講師(宗夜)ブログ
●着物と紋のはなし
海外にお住まい(ヨーロッパ)の生徒さまより、着物の誂えについて質問を受けました。
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①自分で手入れをしたいので東レのシルックにしようと思いますが、化繊だと他人さまから軽く思われますか?
②一枚目の着物は色無地の一つ紋を誂えたのですが、二枚目は何がお勧めですか?
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《工藤の回答》
①東レのシルックで全く問題ありません。
シルックは手に取って近くで見ても高品質の布地で、化繊とは分かりません。お仕立ても丁寧で、価格帯も正絹のお着物と大きな差はなく充分に高価です。
引け目など感じず、ぜひ堂々とお召しください。
アメリカにお住まいの生徒さまが
『アメリカでは東レのシルック一択です!』
と明言されておられました。
日本人が多くお住まいの地域であっても洗える着物シルックが一択だと仰っておられました。
また、日本でも暑い地域や雨の多い地域ではシルックが主流かと思います。
当教室にもシルックをおしゃれにお召しの生徒さまが多数いらっしゃいます。
東レ(東洋レーヨン)が社運を懸けて開発した高級化繊(artificial silk)の力を信じましょう。
②二枚目のお着物…
日本にお住まいでしたら『何でもお好きなものを…』と申し上げるところですが、ヨーロッパ在住となると…。二枚目も東レシルックの色無地に一つ紋が無難でしょう。
ただ、紋の付け方をひとつ工夫すると汎用性が高くなり、帯選びの自由度が上がります。
私のお勧めは『共糸の縫い紋』です。
共糸(ともいと)とは、長着と同じ色目の糸という意味です。
少し濃いめの色目にするなら共濃(ともこい)、
少し薄めの色目にするなら共薄(ともうす)、
と呼ばれます。
色目の選び方はお好みで…となりますが、目立たせないのがポイントです。
『せっかくの紋なのに目立たせないの?』
と不思議に思われるかもしれません。
そうココが最大のポイント。
紋が目立つと、帯の選び方が狭まり、フォーマルまたはセミフォーマル用しか選べないのです。
伝統的な文様のパリッとした帯が良いとされています。
一つ紋ですので、袋帯でも名古屋帯でもどちらでも大丈夫です。しかしこの解釈はお住まいの地域によって異なります。
『紋が入ったら袋帯じゃないとダメよねぇ〜』
と思っている方が多い地域では、その常識に従います。
《紋を目立たせない利点》
紋を縫い紋にして目立たせずにいると、一見ふつうの色無地なので色々な帯を締めることも可能です。私は単衣の着物は全て共糸の縫い紋にしています。
●理由のひとつが暑さ対策☀️
温暖化に伴い、現代では単衣の季節が5〜6月・9〜10月と長くなりました。
この時期、私は帯芯のない博多帯を好んで締めています。帯芯がないだけ博多帯は軽くて少し涼しいのです。博多帯はカジュアルなので紋つきには適しません。でも色無地ならば⭕️です。
●もう一つの理由はオシャレ対策❣️
美しいものに憧れて、自分の中に取り入れる瞬間が、女性にはとても大事です。
格や理屈も大事かもしれないけれど、オシャレだって大事です。生きる希望そのものです。
最近はたくさんの大人可愛い帯が作られています。普通のお稽古やお出掛けには是非お気に入りの大好きな帯を締めて、生きているこの瞬間を思い切り楽しんでいただきたいと思います。
《紋の種類》
大きく分けて2つです。
以下の二つを知っていれば良いと思います。
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①染め抜き日向紋(ひなたもん)
②縫い紋……
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一つ紋の場合には、どちらを選んでも良いとされています。過去に呉服屋さんに質問したところ、下記のような回答を得ました。
・背紋(一つ紋)は準礼装の格なので、日向紋と縫い紋に差はない。
ただし、地域によって常識が色々なので、お住まいの地域の常識に従って欲しい。
この『ただし』が曲者です。
大体において『ただし…』が付きます💦
今回のブログを書くに当たって、もう一度本を開き直し、格を確認しました。
すると本によって解釈が異なっていました。
『準礼装』と格付けしている本もあれば、
『略礼装』と格付けしている本もある。
そして全てにおいて※印で『ただし、地域差がありますので…』とあくまでも一般論であることを強調していました。
共糸の目立たない紋にして、色々な帯を楽しむコツも、呉服屋さんから教えていただいたことですが、厳密にはNGであります。
絶対に失敗してはいけない場では、フォーマル用の袋帯を締めましょう。
多少ややこしいですが、知識を得ればそんなに怖がることはありません。
本などでちょっと勉強して、不安ならば呉服屋さんにお聞きして、是非ぜひ着物ライフを楽しんでくださいませ😚♪