

帛紗捌きの腕の高さが分からないときには

『ウルトラビームの位置です。はい、ウルトラビーム!』と盛り上げ、

茶巾でお茶碗を清める手が分からないときには

『カトちゃんぺの手で拭きますよ』

と説明しました。

ややふざけすぎかとも思われましたが、お稽古自体は至って真面目に行っていました。

私のお稽古のスタイルは細かなところもすべて説明し尽くすというもの。

同じことを何度も何度もお稽古の度に申し上げて、教えを刷り込んでいきます。

私自身も宗嘉先生にそのように教わりました。

『同じことを何度も何度も行うのがプロだ』

一流イタリアンシェフの落合務さんもそうおっしゃっていました。

『同じことばかりするのは嫌だという人がたまにいるけれど、それはプロとは言えない。プロは同じことを何度もする。それでいて飽きず、同じようでいて向上させていくのだ。』

 

いま、プロとしてお仕事をしていて、その言葉が心に響きます。

同じようなことをしていても、年数を重ねると見えてくるものが変わってきます。

そして自分自身への問いかけも変わってきます。

『美』とは?

『ひと』とは?

『仕事』とは?

 

結局のところ、どの仕事も『ひとを育てる』ということに終始するのではないかと思っています。

ひとは老いる。いつか朽ちる。

でも『ああ、楽しかった』という喜びは、いつまでも鮮やかに心に残る。

鮮やかに存在するのはそこに美があるから。

美をつなぐのはひと。

 

生徒さまは茶道の先生を目指しておられます。

きっといい先生になられるでしょう。

輝く未来が楽しみです。