身体の話
◾️レントゲンやMRIでは異常なし。それなのになぜ痛いのでしょうか?
病院でレントゲンやCT、MRIを撮った。
先生からは
「特に大きな異常はありません。年齢相応ですね。手術するような状態ではありません。」
そう言われた。
でも腰は痛い。
膝も痛い。
立ち上がると痛い。
歩くと痛い。
朝起きると身体が固まっている。
こんな経験をしている方は、実は珍しくありません。
そして、ここで一番知っていただきたいことがあります。
【画像に異常が見つからないことと
痛みが存在しないことは、同じではありません】
レントゲンやMRIは非常に優れた検査です。
骨折や腫瘍、椎間板や神経の状態、関節の変形など、身体の中の構造を調べるためには欠かせません。
しかし、レントゲンやMRIは基本的に身体の形や構造を見る検査です。
“痛みそのもの“を撮影しているわけではありません。
たとえば腰痛の場合、画像上では椎間板などに変化が見つかっても痛みがない人がいる一方、画像では大きな異常が確認できないのに強い痛みを感じる人もいます。
つまり
「画像の変化の大きさイコール痛みの強さ」
とは限らないのです。
では、画像に映らない痛みはどこから来るのでしょうか。
私はここを非常に大切にしています。
身体は骨だけで動いているわけではありません。
筋肉があります。
筋膜があります。
腱があります。
靭帯があります。
関節があります。
神経があります。
血流があります。
そして、それらを調節している脳や自律神経があります。
さらに人間は全身を連動させながら動いています。
膝が痛いからといって、必ずしも膝だけに原因があるとは限りません。
股関節の動きが悪くなっている。
足首が硬くなっている。
骨盤周囲がうまく動いていない。
身体をひねる動作が少なくなっている。
こうしたことによって膝に負担が集中している可能性もあります。
腰痛も同じです。
腰だけではなく、股関節や臀部、背中、肋骨などの動きが関係していることがあります。
さらに慢性的な痛みでは、もう一つ重要なことがあります。
それが痛みを感じる神経系の変化です。
痛みが長期間続くと、身体が痛みに敏感になってしまうことがあります。
昔は10の刺激で痛かったものが、身体の警戒状態が続くことで、5程度の刺激でも痛く感じるようになる。
火災報知器に例えると分かりやすいでしょう。
本当に火事が起きているときに警報が鳴るのは正常です。
ところが感度が高くなりすぎると、少し煙が出ただけでも警報が鳴ります。
慢性的な痛みでも、これに似たことが起こる場合があります。
だから
【こんなに痛いのにMRIでは異常がない】
ということが実際に起こります。
決して気のせいという意味ではありません。
現在では、組織の損傷や神経そのものの障害だけでは十分説明できない痛みについても研究が進んでいます。
そしてもう一つ大切なのが身体全体の状態です。
睡眠不足。
疲労。
冷え。
精神的な緊張。
呼吸の浅さ。
長時間同じ姿勢でいること。
運動不足。
逆に身体の使い過ぎ。
こうしたものが重なれば、筋肉の緊張や身体の動き、痛みへの敏感さにも影響してきます。
ですから私は、どこが壊れているのかだけではなく、「身体が今、どういう状態になっているのか」
を見ることが大切だと考えています。
鍼灸でも同じです。
痛いところだけに鍼をするのではありません。
身体を実際に動かしてもらい
どの動作で痛むのか
どこまで動くのか
身体のどこに緊張があるのか
離れた場所を調整すると動きが変化するのか
呼吸や腹部、冷えなどはどうなのか
こうしたことを一つずつ確認していきます。
東洋医学では、さらに身体全体のバランスや巡りという視点から状態を考えていきます。
西洋医学の画像検査と鍼灸は、どちらが正しいという話ではありません。
役割が違うのです。
まず医療機関で重大な病気や骨折、強い神経障害などがないかを確認する。
これは非常に大切なことです。
そして重大な異常が見つからなかったにもかかわらず痛みが続いているのであれば、今度は画像だけでは分からない身体の動きや緊張、感覚、神経系、全身のバランスという方向から身体を見直してみる。
そんな考え方があってもよいと思います。
病院で「特に大きな異常はありません」と言われた。
それは
「あなたの痛みは存在しません」
という意味ではありません。
むしろ重大な病気が見つからなかったという大切な情報を得たうえで
では、「なぜ痛みが続いているのだろう」
と次の視点から身体を考えていく。
そこから見えてくるものもあります。
画像を見ること。
そして人の身体そのものを見ること。
その両方を大切にする。
てあーて鍼灸院では、そんな視点から患者さんの身体と向き合っています。