講師(宗夜)ブログ
●注連縄(しめなわ)の意味
神社の境内に架けられている注連縄(しめなわ)。
ねじれた縄とギザギザの雷みたいな紙が風に揺れて…。『あれなんだろう?』といつも不思議に思っていました。大人になって不意に教わりました。
『注連縄は雲と雨と雷を表している。』
注連縄(しめなわ):雲☁️
白い紙は、紙垂(しで):雷⚡️
藁の束は注連の子(しめのこ):雨☔️
五穀豊穣を願う気持ちから、注連縄が生まれたとのこと。驚いたのはその先でした。
●雷の発生時に、雲の中では化学変化が起き、窒素酸化物が生成されている。それが雨に溶けて地上に落ちると肥料の役割を果たすので、雷の多い年は豊作になったと伝わる。
植物は水に溶け込んだ窒素しか吸収できないので雷の肥料としての役割は相当に大きかっただろう。1000年前の書物にも記されているという。
当時の人々にはよく知られた自然現象だったのかもしれない。
注連縄に科学的な根拠があったとは知りませんでした。
さらには、
●雷の落ちた田んぼには、リン(P)が生成される。高温・高電圧の雷によって岩石が一瞬で溶かされてリン(P)が合成されるそうだ。リンは細胞膜や核など、生命の根幹に関わる大事な元素であるので、その後の稲の成長にも大きく関係したと思われる。
昔は当然ながら化学肥料など存在しませんから、雷のある/なしで大きな差が出たのでしょう。
雷の落ちた田んぼの稲穂は明らかに実りが良かったそうです。
そこから雷は『稲妻』とも呼ばれたと言います。
稲の成長を助ける妻である、というのです。
また、雷の落ちた山などではその後にキノコがよく生えたとのこと。
最新の気象学の研究から、雲の粒の中には塵に混じってキノコの胞子も多く含まれていることがわかってきました。
キノコの胞子は空高く舞い上がり、雲の核となり、雨粒に混じって地上に降り戻ります。
天然の肥料と共に地上に落ちるので成長が早くなるというわけです。
このようなお話を、以前マレーシアから来られたお客様にしましたところ、
『そうそう、よくキノコが生えるんだよねー』
と喜んでくださいました。
『あれ?もしかして農家の方ですか?』
とお聞きすると
『そう、バナナ農家やってるの。』
それまで気難しかったお客様と一気に打ち解けたのでした。
雷さま。稲妻。
ピカピカしてゴロゴロして怖いけど、昔の人々はこれらの自然現象を神として崇めてきた…。
だからでしょうか、風神雷神図屏風を目にした時にとても感動したのでした。
10年近く前に、風神雷神図屏風の三作品が揃う展覧会に行きました。
俵屋宗達と、尾形光琳と、酒井抱一の三作品でした。
友人はオリジナルの俵屋宗達が好きだとのこと。
私は尾形光琳の作品に惹かれました。
じーっと見ていた時、
風神と雷神の衣が旗めいたのを感じました。
一瞬だけ、バサっと大風に旗めいたように思いました。
『あれ?』っと思ってもう一度見たら、もうそんな現象は起きず、静かに固定された図なのでした。
尾形光琳の図だけにその不思議な感じを受けました。
尾形光琳がこの風神雷神図屏風を描いたのは18世紀初頭だそう。
1703年には元禄大地震があり、
1707年の10月には宝永大地震、
同年11月には富士山大噴火があったそう。
自然災害に見舞われた時代背景が、もしかしたらこのモチーフを選ぶきっかけであったのかな…
などと思いました。
自然現象に隠れた神を感じる、昔の人々の謙虚さ。私も見習いたいと思うのでした。