2026-09-12 18:57:00

注射はするのに、鍼は怖い?

膝が痛くなり病院へ行くと、関節に注射をすることがあります。

 

【注射は痛い】

 

それが分かっていても、治すためなら仕方がないと受ける方は少なくありません。

 

ところが鍼治療をご提案すると、

「鍼はちょっと怖い」、「痛そう」、、「受けたことがあるけれど苦手」、、、

という反応が返ってくることがあります。

 

考えてみると少し不思議です。

病院では痛い注射を受けているのに、それよりずっと細い鍼を怖いと感じる。

 

でも私は、これは決して矛盾しているとは思いません。

人が怖いのは痛みそのものだけではなく、

 何をされるのか分からないこと

 過去の嫌な記憶

 頭の中で想像する痛み

こうしたものも大きく影響しているからです。

 

 

実際に当院にも、とても鍼が苦手な患者さんがいらっしゃいました。その方は鍼だけでなく、注射そのものも大嫌いな方でした。

 

ところが膝を痛め、変形性膝関節症と診断され、痛みのため病院で膝への注射を受けることになりました。

 

嫌ではあるけれど、この膝の痛みを何とかしたい。

そんな思いだったのだと思います。

注射を受けると、一週間ほどはまずまず調子が良い。

しかししばらくすると、また膝が赤く腫れ、痛みが戻ってくる。

 

再び病院へ行き、また注射を受ける。

 

そのようなことを四回、五回と繰り返していたそうです。

良くなったと思ったら、また痛くなる。

 

きっと患者さんの中には、「このまま続けていて本当に良くなるのだろうか?いつまで注射を続けるのだろう?」という疑問や不安、苛立ちもあったのではないかと思います。

 

 

そんなある日、階段を降りていると膝に強い痛みが出ました。特に階段を降りる動作がつらかったそうです。

 

そこで患者さんは病院へ行き医師に尋ねました。

「この膝は治りますか?階段を降りるとき、とても痛いんです。」

 

すると医師から「これはもう治りません」と言われたそうです。

 

 

もちろん医師には医師なりの医学的な判断があったのだと思います。

 

しかし患者さんにとって

「もう治りません」

という言葉は、とても重いものだったのではないでしょうか。

 

痛みが続いている時、人は身体だけではなく心も少しずつ疲れていきます。

 

 この先ずっとこの膝と付き合わなければならないのだろうか?

 階段は痛いままなのだろうか?

 

そう考えるだけでも気持ちは沈んでしまいます。

 

 

そんな時、その患者さんの娘さんが当院の鍼治療を受けており、お母さんに一度行ってみたらと勧めてくださったそうです。

 

そして初めて てあーて鍼灸院へいらっしゃいました。

 

膝を見ると、かなり赤く腫れていました。

お話を聞いていると、患者さんがこんなことを教えてくれました。

「昔、肘に鍼をしてもらったことがあるんだけど、あれがすごく嫌だったんです。」

 

鍼に対して、はっきりとした苦手意識を持っていたのです。それは当然です。

一度でも嫌な経験をすれば、鍼とはそういうものだと思ってしまいます。

 

 

私は無理に

「鍼は痛くありませんよ」

「怖くありませんよ」

とは言いませんでした。

 

できるだけ身体の状態を確認しながら、刺激を抑えて治療を進めていきました。

 

そして実は、その患者さんが昔の鍼の話をしている頃には、私はすでに何本か鍼をしていました。

 

そこで私は聞いてみました。

「今の鍼はどうですか?痛いですか?」

「つらくないですか?」

 

すると患者さんから返ってきたのが

「えっ。もう鍼を打ってるの!?」

という言葉でした。

 

 

私はこの言葉がとても印象に残っています。

 

患者さんの頭の中にあった鍼と、実際に身体で感じた鍼が違ったのでしょう。

 

鍼が怖いというより、昔経験した鍼の記憶が怖かったのかもしれません。

 

そのまま治療を進め、治療を終えました。

 

そして患者さんがベッドから身体を起こした時です。

 

膝を確かめながら、こちらを見て明るい表情で

「いいかも!」と言ってくださいました。

 

帰ってすぐに娘さんにもすごく良かったと話してくださったそうです。

 

 

私は、鍼治療を怖がる方を見ていて思うことがあります。

 

人が怖がっているのは、細い鍼そのものではない

ということが多いのではないかということです。

 

 昔痛かった経験

 注射針から連想する痛み

 身体に何をされるのか分からない不安

 自分では見えない場所で治療される怖さ

 

こうしたものが全部合わさって【鍼は怖い】という気持ちになっていることがあります。

 

 

◾️鍼灸院で使う鍼は、一般的な注射針とは目的も構造も違います。

 

非常に細い鍼を使い、身体の状態やその方の感受性を見ながら刺激量を調整していきます。

もちろん感覚には個人差があります。

 

場所によってチクッと感じたり、ズーンと響くように感じたりする場合もあります。

 

ですから私は「何も感じません」とは言いません。

大切なのは、我慢させながら鍼をすることではないと思っています。

 

「少し怖いです。」

「昔、鍼で嫌な経験をしました。」

「痛いのは苦手です。」

 

そういうことを最初に伝えていただいて構いません。むしろ伝えていただいた方が、その方に合わせた治療ができます。

 

 

そしてもう一つ大切なのは、

診断名と、今感じている身体の状態は、まったく同じものではない

ということです。

 

【変形性膝関節症】という診断があったとしても

 膝の周囲の筋肉

 股関節の動き

 足首の動き

 身体の使い方

 筋肉の緊張

 炎症の程度

 歩き方

 階段での身体の使い方

などによって、症状の出方は一人一人違います。

画像に変形があるからといって、痛みのすべてがその変形だけから生まれているとは限りません。

 

だから私は診断名だけを見るのではなく、

 なぜこの方は階段を降りる時に痛むのだろう?

 どこに負担が集中しているのだろう?

 身体のどこを変えると膝が楽になるのだろう?

という視点で身体を見ていきます。

 

 

病院での治療が必要な場合ももちろんあります。注射が役に立つ場合もあります。

 

鍼がすべてを解決するわけでもありません。

 

ただ、

 何度治療しても痛みが戻ってしまう

 このまま同じ治療を続けていいのだろうか

 もう治らないと言われたけれど何かできることはないだろうか

 

そう感じた時には、

少し違う角度から身体を見てみることも、一つの選択肢だと思います。

 

 

鍼が怖くても大丈夫です。

怖いものを無理に好きになる必要はありません。

 

まず話をして、身体をみて、納得してから治療を受ける。

 

それでいいと思っています。

 

 

あの日

「もう鍼を打ってるの!?」

と驚いていた患者さんが

 

治療後に

「いいかも!」

と明るい表情を見せてくださった。

 

私にとっても、印象に残っている出来事です。

 

鍼が怖いという理由だけで、身体を良くするための一つの可能性まで最初から閉じてしまう必要はありません。

 

怖いという気持ちも含めて、その人の身体をみる。

 

それも鍼灸治療の大切な部分だと、私は考えています。

 

てあーて鍼灸院

 

LINEで予約相談する➡︎https://lin.ee/pdoHzLs