講師(宗夜)ブログ

2023-03-18 20:12:00

●お稽古前の静かな時間

よし庵ではお稽古前の時間も大切にしています。

各々がご自身の準備に集中している時間で、不必要なお喋りをしている生徒さまは一人としておりません。

私、工藤も火起こし器を扱っているため、とても集中しています。

静かにそれぞれが確実に準備を進めています。

 

最近は主たる生徒さまがほぼ上級者となられたので、新しくご入会された生徒さまの準備など、お手伝いもお願いしております。

 

慌ただしい準備を終えて、ひとしきり静かな時間を味わってからご挨拶をし、お稽古を始めます。

静と動の気持ちの切り替えを上手に行えるような教室にしたい。ずっと思っていました。

そう考えるきっかけとなったのが、10数年前に見た映画『鬼に訊け』です。

 

『鬼に訊け』は、鬼と呼ばれた伝説の宮大工、西岡常一氏のドキュメンタリー映画。

西岡常一氏は、昭和55年に薬師寺の西塔を再建されました。

木の声を聞き、山を知り、土を知り、研究に研究を重ね、人心を束ね、困難を超えて再建に辿り着きました。

自然や先人を敬う謙虚な姿勢にとても大きな感動を得たのを覚えています。

 

中でも特に心に残ったシーンが、数名の宮大工が一言も発せずに大きな木材を抱え、黙々と作業をしているところでした。

そこに西岡氏のアフレコが重なります。

『誰も何も話しまへんやろ。次に何をやるのか、みんなちゃんと分かってますから声を掛け合う必要がないんですわ。』

このような言葉だったと思います。

人間は本当に集中した時には声が出ないものなのだ、と西岡氏は続けました。

みんな心が繋がっている様子で、神々しさを感じました。

誰の心にも雑念がなく、光に向かって一つの塊となって進んでいるように感じられました。

 

自分もそうなりたいと強く思いました。

そのような心持ちで仕事に向き合いたいと思いました。また、同じ気持ちを共有できる仲間を作りたいとも思いました。

 

ふと気付くと、その夢が叶っていました。

映画を見てから10数年。あまりにも時間が経っていたため、夢を思ったことすら忘れていました。

『夢とはそういうものだ』

宗嘉先生から言われました。

 

本当に叶えたい夢は、一旦忘れるのもだ。

いつまでも考えているのは夢ではない、執着だ。

夢から離れて、忘れて、自分を立て直して、

その夢に相応しい自分になった時に、気がついたら叶えられているんだ。

 

自分が夢を選ぶのではなくて、夢が自分を選ぶようです。選ばれる人間にならないと夢は叶わないというのです。

 

よし庵での静かな時間。

皆さまそれぞれの光に進める時間となりましたらとても嬉しいです。