講師(宗夜)ブログ
●社交辞令にひと匙の思いやりを
『社交辞令』
その言葉にあまり良いイメージはないかもしれません。しかし大人の社会では大事な潤滑剤です。
人間は感情の生き物なので、予想外に大きな役割を果たしていると思われます。
『そういう挨拶みたいなの、苦手なんだよ、俺』
会社員時代に男性社員がポロリとこぼした本音を今でも覚えています。
聞いた瞬間、(この人成功しないな)と思いました。会社勤めでは何やらよくイベントがあり、飲み会などが催されました。
その翌朝、大抵は電話などで要件の前に、
『どうも昨日はお疲れ様でした。楽しかったですね…』
とか何とか少し話をして
『では、本題ですが…』
と本来の要件に入ります。
どこの組織でもそうでしょう。
この導入が上手い人、そして切り上げ方の上手い人は、仕事もよく出来たように思います。
何も無いのもダメ
長すぎるのもダメ
ちょうど良いところで切り上げて、声の調子を変えて緊張感を出して仕事の話に入ると、こちらの仕事のエンジンも掛かりました。
かの男性社員はカミソリのように切れ味鋭く、仕事そのものはよく出来ました。
非効率なものが大嫌い。
社交辞令的な挨拶をすると、
『………。でさ、』
返答もなく要件に入ります。
同じような性格の得意先からはとても評価が高く、信頼されていました。
得意先には社交的に振る舞っていましたし、仕事自体は早くて正確だからです。
途中まで周囲がびっくりするような出世を遂げた後に、ピタリと駒が止まりました。
部下を使いこなせなかったようでした。
社交辞令は大事なんだな、とその時に思いました。
部下をうまく動かせる人は、社交辞令の中にも相手に対する思いやりが含まれていました。
この人のために何とか頑張ろうという気持ちを普段から起こさせるのでした。
仕事には状況の変化により、想定外の事例が頻発します。
天候不順による納期の遅れ
国内外のレート変動による欠品
検品ミスによる在庫切れ
そんな時に、現場から逃げずに解決策を探そうと踏みとどまれるかどうか…。
相手を失望させたくない、何とか役に立ちたいという信頼関係。
結局は人間味なんだなぁと思いました。
女性同士の関係において、このような緊迫した状況はありませんが、それでもやはり挨拶や社交辞令は大事だなぁと思います。
おはようございます。
お世話になります。
先日はありがとうございました。
などなど…
あっても無くても同じじゃないか、と思うのは幼い考えで、大人にはこのちょっとした一言がとても大事です。知性の表れと言えるでしょう。
社交辞令の良いところは相手の事情に深入りしないところ。
そう考えると茶道での問答は本当によく出来ています。
おもてなしに対しての感謝はしますが、根掘り葉掘りは聞きません。
末客がお茶を吸い切るまでの短い時間、声の調子も含めて、会話を文化的に愉しめるかどうか…。
お正客のお人柄が表れる場となりましょう。
社交辞令をただの定例文にせず、思いやりを込められるよう努めたいものです。
日常のちょっとした挨拶こそ幸せな気持ちに近づける一歩かもしれません。