2026-10-17 15:08:00

一つの身体を三年以上追い続けて見えてきたこと④ー咳編

【長引く咳と鍼灸の関係】

今回は、発熱後から長引いた咳と鍼灸の関係についてお話しします。

この患者さんには、膝痛、腰痛、左下肢リンパ浮腫、花粉症、長引く咳、右母指痛など、さまざまな症状がありました。長期的に経過を確認することで、症状による反応の違いや、同じ症状でも身体の状態によって変化が異なることが見えてきます。

今回は、その中でも「発熱後から長引いた咳」に焦点を当てます。

 

◾️ 発熱後から、夜も眠れないほどの咳が続いた症例 2026年5月発熱

熱が下がってからも強い咳のみが続いていました。

特に夜間は咳き込みが激しく、喘息のようにゼーゼー、ヒューヒューする感じがあり、眠れない日もありました。

咳が続くと、喉や胸のつらさだけでなく、睡眠不足や全身の疲労、呼吸に関わる筋肉の緊張なども重なります。

このような症状では、感染症や喘息、咳喘息などの可能性を確認することが大切です。

鍼灸だけで様子を見るのではなく、必要に応じて医療機関を受診することが前提になります。 そのうえで、施術では咳の症状だけでなく、呼吸の状態、胸郭や背部の緊張、頸部のこわばり、発熱後の疲労などを確認しました。

咳に対して、胸や喉の周囲に鍼をするわけではありません。

呼吸に関わる胸郭の動き、背部や頸部の緊張、全身の疲労、水分代謝などを含め、身体全体の状態を確認しながら施術を行いました。

このときは、手や肘にある呼吸器に関係する反応点、ふくらはぎ、腰背部などを使用しました。

肺経や大腸経系の反応点、体力回復を意識した下肢のツボ、背部や頸部の緊張を緩める治療などを組み合わせています。 これは、症状のある場所だけを見るのではなく、身体の動きや緊張のつながりを確認しながら施術する、整動鍼的な考え方の一つです。

また、東洋医学的には、呼吸器の状態だけでなく、体力の低下や身体を守る力、いわゆる肺気や衛気の状態なども考慮します。

 

◾️施術中から咳が減り、呼吸が深くなった経過 施術中から、咳の回数が少しずつ減っていきました。喘鳴も軽減し、呼吸が深くなっていきました。 施術後には、夜間の激しい咳がかなり減り、眠れるようになりました。 ただし、ここで「咳が治った」と考えるのは適切ではありません。咳の原因がすべて取り除かれたわけではなく、症状が強く出ていた時期から、少しずつ回復に向かったと考える方が自然です。

夜間の強い咳はかなり減っていましたが、1週間後も日中の咳はまだ少し残っていました。 その後も、咳の状態や体力を確認しながら施術を続け、徐々にスポーツジムへ行ける程度まで回復しています。

この経過からも、長引く咳は一度の施術ですべてが解決するというより、症状の変化を確認しながら、回復段階に合わせて対応していくことが大切だと考えています。

咳が続いているときは、咳そのものに意識が向きやすくなります。 しかし、咳によって身体が緊張し、その緊張によって呼吸が浅くなったり、疲労が抜けにくくなったりすることもあります。

そのため、施術では次のような点も確認しました。

・夜間に咳が強くなるか

・呼吸が浅くなっていないか

・胸や背中が緊張していないか

・発熱後の疲労が残っていないか

・睡眠が取れているか

・日中の活動量がどの程度まで戻っているか

咳の回数だけでなく、睡眠や呼吸、体力の回復状況も確認しながら、施術内容を調整していきます。

 

◾️花粉症のあとに咳が続くこともあります この患者さんには、同じ年に花粉症も強く出ていました。 このときは、後頭部、頸胸椎、腰部、膝下、ふくらはぎ、手首など、身体の離れた場所を使いながら施術しました。施術中から本人が「かなり楽になった」と感じ、翌日には症状がほとんど消失しました。 花粉症では、鼻水や鼻づまりだけでなく、喉の違和感や咳が出ることもあります。

ただし、花粉症だと思っていた咳が、実際には喘息や咳喘息、感染症などによる可能性もあります。咳が長引く場合は、自己判断で花粉症と決めつけず、必要に応じて医療機関で確認することが大切です。

 

◾️長引く咳に鍼灸を取り入れるときの考え方 この症例を通してお伝えしたいのは、長引く咳に対して、鍼灸を補助的な選択肢として考えられる場合があるということです。 ただし、まず必要なのは咳の原因を確認することです。

・風邪や感染症のあとに咳だけが残っているのか

・喘息や咳喘息が関係しているのか

・アレルギーや鼻の症状が影響しているのか

・胃酸の逆流や、別の呼吸器疾患が関係しているのか

原因によって必要な治療は異なります。 長引く咳や喘息様の症状がある場合は、まず医療機関で診断を受けてください。そのうえで、病院での治療を続けながら、次のような不調に対して鍼灸を補助的に取り入れるという考え方があります。

・咳による身体の緊張

・胸や背中のこわばり

・呼吸の浅さ

・発熱後の疲労

・睡眠不足

・回復期の体力低下

鍼治療によって咳の原因が取り除かれると保証できるものではありません。また、すべての方に同じような変化が出るわけでもありません。 必要な医療を受けながら、身体の緊張や疲労を整える方法の一つとして、鍼灸を検討することが大切です。

病院での治療を続けながら、身体の緊張、疲労、睡眠、呼吸のしづらさなどにも目を向け、自分の身体を整える方法を考えることはできます。鍼灸も、その選択肢の一つです。

 

◾️鍼灸院は、肩こりや腰痛だけの場所ではありません 『鍼治療』というと、痛みがあるときに受けるものだと思われがちです。 しかし、身体はそれぞれの部分が独立して働いているわけではありません。

呼吸、睡眠、疲労、筋肉の緊張、姿勢、動作など、さまざまな要素が関係し合っています。 だからこそ、咳がある場所だけを見るのではなく、身体全体の状態を確認することが大切だと考えています。 てあーて鍼灸院では、咳が始まった時期や経過、医療機関での診断、睡眠や呼吸の状態などを丁寧に伺い、一人ひとりに合わせた施術を考えていきます。

「長引く咳でも鍼灸院に相談していいのかな?」

そう思われている方も、まずはご相談ください。 必要な医療と適切なケアを考えるきっかけになればと思います。

 

てあーて鍼灸院|蕨市

2026-10-04 14:30:00

一つの身体を三年以上追い続けて見えてきたこと③ー花粉症編

花粉症で驚くほど反応した治療

 

この患者さんはここ数年、毎年春になると花粉症になります。

 

2026年は特に強く、鼻水、鼻声、咳が続き、会社でも周りの人たちに声の変化を指摘されるほどでした。

 

そこで今回は、以前学んだ花粉症に対する治療法を使いました。

 

後頭部、

頸胸椎、

PSIS周囲、

膝下、

ふくらはぎ、

手首

などにあるツボを使用し、頭部にこもった熱や緊張状態を下へ降ろして逃すということを意識しています。

 

すると治療中から

「かなり楽になった」とのこと。

 

さらに翌日には、ほとんど症状がなくなっていました。

 

その後も大きな再発はありませんでした。

 

この治療は非常に良い反応が出たケースです。

 

さらに興味深かったのは、花粉症の治療しかしていないのに、その後しばらくの間、左下肢リンパ浮腫の調子まで良かったことです。

 因果関係はわかりません。

もちろん偶然かもしれません。

 

しかし身体は一つです。

 

鼻だけ、足だけ、腰だけと完全に分けて考えることが、本当に正しいのか?

 

こうした症例を経験すると改めて考えさせられます。

2026-10-03 15:04:00

一つの身体を三年以上追い続けて見えてきたこと②ーリンパ浮腫編

◾️長年続く左下肢リンパ浮腫

この患者さんには、子宮頸ガン手術約10年後から症状が出てきた左下肢【リンパ浮腫】があります。

 

日によって状態にはかなり差があります。

 

比較的すっきりしている日もあれば、足首や下腿がパンパンになり、靴下の跡が深く残ることもあります。

 

鍼では、水分代謝を整えること、身体全体の巡りを整えること、そして腰や体幹との連動を使うことを意識してきました。

 

しかし、リンパ浮腫は毎回すぐに変化するわけではありません。

 

2023年9月にかなり浮腫が強くなった時には、鍼をして足首の熱感や動きは多少良くなったものの、翌日になっても大きな変化はありませんでした。

 

正直に言えば、あまりうまく反応しなかった治療です。

 

ところが別の日には非常にはっきりと変化します。

 

2024年2月の施術では、治療前にはむくみに埋もれていたアキレス腱や足首の骨が、施術後にはくっきり分かりやすくなりました。

 

別の日には足首の熱感が軽減し、足全体がすっきりしました。

 

2024年4月には靴下の跡が深く残っていましたが、経絡治療と水分代謝を意識した治療を行いました。

この回ではリンパ浮腫に対する遠隔穴に加え、腎、尿、水分代謝への治療を行い、さらに肺と脾への経絡治療による補法を加えています。

施術後には足首の骨の輪郭(特にくるぶし)が見えやすくなり、靴下の跡も薄くなりました。

 

最近の2026年9月の施術でも、治療前は左下肢にボコボコとした不均一な触感がありました。

尺沢、陰陵泉、下肢や体幹と連動するツボを使うことで、施術前に感じられた組織のボコボコした触感がかなり滑らかになっています。

 

患者さん自身も

「良くなった感じがする」と変化を感じていました。

 

リンパ浮腫は簡単な症状ではありません。

鍼をすればすぐに必ず浮腫がなくなるというものでもありません。

 

それでも、全身の状態や身体の連動まで見ながら治療すると、足の張り、熱感、重さ、組織の硬さなどが変化することが多くあります。

 

ここから言えるのは、リンパ浮腫では単一のツボよりも、経絡治療、水分代謝へのアプローチ、整動鍼的な連動を組み合わせた時の方が反応が良い傾向がある、ということです。

 

今後は触診だけではなく、足首や下腿の太さも毎回同じ場所で測定し、より客観的に経過を追っていきたいと考えています。

2026-09-28 10:36:00

一つの身体を三年以上追い続けて見えてきたこと①ー膝痛・腰痛編

今回は、2023年から継続的に施術している患者さんの症例をご紹介します。

 

この患者さんには、婦人科系の手術後から続いている左下肢のリンパ浮腫があります。

 

しかし実際に三年以上身体を診ていると、症状はリンパ浮腫だけではありませんでした。

 

膝痛、腰痛、花粉症、長引く咳、肩の痛み、手指の痛み、そして最近では右母指の痛み。

 

その時々でさまざまな症状が現れています。

 

一見すると全く関係のない症状に見えます。

しかし身体を触り、動きを確認しながら治療していると、不思議なことに一つの場所を整えることで離れた場所まで変化することがあります。

 

この患者さんは、まさにそのことを何度も教えてくれた症例です。

 

◾️最初は【右膝の痛み】から始まりました

2023年3月

数か月前から右膝のお皿周囲が痛み、特にお皿の上側、大腿四頭筋周囲に痛みがありました。

足首や足の甲にも硬さや圧痛があります。

 

そこで膝に鍼をするのではなく、肘、手首、手の指、ふくらはぎ、足首など、膝や大腿四頭筋と身体の動きが連動する場所を使って治療しました。

 

これは #整動鍼 という考え方の一つです。

痛い場所だけを見るのではなく、その場所の動きに影響している離れた場所を探していきます。

 

治療を重ねるにつれて、膝にズキンと走る痛みの回数が減っていきました。

 

5月頃には本人からも「膝はかなり調子が良い」という話が聞かれるようになりました。

 

◾️次に大きな問題になったのが【腰痛】でした

膝が改善してきた頃、今度は腰痛が強くなりました。

前屈、身体を捻る動作、寝返り、お尻を持ち上げる動作などで痛みが出ます。

この時も腰だけに刺鍼することはしません。

 

肘、手、下腿、臀部などを使いながら身体の動きを確認していきました。

 

ある治療では、施術前に強かった動作時痛が半分以下まで減少し、前屈もかなりスムーズになりました。

 

また、右のお尻に非常に強い硬さがあったため、そこを調整すると腰痛までさらに軽減しました。

 

数回の施術後にはスポーツジムへ行き、トレーニングすることができるまで回復しました。

 

ところが、一度良くなった腰痛が再び出てきました。

 

詳しく話を聞いてみると、月経の時期との関連がありそうでした。

この時は、それまで非常に反応していた腰痛治療だけでは十分な変化が出ませんでした。

そこで身体の動きだけではなく、東洋医学的な経絡や身体全体の状態も考えながら治療を組み立て直しました。

 

同じ腰痛でも、原因や身体の状態によって治療方法を変える必要がある。

 

この症例から改めて感じたことです。

2026-09-22 19:10:00

私の臨床記録 ストレスと疲労の翌朝

吐き気と喉の詰まりが突然強くなった話

 

今回は患者さんの症例ではなく、私自身に起こった体の変化について書いてみたいと思います。

以前から私は、強いストレスがかかった時や、体がかなり疲れている時に、朝方になると吐き気を感じることがありました。

最近はその頻度が少し増えていて、胃がモヤモヤするだけではなく、喉が詰まるような感覚や、胸が締め付けられるような感じ、呼吸のしづらさまで一緒に出ることがあります。

 

そして2026年9月19日の朝。

目が覚めた時から、かなり調子が悪い状態でした。

吐き気がある。

喉に何かが引っかかっているような感じがする。

胸も詰まる。

呼吸もしづらい。

胃のあたりはなんとも言えないモヤモヤした不快感。

さらに体全体がバキバキに緊張していて、鉛を背負っているように重く、頭もぼーっとしていました。

 

前日のことを振り返ると、ある程度理由は思い当たりました。

昼間は会社に行き、精神的なストレスがかなりかかっていました。

さらに夜にはセミナーを受講し、終わる頃にはフラフラになるほど疲れていました。

そのまま眠り、翌朝に症状が一気に出てきたのです。

最近少し風邪っぽさもあり葛根湯を飲むことがあったのですが、体調によっては飲んだ後に吐き気を感じることもありました。

朝食を食べてみても、まだ体はすっきりしません。

 

そこで自分の体を改めて観察してみました。

 

私の感覚としては、単純に胃が悪いというよりも、体全体の緊張が強く、上半身に気が集まり過ぎているような状態でした。

東洋医学的に表現するなら

【気が上に上がって下りてこない】

そんな印象です。

 

そこで今回は、いろいろなツボを使うことはせず、まず足の太衝に一本だけ鍼をしました。

太衝は足の甲にあるツボで、私は臨床でも体の緊張が強い時や、気の巡りを整えたい時に使うことがあります。

鍼をしてそのまましばらく休んでいると、10分ほどで明らかな変化が出てきました。

まず吐き気がかなり軽くなりました。

そして、あれほど気になっていた喉の詰まり感も少しずつほどけてきました。

呼吸もしやすくなってきます。

まだわずかに喉の違和感が残っていたため、そのままさらに10分から20分ほど鍼を置いて休みました。

 

すると今度は、体全体がかなり軽くなってきました。

 

朝起きた時に感じていた鉛のような重だるさも減り、喉の詰まりもほとんど気にならなくなりました。

 

今回改めて感じたのは

症状が出ている場所だけを見ていても分からないことがあるということです。

 

吐き気があるから胃を見る。

喉が詰まるから喉を見る。

胸が苦しいから胸を見る。

 

もちろん現代医学的にそれぞれの症状を確認することはとても大切です。

 

しかし体を一つのつながりとして観察してみると

強いストレス

精神的な緊張

睡眠不足

肉体疲労

自律神経の変化

胃腸の働き

呼吸の変化

筋肉の緊張

 

こうしたものが同時に重なって、一つの症状として表面に出てくることがあります。

 

東洋医学では、こうした状態を“気の巡り”という視点から考えることがあります。

 

今回の私の場合も、太衝という一か所に小さな刺激を入れただけでしたが、喉だけではなく、吐き気、呼吸、体の重さまで一緒に変化していきました。

 

もちろん、太衝に鍼をすれば吐き気が治るという単純な話ではありません。

 

その日の体の状態をみて、

どこが緊張しているのか?

どこに流れの悪さがあるのか?

体全体がどちらの方向に崩れているのか?

そこを考えることが鍼灸では大切だと私は思っています。

 

鍼というと、痛いところに直接刺すものと思われることもあります。

しかし実際には、痛い場所から離れた一本の鍼によって、体全体の緊張や呼吸、胃腸の感覚まで変わることがあります。

 

ほんの小さな刺激でも、体がそれに反応すると大きく状態が変わる。

 

今回、自分自身の体を通して改めてそれを体験しました。

 

自分が治療を受ける側になってみることも、鍼灸師としてとても勉強になります。

 

体は、思っている以上に正直です。

 

そして症状は、ときに体からの

「少し休んだほうがいい」というメッセージなのかもしれません。

 

今回の経験は、また一つ臨床につながる大切な症例として記録しておこうと思います。

 

 

※喉や胸の詰まりと呼吸のしづらさは、ストレスや自律神経だけで説明できない場合もあります。特に強い呼吸困難、胸痛、冷汗、失神しそうな感じなどが出た場合は、鍼で変化をみることとは別に医療機関で確認することも必要です。

 

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