日記
映画『平行と垂直』を観て ー支えることと、自分の人生を生きること
今日は映画「平行と垂直」を観に映画館へ。
自閉スペクトラム症の兄・日向大貴と、
カウンセラーとして働きながら兄を支えてきた妹・希
のきょうだいの物語。
幼いころから二人で支え合い、
兄は周囲の手を借りながらも自立した生活を送り、
妹はそんな兄を気にかけながら生きてきた。
そんな二人の関係が、
希が恋人からプロポーズを受けたことをきっかけに、
少しずつ動き始める。
「これまで通り」だと思っていた生活に、変化の時が訪れる。
それは、兄にとっても、妹にとっても、決して小さな出来事ではないはず。
映画を観ながら、
カウンセラーとして、そして一人の人間として、
いろいろなことを考えさせられた。
◆「支えること」と「背負うこと」は違う
希は、兄のことを大切に思っている。
だからこそ、これまで兄を支えることが、
自分の人生の一部になっていたのだと思う。
家族であれば、「私がやらなければ」と思う場面は少なくない。
特に、障害のある家族を支える立場にあるきょうだいは、
幼いころから自然と「支える側」になることがある。
でも、
支えることと、背負うことは同じではない。
私はこのことを、カウンセリングの仕事を通しても感じることがある。
誰かを大切に思うからこそ、その人の問題まで自分が引き受けてしまう。
「この人が困らないように」
「私がいなければ」
「私が何とかしなければ」
そうやって相手を思う気持ちが、
いつの間にか自分自身の人生を狭めてしまうことがある。
けれど、本当の意味で相手を尊重するということは、
何もかも代わりにしてあげることではない。
必要なところでは手を貸しながらも、
「あなたの人生は、あなたのもの」
と信じること。
それは、家族であっても同じなのではないだろうか。
◆カウンセラーだからこそ、難しいこと
希自身がカウンセラーであるという設定も、とても興味深く感じた。
人の話を聴き、人の心に寄り添う仕事をしている人であっても、
自分の家族のこととなると、必ずしも冷静にはなれないものだ。
むしろ、家族だからこそ見えなくなるものがある。
カウンセリングでは、相手との間に一定の距離がある。
その人の人生を、その人自身のものとして尊重しながら、
一緒に考えていく。
でも家族の場合は、そこに「これまでの歴史」がある。
幼いころからの記憶。
一緒に乗り越えてきた出来事。
「私がこの人を守らなくては」という思い。
そうしたものが重なっているからこそ、
簡単には「相手の問題」と「自分の問題」を分けられない。
だからこそ、家族への支援では、
「何をしてあげられるか」だけではなく、
「どこまでが自分の役割なのか」
を考えることも大切なのだと思う。
◆きょうだいにも、それぞれの人生がある
この映画を観ていて、特に心に残ったのが、
「兄の人生」と「妹の人生」は、同じではない
ということだった。
もちろん、二人は大切な家族。
支え合ってきたからこそ、深い結びつきがある。
でも、家族であっても、それぞれに未来がある。
兄には兄の人生があり、
妹には妹の人生がある。
それぞれが自分の人生を歩みながら、
必要なときには支え合う。
私は、そんな関係が理想なのではないかと思う。
「家族だから一緒に生きなければならない」でもなく、
「自立するためには家族と距離を置かなければならない」でもない。
近すぎず、遠すぎず。
必要なときには手を差し伸べられるけれど、
お互いの人生を尊重できる距離。
そんな関係をつくっていくことなのかもしれない。
◆ 「平行と垂直」というタイトル
映画を観終わってから、タイトルについても考えてみた。
平行線は、どこまでいっても交わらない。
でも、同じ方向を向いて進むことができる。
一方、垂直は交わる。
人生の中で、何度も出会い、影響し合う。
家族というのは、もしかすると
「平行」と「垂直」の両方なのかもしれない。
ずっと一緒にいるのではなく、それぞれの道を歩いていく。
けれど、人生のある地点で交わり、支え合い、
またそれぞれの道へ戻っていく。
そんなことを、この兄妹の姿から感じた。
◆「その人の人生」を信じる
カウンセラーとして人と関わるとき、
私は「その人を変える」ことはできないと思っている。
できるのは、その人が自分自身の気持ちに気づき、
自分の人生について考え、自分なりの選択をしていくためのお手伝い。
それは、家族に対しても同じなのかもしれない。
心配だからといって、先回りしてすべてを決めてしまうのではなく、
「この人なら、自分の人生を歩いていける」
と信じる。
そして、自分自身もまた、
「私も私の人生を生きていい」
と思えること。
支える側の人にも、自分自身の人生がある。
誰かを大切にすることと、
自分の人生を大切にすることは、
決して反対ではないのだと思う。
◆ 映画を観終えて
厚労省のページに
映画『平行と垂直』とタイアップ!
と書かれていて「あ、観てみたい!」と思い、すぐに予約して
やっと今日観ることができた。
「平行と垂直」は、障害や家族をテーマにした映画でありながら、
私にはもっと普遍的な物語にも感じられた。
家族との距離。
誰かを支えるということ。
自立とは何か。
そして、自分の人生をどう生きていくのか。
大切な人がいるからこそ、迷う。
大切に思っているからこそ、手放すことが難しい。
でも、相手の人生を信じることは、突き放すことではない。
そして、自分自身の人生を選ぶことも、
決して誰かを見捨てることではない。
そんなことを静かに考えさせられる映画だった。
「支える」という言葉の奥には、
その人が、その人自身の人生を生きられるようにする
という意味もあるのかもしれない。
そしてそれは、カウンセラーとして人と関わるときにも、
家族と向き合うときにも、大切にしていきたいことだと思った。
それぞれの人生を歩きながら、ときどき交わる。
そんな「平行」と「垂直」の関係を、
私自身も大切にしていきたいと思う。
今日も、ありがとう。

