インフォメーション

2020 / 01 / 03
08:39

調停してみませんか? 調停の利用例と調停・和解手続(建物明渡請求)のイメージ

 

 

1 へー、こんな調停もありなの?(面白い?調停活用法)

  調停手続については合意がないと不成立で終わるとか相手方が出頭しない

と意味がないとか言われていますが、事案によりけりなので意味がないとは

考えられません。さらに5年以上前からは一定の証拠があれば同意がなくて

も不成立という処理ではなく裁判所の見解を決定という形で示す努力がなさ

れています。しかも、費用は10万円までの請求なら500円の収入印紙+郵

便切手(詳しくは申立予定の簡易裁判所に問い合わせて下さい。)だけです。

今回はユニークな利用例などを紹介します。

  調停強化という方針が決まったことから安易に不成立にしない傾向になっています。証拠等を収集して裁判官の心証を形成した後に調停に代わる決定(いわゆる17条決定)をしようと努力していると思います(市民と法:No.1022016.12「民事調停を活用した近隣紛争の上手な対処法についての考察」)。

(1)  相手方の出方を探るためや資料取得のための調停申立て

老練な実務家は相手方と接触できないとか、相手方の要求が不明な場合にはとりあえず調停申立てをして相手の反論や提出された資料等を検討するという利用の仕方をしています。駄目元って感じですかね?

(2)  法律的な請求根拠はないけど申立人の希望を請求する調停申立て

どう考えても無理筋な事案であっても、裁判沙汰にすると言い張る相談者に対しては、とりあえず調停申立てをして裁判所から法律的には無理な請求であることを説明してもらうという利用の仕方もあります。

(3)  相手方からの合意書を取り付けるための調停申立て

老練な実務家の例だそうですが、保険会社の代理人として、被害者に保険金を支払うという段になって、被害者が死亡したことから相続人全員に相続分に応じて支払う羽目になった。しかし、保険会社の意向で相続人全員の押印をする必要があったため、自分でその処理をするのは相続人間の確執があって困難を極めた。そこで、調停申立てにより裁判所に説得してもらった。請求の趣旨など法的には問題がありそうですけど、簡易裁判所の調停は何らかの紛争があれば受けて進行するというスタンスなのかもしれませんね。

(4)  本来の請求の相手方じゃないのに相手方の一人に加える調停申立て

市有地に勝手に駐車している相手に対して、駐車をしないようにという調停申立てをし、さらに市も相手方に加えて、駐車させないようにという請求を付加した調停があったそうです。市に対する請求の根拠は難しいけど、調停なら大丈夫という感じです。ちなみに申立人は近所の駐車場経営者というオチもあったとか。

(5)  訴えられた被告が別途弁済方法を求める調停申立て

訴訟で金銭支払を請求されている被告が、別途簡易裁判所に金銭支払の分割と一部免除の調停申立てをするもの。

そうすると、訴訟は進行を先延ばしにしたりして調停の結果を待ちます。

まあ時間稼ぎになりますよね。調停は非訟事件なので二重起訴の禁止に触れません。

(6)  債務額を確定させるための特定調停申立て

借金額に関係なく相手方1人について一律500円の手数料で申立てができます。申立てをすると金融機関は電話などで督促することが金融監督庁から禁止されているようです。時間稼ぎのみならず、引直し計算及び将来利息カットの分割払いの調停に代わる決定が一般的な処理なので借金した方には有利です。一般的に債権者は調停に出席しないことが多いことから調停委員だけで電話交渉します。この場合だと申立人の精神的な負担も軽くなります。

2 色んな調停のバリュエーションあるね!

     ・知人同士の借金

   ・飲み屋のつけ

     ・地元の業者同士の未払代金

   ・福祉団体へのベッド等のリース代金の未払

 ・リース物件買取り申込(請求する根拠はないけどお願いするのです)

 ・確定判決や公正証書などの債務の分割支払や減額を求める調停

 ・債権回収が困難になっている会社相手の調停

 ・家の修理等の請負で完成状況等の不満による報酬支払遅延の調停

 ・未払賃金や労働条件をめぐるトラブル

 ・保育園、幼稚園、学校等での子供の怪我をめぐるトラブル

・近所のもめごと(ゴミの問題、悪口、騒音など)

・身内のもめごと(孫に会わしてほしい祖父)

・事業所などの小口の売買代金等(請負代金、リース代金、治療費、授業・

料など)の代金未払いの解決を迫られている会社の担当者の方々

 ・隣接する建物改修工事等で自宅の建物が汚れた場合のトラブルや駐車し

ていた自家用車に駐車場近くで工事していた吹付け工事のペンキが付着したトラブル

・家賃の滞納などの問題を抱えた大家さんやその相談を受けた方々などの

処理手続

・滞納している家賃の分割払いを希望している借主、建物等の明渡しのとき

の修理費や敷金の返還額等のトラブル

・空家に関連するトラブル

・遺産の分け方についての親族間のトラブル

・保育所、幼稚園、学校等での子供の怪我をめぐるもめごと

・マンションの管理組合、自治会、老人会等の運営方法に不満がある場合

 実務例は沢山あります。

申立書のサンプルについては従前にホームページにも掲載しおりますが、

後日他の事案についても掲載する予定です。

 

3 じゃあ調停当日ってどんな感じなのでしょうか?

申立人待合室と相手方待合室があり、それぞれ別々の部屋で一旦待機します。時間になると双方とも呼出されて同じ調停室に入ります。そこで裁判官から調停手続の説明がなされます(二人の調停委員だけの説明の場合もありますよ)。 

それから、まず申立人が調停室で調停委員から40分程度事情を聞かれます。その間、相手方は待合室で待機することになります。その後申立人と入れ替わって相手方から調停室で同様に事情を聞かれます。その際に申立人の希望や裁判所の解決案等が伝えられることもあります。一般的に最大2時間程度を目処にしています。第1回目の調停で合意ができそうであれば双方の意見調整をすることになります。しかし無理であれば次回期日を決めますが、一般的には双方に譲歩案を検討するようにとか、譲歩できる提案をするように依頼します。 双方合意ができた場合には裁判官及び書記官が調停室で合意内容の確認をします。そして依頼があれば後日調停調書正本を双方に郵送することになります。もちろん正本を取りに来庁されることも構いません。

 

4 調停・和解手続(建物明渡請求)のイメージ

 ここで建物明渡し事案を例に訴訟や調停などの裁判手続選択を例にして調停・和解手続のイメージをお伝えしたいと思います。

   訴訟手続の選択のメリットとデメリット

訴訟手続きの中で下記③のようなイメージで和解をしていただいても良いと思います。但し、相手方が頑強に立ち退きを拒絶している場合や行方不明などの場合などに訴訟からスタートした方が良い場合もあります。まあでも無難に調停手続きをオススメします。

少額訴訟ってどうなんでしょうか?金銭の支払いという制限ありますけど。

利用率が高いのは交通事故の損害賠償請求が多いかなあ?でも保険契約で弁護士に依頼できる条項がある場合には1回で終了することはないので利用する意味は薄いかも?

昔は敷金返還請求などが多かったような気がします。

   あまり支払督促を利用されていないのは?

支払督促手続を利用して賃料請求をすることは可能です。もっとも、後述するように賃借人の退去を目的とする事案では不向きであるし、さらに、経済状態の悪い賃借人について滞納家賃の全額支払いを求めても実現可能性が低いし、債権回収も困難な事案が多いのが一般です。

賃貸人の希望は全額の支払い又は物件の明渡しである場合が多いのが現状です。

但し、古い物件であって新しい賃借人を探すのに苦労している事案では、滞納家賃の分割支払や賃料の減額等でも構わないという賃貸人も稀にいらっしゃいますから、物件の建築時期や所在地など賃貸物件としてのニーズの状況なども考慮しながら手続選択をする必要があります。書籍などにある典型事例での一般的な解決手法に固執しないで、依頼人や物件の状況及び相手方の実情等を把握したうえで、より適合した手続選択をすることが個別事案の適切な解決につながります。

   賃貸人および賃借人の関心事

(賃借人が住んでいる事案における裁判窓口や調停・和解での説明例) 

・賃貸人の希望:早く出ていってもらって新しい賃借人を探したい。

                    滞納家賃を全額支払ってもらいたい。

        賃貸物件が古くて新しい賃貸人を探しにくい物件だと少

        しでも家賃をもらいたい。

・賃借人の希望:引越し代を援助して欲しい

        滞納家賃を免除又は減額して欲しい

  ☆裁判所の受付や調停及び和解での妥当な解決への誘導の試み

  ➡賃貸人側には

感情的な賃貸人の主張を和らげて経営者的な視点で対応していただくようにお願いするのが一般です。裁判手続による賃貸人の権利の全面的な実現は賃借人が任意に応じない場合には判決・強制執行という手続となります。このような手続によると、多くの時間と費用がかかります。それよりも譲歩して任意に出ていってもらった方が経営者的な観点からは利益であるということを理解してもらえるようにしていると思います。時間と費用を厭わないという賃貸人も稀にいらっしゃいますが、ほとんどはやむを得ないと妥協されている場合が多いと思われます。

 大雑把な問題解決への流れとしては、和解や調停条項でまず賃貸契約を合意解除して、明渡時期を一般的は2〜3か月以上猶予し、もし任意に明渡しに応じた場合には、滞納家賃及び明渡しまでの賃料相当損害金の支払免除又は減額するという約束にするのが一般的です。和解や調停条項は判決と同じ効力があります。ですから、賃借人が期限に物件の明渡しに応じなければ強制執行も可能です。具体的には正本の双方送達の口頭申請後に和解又は調停調書正本を送達しますから、送達証明書申請及び執行文付与申請をします。実際の強制執行では刃傷沙汰になることもありますし、地域性が強い地区では悪い噂になることもありますので、そのようなリスクについても事前に説明する必要があります。

➡賃借人側には

本来は物件の明渡訴訟になれば、滞納家賃を支払と物件の明渡しをしなければならなくなる可能性が高いけれども、仮に一定期間後に円満に退出をする気持ちがあれば、賃借人の希望を賃貸人に伝えて調整するという調停進行が一般的です。具体的には、合意案=滞納家賃の免除、物件明渡時期の延期、延期期間の賃料相当損害金の免除を賃貸人に伝えて説得して譲歩を求めるという進行方針を説明します。公営住宅等の安価な引越先の紹介等を調停委員がしている例もよくあります。

☆調停や和解条項のサンプル

一般的には

a賃貸借契約の合意解除、b滞納家賃の支払義務の確認、c数ヶ月後の賃貸物件明渡、d賃貸人が期限内に物件明け渡したときには滞納家賃及び合意解除後明渡日までの賃料相当損害金の支払免除、e期限までに物件明渡義務を履行しない場合の賃料相当損害金の支払義務の確認と支払の給付条項、敷金返還などを合意内容にします。

※合意条項のサンプル

1 申立人と相手方とは別紙記載の賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」と

 いう。)を本日合意解除し、申立人は、相手方に対し、別紙記載の建物(以

 下「本件建物」という。)の明渡しを令和元年12月31日まで猶予する。

2 相手方は、申立人に対し、前項の期日限り本件建物を明け渡す。

3 相手方は、申立人に対し、本件賃貸借契約上の滞納家賃300,000円(平

 成31年1月から令和6月分)及び本日から本件建物明渡し済みまで1か

50,000円の割合による賃料相当損害金の支払義務があることを認める。

4 相手方が申立人に対し本件建物を第3項に従って引渡したときは、申立

 人は、相手方に対し、前項の支払義務を免除する。

5 相手方が第2項の明渡し義務の履行を怠ったときは、相手方は、申立人

 に対し、第3項の滞納家賃300,000円及び本日から本件建物明渡し済みま

 で1か月50,000円の割合による金員を直ちに支払う。

6 申立人と相手方とは、申立人と相手方間には、この調停条項に定める他

 に何らの債権債務のないことを相互に確認する。

7 調停費用は各自の負担とする。

 

※このストーリーの結末から逆算して受付や両者の合意形成のための調整や双方の譲歩に向けた両当事者への様々なアプローチを調停委員、裁判官、書記官がしていくことになります。

☆どちらの側になるかは別として、裁判所の円満解決思考及び具体的な解決策を認識していただくことを前提として裁判手続を活用して問題解決の道筋をつけていただければ幸いです。

 

 以上が調停のイメージなのです。たとえ不成立になったとしても特に法的な不利益を被るわけではないし相手方の意向や裁判所の見解なども知る機会を得られます。法的な手続を検討する材料にしていただければ良いのです。欧米にはないユニークな制度であり、円満解決を希望する傾向が強い日本の風潮に合致したシステムです。

身近な法律問題は刃傷沙汰になるリスクもありますので、トラブルを抱え込まないで取り敢えず調停制度の利用をご検討していただければ幸いです。

2020 / 01 / 01
14:08

行方不明者の処理法:相続編&抵当権などの登記抹消編

 行方不明者の処理法:遺産分割編

1 不在者財産管理人選任・相続財産管理人・特別代理人選任手続の活用

  遺産分割協議書作成ということで、相続人の一部の行方が分からない場

合には調査能力が問われると一般的には言われています。

また相続人が韓国人の場合などには戸籍を追っていくという作業が著し

く困難になっている現状があります。

 さらに外国での多額の費用・時間を費やした結果、認知症であることが

判明すると遺産分割処理は遠のきます。その旨を記して家庭裁判所に遺産

分割を申立てたてると後見人の選任が前提であるという立場を示している

裁判官もいます。

そこで、取り敢えず法定相続分の分割という条項であれば、家庭裁判所

における不在者財産管理人や相続財産管理人の選任という手続選択を検討

して下さい。

 加えてもともと日本人であっても外国人と結婚するなどして日本国籍を

喪失して外国籍を取得するとその人の現在の状況の把握が著しく困難にな

る場合も増加しています。

このような国籍喪失者が相続人となる場合にも家庭裁判所による不在者

財産管理人、相続財産管理人、遺産分割調停手続における特別代理人選任

の利用の可否を検討する必要があります。

  帰来する可能性が低ければ法定相続分未満の遺産分割条項での遺産分割

協議書も可能。法定相続分の半額あたりから試してみませんか?

第2版家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務

片岡武他著 日本加除出版株式会社 P188参照

(以下「実務」という。)

2 帰来時弁済型の遺産分割条項の活用

  遺産分割調停申立後に担当裁判宛に特別代理人を申立て許可されれば1

0万円の費用でOK!百万単位なら許可の可能性があります。これも駄目も

とでチャレンジして下さいませ。許可されなければ取り下げて別途不在者

財産管理人選任を家庭裁判所に申し立てるという手法もありです。取下げ

について躊躇する必要はありませんし、早期終局になることから裁判所も

歓迎するかもしれません。

 帰来時弁済型の遺産分割条項サンプル 

 「相続人Aは、遺産の代償として、相続人(不在者)Bが出現し、同人

から請求があったときは、同人に対して…万円を支払う。」

  実務P190〜P192参照

   不在者財産管理人選任の場合に限らず遺産分割調停申立後に提案しても

構いません。柔軟に戦略を立てて下さいませ。

3 相続財産管理人の選任事例

  日本に帰化して日本国籍を取得した夫が死亡した際に、妻との間には子

供がいなかった場合、妻以外の相続人が不明な場合

 相続財産管理人選任による解決が一般的です。

もっとも不在者財産管理人の場合と同様に、遺産分割調停申立後に担当

裁判官宛に特別代理人選任申立をして帰来時弁済型の分割条項という可能

性もあります。

 さらに同様な事案で帰化していない外国人の夫の場合には、法の適用に

関する通則法(以下「通則法」という。)36条により夫の国籍の相続法

によって処理されます。妻以外の相続人が不明な場合も取り敢えず裁判所

に遺産分割の申立てをしてみて下さい。実務例では相続財産管理人の選任

によって処しているようです。

 

「渉外家事・人事訴訟事件の審理に関する研究」司法研修所編:法曹會

裁判所の見解等が記載されており、総論的な部分の理解に最適。

「渉外不動産登記の法律と実務」及び2、山北英仁著:日本加除出版

「渉外不動産取引に関する法律と税金」山北英仁、清水和友著:日本加除出版 

個別案件の実務処理が記載されています。

 

家事事件手続法19条1項

裁判長は、未成年者又は成年後見人について、法定代理人がない場合又は法定

代理人が代理権を行うことができない場合において、家事事件の非訟事件の手

続が遅滞することにより損害が生ずるおそれがあるときは、利害関係人の申立

てにより又は職権で特別代理人を選任することができる。

家事事件手続法21条

法人の代表者及び法人でない社団又は財団で当事者能力を有するものの代表者又は管理人については、この法律中法定代理及び法定代理人に関する規定を準用する。

 

 行方不明者の処理法:抵当権などの登記抹消編

簡単にできる訴状作成イメージtraining&判決までの実務例の紹介

1 自然人名義の根抵当権等の抹消の訴状記載と添付する申立書サンプル・

事案の概要と裁判所利用の経緯

遺産分割協議のために不動産登記簿謄本を取り寄せたところ、根抵当権登

記があることが判明した。そこで依頼者である相続人から根抵当権抹消手続

の依頼を受けた。

円満解決のために根抵当権者の登記簿上の住所地に向けて郵便を送付した

ことろ「あて処尋ねあたらず」で返送された。さらに住民票の写しを取寄せ

たところ該当無しという結果となった。

そこで不動産登記法70条3項にもとづく被担保債権の供託による解決や

同法70条1項、2項の公示催告・除権決定という手続を検討したところ、

前者は被担保債権額の供託金が多額なため依頼者の了解を得られず、後者に

ついては急いで売却する必要があるということで(公示催告・除権決定は半

年程度の期間が必要)断念した。そこで訴訟解決を目指すことにした。

具体的にイメージできるかが最大のポイントです。

じゃあ訴状サンプルを検討しましょう。

                     捨印

         訴  状

                     令和2年○月△日

事件名 根抵当権登記抹消登記請求事件

○☓簡易裁判所 御中

                      

○☓市○□町△−○−□

   原       告  ○ ☓  太 郎

 ○☓市○☓町△−○−□(送達場所)

   電話番号 

   ファックス

   上記訴訟代理人司法書士

              書 士  花 子   

 

住居所不明(不動産登記簿上の住所:□△市☓□町△−○−□) 

   被       告  裁判所  次 郎

    

請求の趣旨

1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地につき、○☓法務局昭和30年12月25日受付第1111号根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

 との判決を求める。

請求の原因(妨害排除請求=物権的請求権の例

1 原告は、別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)を所有して

いる(甲第1号証)。←妨害排除請求の法的根拠の事実の記載

2 被告は昭和30年12月20日、訴外加古川彦左衛門との間で、本件土地

について元本極度額金100万円とする根抵当権(以下「本件根抵当権」とい

う。)を設定して登記を経由した(甲第1号証)。←妨害している法的な状態に該当する事実の記載

3 よって、原告は、被告に対して、所有権に基づき本件根抵当権登記の抹消手

続を請求する。

4 尚、被告の住所は不明であることから公示送達による手続をご検討いただ

ければ幸いです(郵便物の戻り及び住民票の写し交付請求の返送書参照)。

 ←公示送達の依頼=認められれば裁判所の掲示板に呼出状を押しピンで

貼って2周間経過したら被告に送達されたことになります。

 

              証拠方法

 甲第1号証 不動産登記簿謄本の写し     1通

              添付書類

 1 訴状副本                1通

 2 訴訟委任状               1通

 3 証拠説明書               1通 不要かも?

 

                          捨印

別 紙             

物 件 目 録

  所 在     ○☓市  

  地 番     □☓番

  地 目     宅地

  地 積     ○□.△☓平方メートル

以上

これだけでオーケーです。

えっ、要件事実の記載や主張・立証責任の尽くしたことになるの?

要件事実は?妨害排除なので、

  妨害排除請求できる権利を有している事実=原告が当該不動産の所有者である

  妨害の事実=被告が当該不動産の抵当権者である事実

これを訴状に記載しているから主張責任は果たしていますよね。

じゃ立証責任は?

登記簿謄本を書証として提出しているから大丈夫!

乙区欄にある登記名義であれば何でもOK!もちろん賃借権登記も

公示送達という裁判所の掲示板に呼出状等を貼り付ける方法なので被告が

出頭することは限りなくゼロですよね。ですから被告からの反論はない。

証拠も不動産登記簿謄本のみで済みますしね。多くの登記抹消事案は簡単です。

まあ疑り深い方は下記の書籍に全て記載されていますので眺めて下さい。お安いですよ!

「新問題研究要件事実」P109P119(司法研修所編:法曹會)¥1,429

円(以下「要件事実」という。)

「民事判決起案の手引P15P16

(司法研修所編:法曹會¥1,600円(以下「手引」という。)

 

じゃあ判決はどうなるのでしょうか?

令和○年11月22日判決言渡及び原本交付 裁判所書記官 

令和○年(ハ)第111号根抵当権抹消登記請求事件

(令和○年11月15日弁論終結)

              判   決

○☓市○□町△−○−□

   原       告  ○ ☓  太 郎

 ○☓市○☓町△−○−□(送達場所)

   上記訴訟代理人司法書士

              書 士  花 子   

 

住居所不明(不動産登記簿上の住所:○市☓□町△−○−□) 

   被       告  裁判所  次 郎

 

主   文

1 被告は、原告に対し、別紙物件目録記載の土地につき、○☓法務局昭和30

年12月25日受付第1111号根抵当権設定登記の抹消登記手続をせよ。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

事実及び理由

第1 請求

  主文1項と同旨

第2 請求の原因の要旨

 1 原告は、別紙物件目録記載の土地を所有している。

 2 別紙物件目録記載の土地には、被告名義の○☓法務局昭和30年12月

25日付第1111号根抵当権設定登記がある。

第3 理由

  請求原因の事実は、証拠(甲第1号証)及び弁論の全趣旨によって認めるこ

とができ、この事実をもとに判断すると、原告の請求には理由がある。

         ○☓簡易裁判所

               裁判官  □ △  ○ ☓   

                    (判決原本は署名・捺印)

 という感じです。

 

2 法人名義の根抵当権等の抹消の訴状記載法

  法人の場合には商業登記簿謄本を取得できる場合には、訴状に代表者名を

記載することができますから、自然人と同様に公示送達によります。しか

し、戦前の台湾法人などでは登記簿謄本を取得できない場合もありますか

ら、その場合には訴訟提起後に担当裁判官宛に特別代理人選任申立てをする

手続選択が迅速処理に便利です。

大雑把な公示送達と特別代理人の見分け方

 とりあえず訴状提出して裁判所側の指示待ちで十分対応できるのですけれども、

まあどんな理由で裁判所が手続選択をしているかを知っておくことも無駄にはな

らない知識なので説明します。

  商業登記簿に記載がない場合

 まあ商業登記簿謄本が取り寄せられなければ、法人等の団体の代表者を

知ることはできませんよね。不動産登記には法人の住所と商号のみが記載

されているにすぎませんからね。

 この場合には特別代理人の選任申立てをします。理由は訴訟行為をする

ためには代表者が必要だから、代表者が分からなければ、取り敢えず迅速

処理のために訴訟行為だけをするための仮の代表者を選任して訴訟進行を

して判決をしましょうというイメージです。

 このイメージを身につければ、訴訟行為をする代表がいない場合には常

に特別代理人の選任でちゃちゃっと訴訟進行して判決をもらいましょうと

いうことになります。清算人や代表者の選任手続を回避して時間及び費用

負担を軽減させることができます。

公示送達という手続選択の場合

住所地不明(不動産登記簿上の本店所在地:…………)

     (商業登記簿上の本店所在地…………… )

被  告 株式会社 ○☓

上記代表者代表取締役 ○☓ 花子 

特別代理人選任という手続選択の場合

住所地不明(不動産登記簿上の本店所在地:…………)

被  告 株式会社 ○☓

上記代表者代表取締役 不 評

  細かなことは資料を見れば再現できます。

 何よりも大切なのは①訴状を提出しなければ裁判所は具体的な指示はしてくれないということと、②大雑把な手続き選択のイメージを押さえれば、手を抜いて、すなわち調査や本来の手続を回避して担保権や賃借権登記を抹消できることを実感することです。

参照条文

民事訴訟法37条

→代表者の死亡や解散等で代表者がいない場合に特別代理人を利用します。

「この法律中法定代理及び法定代理人に属する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団をその名において訴え、又は訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する。」

 

民事訴訟法35条1項

→抹消登記事案では登記名義人が老人施設などに入所している等で意思能力が乏しいのに成年後見人が選任されていない場合に成年後見人選任の代わりに訴訟担当裁判官宛に特別代理人の選任申立てをして処理します。

法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅滞のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。」

 

 

1
Today's Schedule