2026-09-28 10:36:00

一つの身体を三年以上追い続けて見えてきたこと①ー膝痛・腰痛編

今回は、2023年から継続的に施術している患者さんの症例をご紹介します。

 

この患者さんには、婦人科系の手術後から続いている左下肢のリンパ浮腫があります。

 

しかし実際に三年以上身体を診ていると、症状はリンパ浮腫だけではありませんでした。

 

膝痛、腰痛、花粉症、長引く咳、肩の痛み、手指の痛み、そして最近では右母指の痛み。

 

その時々でさまざまな症状が現れています。

 

一見すると全く関係のない症状に見えます。

しかし身体を触り、動きを確認しながら治療していると、不思議なことに一つの場所を整えることで離れた場所まで変化することがあります。

 

この患者さんは、まさにそのことを何度も教えてくれた症例です。

 

◾️最初は【右膝の痛み】から始まりました

2023年3月

数か月前から右膝のお皿周囲が痛み、特にお皿の上側、大腿四頭筋周囲に痛みがありました。

足首や足の甲にも硬さや圧痛があります。

 

そこで膝に鍼をするのではなく、肘、手首、手の指、ふくらはぎ、足首など、膝や大腿四頭筋と身体の動きが連動する場所を使って治療しました。

 

これは #整動鍼 という考え方の一つです。

痛い場所だけを見るのではなく、その場所の動きに影響している離れた場所を探していきます。

 

治療を重ねるにつれて、膝にズキンと走る痛みの回数が減っていきました。

 

5月頃には本人からも「膝はかなり調子が良い」という話が聞かれるようになりました。

 

◾️次に大きな問題になったのが【腰痛】でした

膝が改善してきた頃、今度は腰痛が強くなりました。

前屈、身体を捻る動作、寝返り、お尻を持ち上げる動作などで痛みが出ます。

この時も腰だけに刺鍼することはしません。

 

肘、手、下腿、臀部などを使いながら身体の動きを確認していきました。

 

ある治療では、施術前に強かった動作時痛が半分以下まで減少し、前屈もかなりスムーズになりました。

 

また、右のお尻に非常に強い硬さがあったため、そこを調整すると腰痛までさらに軽減しました。

 

数回の施術後にはスポーツジムへ行き、トレーニングすることができるまで回復しました。

 

ところが、一度良くなった腰痛が再び出てきました。

 

詳しく話を聞いてみると、月経の時期との関連がありそうでした。

この時は、それまで非常に反応していた腰痛治療だけでは十分な変化が出ませんでした。

そこで身体の動きだけではなく、東洋医学的な経絡や身体全体の状態も考えながら治療を組み立て直しました。

 

同じ腰痛でも、原因や身体の状態によって治療方法を変える必要がある。

 

この症例から改めて感じたことです。

2026-09-20 14:02:00

急性腰痛は一度でおわるとは限らないーー改善と再発を繰り返しながら回復した腰痛の症例

 

今回は、突然腰を痛めて来院された患者さんの症例をご紹介します。

 

この症例で特に印象的だったのは、初回の治療では非常に大きな変化が出たにもかかわらず、その数日後に仕事をきっかけとして再び腰を痛めたことです。

 

さらに2回目の治療では、こちらが思っていたほどその場で変化が出ず、治療にかなり苦労しました。

 

しかし、その後少しずつ身体が変化していき、最終的には日常生活でほとんど痛みを感じないところまで回復しました。

 

鍼治療では毎回同じようにその場で大きな変化が出るわけではありません。

 

この症例は、そのことがよく分かるケースだったと思います。

 

 

突然始まった腰痛

 

患者さんは前日から腰に痛みを感じるようになり、急患として来院されました。

 

これまで、いわゆる腰痛らしい腰痛はほとんど経験したことがなかったそうです。

 

痛む場所は腰というより仙骨に近く、特に仙骨の上部から右側にかけて痛みがありました。

 

前屈や腰を曲げ伸ばしする動作。

車の乗り降り。

 

そして治療ベッドで寝返りをする動作でも痛みが出ていました。

 

詳しくお話を聞いてみると、腰痛が起こる少し前に仕事の内容が変わっていました。

 

普段とは違い、パートの方がお休みしたため、患者さん自身が現場の作業に入ったそうです。

 

それまで腰痛がほとんどなかったことを考えると、慣れない作業によって腰や骨盤周囲にいつもとは違う負荷が加わった可能性が考えられました。

 

腰には鍼をしない

 

この日の治療では、痛んでいる腰そのものには鍼をしませんでした。

肘周囲や手のツボなど、腰の動きと関係すると考えられる離れた場所を中心に鍼を行いました。

 

数本鍼をしたところで一度立っていただき、最初に痛かった前屈や腰の曲げ伸ばしを確認します。

 

すると、最初に出ていた屈伸時の痛みはほとんど感じなくなっていました。

 

ただし、寝返りではまだ痛みが残っています。

 

そこで今度は、ふくらはぎや手の甲などのポイントを追加しました。

 

ここでも腰の患部には鍼をしていません。

 

そして再び寝返りをしてもらうと、今度は寝返りの際の痛みもほとんど感じなくなりました。

 

初回としてはかなり良い反応です。

 

ただ、その時点で痛みがなくなったからといって、傷めた身体が完全に元へ戻ったとは限りません。

 

仕事などで再び負荷がかかれば、痛みが戻る可能性があることもお伝えしました。

 

また鍼の場合、治療直後だけではなく、その日の夜から翌日、さらにその翌日と身体が変化していく患者さんもいるため、その点についても説明しました。

 

ところが数日後

腰痛が再び悪化

 

患者さんが再び来院されました。

 

初回治療の後は腰痛がかなり軽くなり、日常生活もほとんど問題なく過ごせていたそうです。

 

自転車に乗る際に多少の違和感はあったものの、大きな問題はありませんでした。

 

ところが仕事中に段ボールを運んだ際、ピクッと腰を痛めてしまいました。

その後、再び腰痛が強くなったそうです。

 

今回確認すると、前屈でも痛みが出ます。

 

さらに仰向けで膝を立てた状態から腰を持ち上げる動作でも痛みが出ました。

 

ここからが、この症例で最も難しかったところです。

 

いつもの腰痛治療が思うように効かない。

 

腰痛でよく使ういくつかの治療方法を試しました。

 

しかし、普段なら比較的早く変化するポイントを使っても、今回はなかなか変化しません。

 

鍼をして動きを確認。

 

別のポイントを使って再び確認。

 

それでも期待したほど変わりませんでした。

 

治療直後の感触としては、最初の痛みを100とすると改善は40パーセント程度。

 

初回治療のような大きな変化は得られませんでした。

 

治療する側としても、かなり難航した腰痛でした。

 

このような時、無理に鍼の本数を増やし続けるより、一度身体に刺激を入れて、その後の変化を見ることも大切です。

 

そこで基本的な治療を行い、その日は終了しました。

 

患者さんには、

「鍼は治療直後だけで結果が決まるわけではなく、24時間から36時間ほど経過してから身体が変化する場合もあります」

とお伝えしました。

 

そして実際に連絡をいただいたところ、治療から約36時間後には、

「だいぶ楽になりました」とのことでした。

 

その場では大きく変わらなくても、その後身体が変化する。

 

鍼治療をしていると、このような経過を見ることがあります。

 

 

大きく改善

 

3日後に再び来院されました。

状態を確認すると、腰の調子はかなり良くなっていました。

 

前屈をしても痛みはありません。

 

ただし完全にゼロではありませんでした。

 

仰向けで膝を立てて腰を動かすと痛みがあります。

 

車の乗り降りでも、まだ少し痛みが出るとのことでした。

 

つまり日常生活はかなり楽になったものの、特定の動きでは腰や骨盤周辺にまだ問題が残っている状態です。

 

今回は骨盤周囲の動きを整えることを目的として、背骨と連動するポイントを多く使用しました。

 

治療後、もう一度膝を立てて腰を動かしてもらいます。

 

すると痛みは治療前のおよそ半分程度まで減少しました。

 

ここまで来ると回復の方向にかなり進んでいると判断しました。

 

患者さんはバレエもされていたため、

「痛みがなくても急に無理をせず、身体の状態を確認しながら行ってください」とお伝えしました。

 

 

腰痛治療をいったん卒業

 

さらに1週間後。

 

患者さんからは、

「ぎっくり腰の状態はほとんど良くなりました」

とのお話がありました。

 

来院前にバスへ乗った際、バスが急発進して一瞬腰に衝撃を感じたそうですが、大きな痛みにはならなかったとのことです。

 

前屈

後屈

朝起きた時の動作

 

いずれも問題ありません。

 

仕事で長時間座っていると多少腰が固まる感じはあるものの、以前のような強い痛みはありませんでした。

 

唯一、仰向けで膝を立て腰を動かすテストで、右腰にわずかな痛みが残っていました。

 

そこで最後の調整を行います。

 

治療後に同じ動きをしていただくと、痛みは出ませんでした。

 

腰痛治療はいったん終了としました。

 

 

初回で大きく改善。

↓

その後、仕事で再び腰を痛める。

↓

2回目は治療が思うように進まず。

↓

しかし翌日以降に徐々に改善。

↓

3回目にはかなり回復。

↓

4回目で日常生活上ほとんど問題のない状態となりました。

 

非常に興味深い経過でした。

 

 

 

靴下が履けるか?

車の乗り降りはスムーズか?

寝返りができるか?

朝起き上がれるか?

 

こうした実際の動作は、患者さん自身も変化を実感しやすいです。

 

今回あえて書いておきたいのは、毎回治療直後に劇的な効果が出たわけではないということです。

 

 

 

腰痛といっても、その時々で身体の状態は違います。

 

だからこそ毎回同じ場所へ同じ鍼をするのではなく、その日の身体と動きを確認しながら治療を組み立てていくことが大切だと感じた症例でした。

 

てあーて鍼灸院では、痛いところだけをみるのではなく、実際の身体の動きを確認しながら、その人の身体のどこに負担がかかっているのかを探して施術を行っています。

 

症状の変化には個人差がありますが、

 

✔️寝返りがつらい

✔️車の乗り降りが痛い

✔️靴下が履きにくい

✔️前屈すると腰が痛い

 

など、日常生活の具体的な動作でお困りの場合もご相談ください。

 

 

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2026-09-04 09:39:00

84歳女性の腰・股関節痛②その後

 【鍼で変わったのは痛みだけではありませんでした】

前回のブログでご紹介した、腰、臀部、股関節に強い痛みがあった84歳の患者さん。

治療では、痛い場所に鍼を集中させるのではなく、肘や手、足など離れたツボを使い、骨盤や腰、股関節の連動を整えていきました。

治療中は、一度にすべてを変えようとはしません。

鍼をして身体を動かしていただき、変化を確認します。

そして必要なところを調整し、再び立ったり歩いたりしていただきます。

すると、

「さっきより立ちやすい」

「ここが楽になった」

「歩きやすくなった」

という変化が一つずつ現れてきました。

患者さん自身が身体の変化を確認できるため、最初は鍼に対する不安があっても、次第に治療の意味を理解してくださるようになります。

身体が楽になるにつれて、鍼そのものへの怖さも少なくなっていきました。

しかし、この症例で特に印象的だったのはここからです。

治療前は動作がゆっくりで、家事をすることにも少し億劫な様子がありました。

ところが治療後は、身体が軽くなったように動き始めました。

いつもなら座っていることが多かった方が、その日は自分から精力的に動いています。

その違いは、一緒に暮らしているご家族にもわかるほどでした。

もちろん、鍼によって頭の働きや感情が直接変化したと断定することはできません。

ただ、痛みが減り身体を動かしやすくなることで、

「動いてみよう」

「これならできそう」

という気持ちが生まれることはあると思います。

東洋医学では、身体だけではなく「気・血」の巡りを含め、心身全体の状態をみていきます。

身体が軽くなれば気持ちも前を向く。

気持ちが前を向けば、また身体を動かしたくなる。

今回の患者さんを見ていると、そんな身体と心のつながりを改めて感じました。

治療後の姿を見たご家族も驚かれ、ご家族の中で肘を痛めていた方から、

「私にも鍼をしてほしい」

と言っていただいたほどでした。

鍼灸は、単に「痛いところに鍼をして痛みを取る」だけのものではありません。

立てる。

歩ける。

家事ができる。

そして、また自分から動きたくなる。

痛みによって小さくなっていた生活が、身体の変化とともに少しずつ広がっていく。

今回の84歳の患者さんを通して、鍼灸にはその人の「動ける力」を引き出し、生活そのものをもう一度動かしていく可能性があるのだと、改めて感じた症例でした。

 

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2026-09-03 12:56:00

84歳女性の股関節痛①痛い場所に鍼をしない治療

今回は、腰から臀部、股関節にかけて強い痛みと、動かしにくさがあった84歳女性の症例をご紹介します。

この方は、ご主人の入浴を日常的に介助されていました。

湯船からご主人の身体を支えて移動させる動作は、想像以上に腰や股関節へ大きな負担がかかります。

そうした介助が重なるうちに腰、臀部、股関節周囲の痛みが強くなり、身体も次第に硬くなっていきました。

特につらかったのが、椅子から立ち上がる時と座る時です。

痛みが強く、立とうとしてもなかなか身体を起こすことができません。

歩行にも影響が出ており、以前のようにスムーズに速く歩くことも難しくなっていました。

日常生活でも頻繁に「痛い、痛い」と口にするほどで、単に腰が痛いというより、痛みによって生活そのものが小さくなっているような状態でした。

 

以前から腰や臀部には慢性的な痛みがあり、東洋医学的に身体をみても、気血の巡りが滞っているような印象がありました。

そこで今回の治療では、痛い腰や股関節に直接たくさん鍼をするのではなく、身体の離れた場所から腰、骨盤、股関節の動きを変えていきました。

長期間負担がかかってきた場所は、すでに疲弊しているとも考えられます。

そこへ刺激を集中させるのではなく、身体のつながりを利用して循環と動きを取り戻していきます。

例えば骨盤周囲を緩めるために肘周囲のツボを使います。

腰や臀部、股関節周囲の筋肉の緊張を変えるために、手の甲のツボを使うこともあります。

さらに手と足のツボを組み合わせ、身体全体の緊張や痛みを調整します。

 

立ち上がる動作では、腰や骨盤、股関節を支える深い筋肉の働きも重要です。

そこで足のツボを使い、深部の緊張と身体の連動を整えていきました。

 

【鍼をした場所と、変化する場所が離れている】

初めて鍼灸を受ける方には、とても不思議に感じられると思います。

しかし身体は、腰なら腰だけ、股関節なら股関節だけで動いているわけではありません。

足、骨盤、腰、背中、腕までが連動して、一つの動作を作っています。

では、この84歳の患者さんの身体は、この治療によってどう変わっていったのでしょうか。

実は私自身が特に印象に残ったのは、腰や股関節の痛みが楽になったことだけではありませんでした。

治療後、いつも座っていることの多かった患者さんに、家族も驚くような変化が現れたのです。

その変化について、次回の②でお話しします。

 

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