講師(宗夜)ブログ
●平面の着物を立体の身体に纏う、着付けの難しさ
着付けは本当に難しいです。
平面のものを立体の身体に纏うのだから、そもそも無理があるのです。
りんご🍏に折り紙🟧を着つけていくような作業だなぁと思ったことがあります。
自分の身体よりもかなり大きい布を、折りたたみながら紐で身体に括り付けていく作業。
ボタンやファスナーなどで固定するのではなく、紐で括り付けていく。
着るのも一苦労だけれど、着た後も大変。
どうしても着崩れます。
折り畳んだところは、立ったり座ったりの動きと共に少しずつ開くからです。
着崩れを最小限に止めるためには、シワを数箇所に美しく折りたたんでまとめておくことが大切です。
不規則なギャザーにして放っておかず、
規則的なタックにするのです。
そして、お手洗いに行くたびに、タックを深く折り直して着崩れを直す。
この動作を習慣にします。
動物や植物の世話に似ています。
可愛いワンちゃんとか猫ちゃんに会うと、ついしゃがんで撫でたくなりますよね。
綺麗なお花を見るとしばらく眺めるし、少しずつ苗木が大きくなるのも嬉しい喜びです。
愛でる感覚で着物に向き合うと楽しくなります。
また、着付けの時間は自分の身体と向き合う時間にもなります。
指の関節や指先、体温などを上手く利用して着付けは進みます。
腰ひもの結び方の部分例です↓
●腰骨(寛骨)のところで余った布のタックをとって後に倒したら、そこに襟先を被せて、襟先ごと右手で覆います。
●右手の親指は背中側、4本指はお腹側です。
弛まないようしっかり覆いましょう。
●空いた左手で腰ひもを取ります。
取る位置は、中央よりも10㎝上です。
●その腰ひもを右手に持たせます。
右手の中指と薬指で受け取りましょう。
●受け取ったら親指でキャッチし直し、親指は紐ごと腰をホールド。背中側に回ります。
●4本指も紐ごと腰をホールド。お腹側に回ります。
いかがでしょう。
今の動き、紐を腰にホールドしただけです。
自分の身体を駆使して着付けが進みます。
え?中指ってどこだっけ?
薬指ってどこだっけ?
自然に集中力が養われます。
お稽古中は私のアナウンスに集中していただき、お一人で練習する時には記憶を辿ってアナウンスを思い出しながら進めます。
着付けの時間は『禅』に近いのではないかと思います。
禅は実践を通じて悟りを得ようとする教えです。
お道具を美しく仕舞うことや、
使いやすく整えることも禅に繋がります。
紐にきちんとアイロンをかける。
アイロン掛けの後で、シワにならないよう畳むコツを習い、その通りに実践する。
着物に付いた塵は埃を払って畳紙に仕舞う。
着付ける時には、それらを使う順に並べて静かに始める。
『因果』を自分の生活の中で見つけることが禅の教えの一部なのかな…と着付けを通じて思いました。
綺麗に整えると上手くいく。
こうすれば、こうなる。
という法則を自分の生活の中で見つけていくと、失敗が減ります。
失敗が減るとストレスも減ります。
りんご🍏に折り紙🟧を着せる。
いやいや、無理でしょう。
無理だけど、無理を承知で。
出来るところまでやってみますか。
失敗しても自分を責めないで。
だって最初から無理なことしてるんだから。
それが無理でなくなる瞬間が来るんだなぁ。
それが快感なんだなぁ…。