ブログ
84歳女性の腰・股関節痛②その後
【鍼で変わったのは痛みだけではありませんでした】
前回のブログでご紹介した、腰、臀部、股関節に強い痛みがあった84歳の患者さん。
治療では、痛い場所に鍼を集中させるのではなく、肘や手、足など離れたツボを使い、骨盤や腰、股関節の連動を整えていきました。
治療中は、一度にすべてを変えようとはしません。
鍼をして身体を動かしていただき、変化を確認します。
そして必要なところを調整し、再び立ったり歩いたりしていただきます。
すると、
「さっきより立ちやすい」
「ここが楽になった」
「歩きやすくなった」
という変化が一つずつ現れてきました。
患者さん自身が身体の変化を確認できるため、最初は鍼に対する不安があっても、次第に治療の意味を理解してくださるようになります。
身体が楽になるにつれて、鍼そのものへの怖さも少なくなっていきました。
しかし、この症例で特に印象的だったのはここからです。
治療前は動作がゆっくりで、家事をすることにも少し億劫な様子がありました。
ところが治療後は、身体が軽くなったように動き始めました。
いつもなら座っていることが多かった方が、その日は自分から精力的に動いています。
その違いは、一緒に暮らしているご家族にもわかるほどでした。
もちろん、鍼によって頭の働きや感情が直接変化したと断定することはできません。
ただ、痛みが減り身体を動かしやすくなることで、
「動いてみよう」
「これならできそう」
という気持ちが生まれることはあると思います。
東洋医学では、身体だけではなく「気・血」の巡りを含め、心身全体の状態をみていきます。
身体が軽くなれば気持ちも前を向く。
気持ちが前を向けば、また身体を動かしたくなる。
今回の患者さんを見ていると、そんな身体と心のつながりを改めて感じました。
治療後の姿を見たご家族も驚かれ、ご家族の中で肘を痛めていた方から、
「私にも鍼をしてほしい」
と言っていただいたほどでした。
鍼灸は、単に「痛いところに鍼をして痛みを取る」だけのものではありません。
立てる。
歩ける。
家事ができる。
そして、また自分から動きたくなる。
痛みによって小さくなっていた生活が、身体の変化とともに少しずつ広がっていく。
今回の84歳の患者さんを通して、鍼灸にはその人の「動ける力」を引き出し、生活そのものをもう一度動かしていく可能性があるのだと、改めて感じた症例でした。