イタリア研修
シチリアの西の端、トラーパニってどんな街?
前回、今年のイタリア研修ではトラーパニを拠点にする、と書きました。
では、トラーパニってどんな街なんだろう。
私自身、2008年に一度近くまで行っているのに、知っていることといえば「塩田で有名な街」というくらいでした。
そこで今回の研修を前に、料理から少しずつ調べています。
トラーパニはどんな街?――「西の端」ではなく「海に開かれた街」
地図を見ると、トラーパニはシチリアの西の端。
街そのものが、海に向かって細長く突き出しています。
でも、この街の歴史を見ていくと、
「シチリアの西の端」というより、
「海に開かれた街」と考えた方が分かりやすいことに気づきます。
古くは、すぐ近くの山の上にあるエリチェと海をつなぐ港。
その後も、地中海を行き交う船が出入りする港町でした。
海の向こうには北アフリカがあり、港にはさまざまな土地から人や物がやってくる。
そう考えると、この街の料理がちょっと面白く見えてきます。
そんな港町の料理として有名なのが、
「ブジアーテ・アル・ペスト・トラパネーゼ」。
くるくると螺旋状に巻いたブジアーテというパスタに、トマト、バジル、ニンニク、アーモンド、オリーブオイルなどで作ったペストを合わせます。
ペスト・トラパネーゼについて調べると、ジェノヴァの船乗りたちが伝えたニンニクと木の実を使うソースを、トラーパニの人たちが土地のトマトやアーモンドを使って変化させた、という話がよく出てきます。
どこまで史料で遡れるのかは、もう少し調べる必要があります。
ただ、少なくとも中世のトラーパニには、ジェノヴァやピサなど各地の商業勢力が進出していたことは確認できます。
そう考えると、この料理の背景に「港」があるというのは面白い。
魚のクスクスは、なぜトラーパニにあるのか?
そしてトラーパニの料理でもう一つ気になるのが、「魚のクスクス」。
クスクスと聞けば、北アフリカを思い浮かべる方も多いと思います。
でも、地図をシチリアだけで見るのをやめて、地中海まで広げてみる。
するとトラーパニの向こう側には、チュニジアをはじめとする北アフリカがあります。
シチリアの西の端だと思っていた場所が、海から見れば地中海を行き交う人や物の接点に見えてきます。
実際、トラーパニ市の資料では、16世紀初め、北アフリカへサンゴ漁に出たトラーパニの漁師たちが、現地の食文化と接触したことが始まりとされています。
塩田、マグロ、オリーブ、ブドウ
さらに街の南側には塩田が広がります。
私が2008年、マルサラからの帰り道に車窓から眺めたのも、この辺りの景色でした。
塩もまた、この街を長く支えてきた産業のひとつです。
そしてトラーパニの港から船で向かえるのが、ファヴィニャーナ島。
名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。
青く透き通った海と、たくさんの船が浮かぶ景色で知られる、シチリアの人気観光地です。
でも、この島の歴史を調べてみると、出てくるのが「マグロ」。
かつてファヴィニャーナではマグロ漁が盛んで、大規模な加工場までありました。
今ではリゾートとして知られる島にも、海と魚で暮らしてきた長い歴史があります。
港の周りには塩田が広がり、沖では魚を獲る。
少し内陸へ行けば、オリーブやブドウなどが育てられています。
そうやって見ていくと、
ブジアーテも、魚のクスクスも、ただの「トラーパニ名物」ではなく、
料理を調べているつもりが、いつの間にか街の歴史を調べていました。
料理だけを見るのではなく、「なぜ、この街でこの料理なんだろう?」
塩田を見て、市場で魚を見て、
ブジアーテを食べて、魚のクスクスを食べる。
そこまで見てこられたら、18年前とはずいぶん違ったトラーパニが見える気がしています。