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2025/12/01 19:18

第1回鱗kokera川柳賞 発表

暮田真名さん、なかはられいこさん、平岡直子さんによる厳正なる選考の結果、
第1回鱗kokera川柳賞は

伊野こうさんの「口からアスパラガス」に決定しました!

 

そのほかの結果は以下の通りです。

 

◆暮田真名賞

「地上波」 島崎

 

◆なかはられいこ賞

「きのう」 八上桐子

 

◆平岡直子賞

「わたしのワンピース」 野に咲くお花

 

◆奨励賞(作者五十音順)

「暮らす」 植田遥大

「光脱毛」 大森豊寛

「解体記 vol.3」 小沢史

「喉」 織原禾

「焼きたてのパトロール」 栫伸太郎

「孔雀の渡河」 桜庭紀子

 「LUCKY/LUCK」 花島照子

 

 

【第1回 鱗kokera川柳賞】

 

口からアスパラガス  伊野こう

 

はじめまして生放送の塩加減

ないがしろにされたのゆで卵の剥き方で

そら豆はじめました もうあとには戻れない

私信だよ 風にのちほどほどかれて春巻き

ぼくは口からアスパラガスを食べるひと

みんなふたご お刺身だらけのフェスティバル

そうめんはほどいて詩にして捨てただけ

ゆっくりとレモンの数だけおじぎした

早起きはいやだしココアまみれだし

カステラのひかりにきみは水をさす

ぱぴぷぺぽって口にしたなら冬だよね

抜け道にしるこがあって泣けてくる

お味噌汁はゆびをきらない祈りでしょうか

月にしてはすこしたりないぼくのみみたぶ

どすこい おしりからとてもとおいおわかれ

 

 

【暮田真名賞】

地上波  島崎

 平成を思い出しても顔がない

シャンプーとリンスの偉い方を取る

こう見えて声にならない声だけど

快楽を明け渡したい銀食器

地上絵もトートバックにできますか

許可されていない浮き足立つことは

脚を借し出して葡萄を踏んでいる

共通の話題が手術台の上

いやらしくない落雷は珍しい

視聴した海から順に消していく

左にいてときどき右が気にかかる

目を開く必要がないのはいいね

最適化しても七福神になる

パターンの限られている姉妹都市

落葉の底に麻酔が効いていた

  

【なかはられいこ賞】

きのう  八上桐子

蜩を握る強さでいる、ここに

まるで光 折れながら入る部屋

流木が二本シーツに流れつき

秋の日をひっきりなしに父の舌

カステラのざらめ歯のないくらがりへ

股ぐらをひらいてひろいひろい昼

剃刀にすずしくおもて撫でられる

ふっと姉おもえばうごく魚の鰭

水の面へへのへのもへじわらい死ぬ

念仏の声のおおかた息になり

千の手の一つも空いていないのか

ペットボトルのたましい潰し

無花果のジャム腐るほどある時間

春の泥かき混ぜ寝入りばなの足

水たまりいったいいつのきのうだろう

  

【平岡直子賞】

わたしのワンピース  野に咲くお花

マーガレットが嫌いだったの?

楽しいな。わたしお荷物だったから

アリスはおすましドードーの群れ

ティーポット頭につけてくりかえす

ジャムだらけです。大変ですね。

致死量のリボンを捨てるお母さん

チューリップきれいに飾る図鑑だね

お家の顔した子どものなぞなぞ

黄色い犬とリボンとダンス

うさぎと蔦の交流を見て

消えたおもちゃの真似をしていた

お星様かたかたになり眠ってる

クッキーに微笑んでいる襟のなか

かわいいだけでいいから生きて

おやすみ!夢とピクニックしよう

 

 【奨励賞7名】

暮らす  植田遥大

落椿 実際に見たことがある

唐揚げのどこにも生活感がない

塗りながら肌は油絵だと思う

末席でメトロノームを真似ている

看板のはたらきをする犬らしい

日常は人工臓器へと果てる

命名のなべて褒めごろされている

理屈の馬を競わすような会議室

マフラーを死なないように締めている

目をやれば誰もが僕の名付け親

ブランコが建築に見えなくもない

街灯を浴びては毛穴からひずむ心地だ

スキップのやめどきさえも振り切った

なけなしの着衣の僕が帰宅する

キュレーション:名前を背負って生きること

 

光脱毛  大森豊寛

空豆を剥いてはじまる大恋愛

深爪にクリアファイルを挟み込む

おすすめを全て試した虫歯です

振ったひとどうしてるかな飛蚊症

湖を前になおさら吐きにくい

心臓に剣山を押し当てて聴く

巻き爪がすべて見てきたカレンダー

膨らんで蕾のままの教習車

マチアプはぬか漬けにしたはずなのに

TikTok踊り疲れて苔を踏む

どうしてもルビーで薔薇が作れない

Bメロを矯正しても愛のうた

ランウェイの角を曲がれば涅槃像

蜜蜂にVIOは荷が重い

ランド派の人と行く東京タワー

 

解体記 vol.3  小沢史

薬指お求めやすくなりました

あいまいな背骨ですけどいいですか

鳩尾にうっかり咲かせてる桔梗

踝は製氷皿の底の方

星砂の瓶にむだ毛を詰めておく

黒ずんでいく傷満開百日紅

体育会系の鱗はみな剥がす

押し花にした角膜の羽音する

わたくしの音をさがしている指だ

梨を剥く指紋失くしてしまうまで

産卵の時間もも色引き裂いて

ほくろごと指を挿れてる鯉の口

法令線はあたためますか?

ひっそりと挽肉器から火があがる

ちりとりで爪先さっと集めとく

 

喉  織原禾

十月が二回来ている昼の手話

洋梨の光を吸ってイ長調

笑い声鏡があれば割り切れて

呼ばれたら余韻が残る咽喉科

返事は?はいここから長細い薬局

金木犀カラオケの音質が降る

蛍の光歌い終わったあとの蘭

団地からはんかち落としがついてくる

落としもの耳に残っているIf you

螺旋階段石膏像の喉

暗室で静かに切れた消費期限

せっけんのうらで喋っているくもり

会うたびに雑音ばかり家の鍵

うがいしても芯は仏間に届かない

吐き出したように土鳩が散らばって

 

 焼きたてのパトロール  栫伸太郎

 ヤドカリは都道府県とかの仲間

通気口みたいに笑う春だった

「霧状にされたさんすうセットです」

吐息からシャトルバスまで揃う店

煮沸した口伝のなかのエビサンド

個包装の半直線とむつみあう

寝耳をうめるためのグラタン

やわらかいうどんがささらない本棚

焼きたての分水嶺のパトロール

頑張れば見える大豆でできている

不思議の国の頭脳流出

添付ファイルに霧笛をいれる

夏風邪を引くところまで自分でやる

ずるずるひきづっている(句読点を含む)

あと五分待って来なかったら手品

 

孔雀の渡河  桜庭紀子

うぶすなや かつて寄せ木であったころ

コスモスとしての人格うばいさる

鳥影に告げ口をしてむすぶ舌

ゆるすとき、脳(なずき)はラベンダーカラー

弱そうであれば溶接しましたか

キマイラのごとくふるえる姫女苑

軀からだゆれているならまだ平気

さかさまになみだ流して蔦だった

白浜を有彩色でのみ示す

切り身になってからかしこくなった

晩年にふれて胞子のテクスチャー

死んでからすきになる蜘蛛 手の棺

孔雀の渡河きみが再生せぬように

生前は風景でした 無人の除幕式

夜の顔しましたいつもひらくので

 

LUCKY/LUCK  花島照子

いもうとのこえルピナスの翳を描く

胸に羽はえてなんにも見えてない

もう誕生日もう裏声がもどらずに

かりそめに灯るミルクと褪せましょう

ぜいたくに夢へ朱墨が垂れてくる

蛇を目におさめてふたり雪を呼ぶ

杉鳴りのいもうとのほほ夜に吸われ

空は霙にからだは川に同期する

はなうたに拇印を捺してわたしたち

言うべきことを墓石の艶に思い出す

くるうまで氷柱を舐めるから姉は

破顔してこわい鏡を手懐ける

まずお辞儀してから脱いでやまいだれ

幸運がいもうとの背に濡れてしまう

うしろからおりがみの犬ひらく音

 

 

 

2025/10/21 09:24

第 3 回鱗 kokera 賞 作品募集のおしらせ

 

いつもお世話になっております。鱗 kokera 店主の野村茶鳥です。

皆様への日頃の感謝を込めまして、今年も鱗 kokera 賞の作品を募集させていただきます。

 

詳しくは以下をお読みください。

 

 

 

◆1 応募資格 年齢不問、句歴不問。

 

・・・今回から鱗kokeraに来店したことのない方も応募可能となっております・・・

 

 

◆2 募集作品 タイトル付きの未発表 15 句(※Ⓐ) なお、お1人につき1作品まで。

 

◆3 応募期間 2025 年 10 月22 日~12 月 30 日

 

◆4 応募方法 ご来店して何らかのご注文の上で、店主の前で必要事項・タイトル・作品を

 

ベタ打ちしたメールを送信(※Ⓑ)。ご来店せずに応募される方は別途投句料千円を頂きます。

投句料の振込方法は 1 月初めにまとめてご連絡させていただきます。

 

・・・応募当日にご来店されていない場合は基本的に投句料を頂戴します。

   ご来店日にあわせて応募作品をまとめるようにお願いいたします・・・

 

 

・必要事項 

①俳号(姓と名の間にスペースを入れ、読み方も記してください)

②店に置く応募作品集への掲載の意志を はい or いいえで(※Ⓒ)

 

③メールアドレス

④次のどちらかを入力(来店しての応募 or 投句料を払っての応募)

 

 

 

 ・送信先 nomurakaori.ad@gmail.com

 

 

◆5 選者 村上鞆彦先生、西村麒麟先生、鴇田智哉先生

 

 

◆6 賞 先生方の色紙や短冊、鱗 kokera のお食事券やドリンク券

正賞受賞作は店内に1年間飾らせていただきます。

 

◆7 注意事項

 

・ 応募後の訂正には一切応じられません。また、既発表の作品については授賞を取り下げます。

 

 

・受賞作・候補作・秀作十句は HP にも掲載させていただきます(応募後に受賞作・候補作・

 

秀作十句に該当した句を、他の未発表句募集の賞に出すことはお控えください)。

 

・発表は 3 月中旬を予定しています。

 

 

 

【注】

 

※Ⓐ 未発表については、最後に提示しております【未発表・既発表について】をお読みく

 

ださい。 既発表句が含まれていた場合には授賞を取り消しますのでご注意ください。 不安

 

な場合は事前に野村茶鳥までお問合せください。

 

※Ⓑ ベタ打ちとは、Word 等の添付ではなく、メール本文に入力することです。 あらかじ

 

め送信を押すだけにしてご来店いただくとスピーディーかと思います。 メールでのご応募

 

が難しい方は店主にご相談ください。

 

※Ⓒ 当店に置く応募作品集への掲載について、一部作品ではなく、作品全部の掲載につい

 

て、 はい or いいえ でお答えください。なお、受賞作・候補作・秀作15句につきましては、

作品集への掲載は必須とさせていただきます。

 

***ご不明な点は応募前にお問い合わせください。 ご応募たのしみにお待ちしております。

 

 

 

野村茶鳥 問合せ先:nomurakaori.ad@gmail.com

 

 

 

【未発表・既発表について】

 

 

 

未発表とは、「どこにも発表されていない句である」ということです。

鱗 kokera 賞は「未発表 15 句」を募集していますので、「既にどこかで発表した句」は応募しないでください。

 

以下の例は「既発表」となりますので応募しないでください。

 

 

 

・総合誌・結社誌・同人誌・SNS 等に発表した作品

 

・『お~いお茶俳句大賞』等の公募制コンクールの受賞作に掲載された作品

 

・テレビやラジオで読まれた句

 

・鱗 kokera 賞選者の参加する句会に出した句

 

したがって、例えば「南風」東京例会や「麒麟」東京句会に出した句、

「南風」「麒麟」の結社誌に投稿したけれど掲載されなかった句、

鱗 kokera 賞選者のどなたかが選をしたコンクールの落選句なども、避けてください。

 

鱗 kokera 賞選者の参加していない句会に出した句で、特に媒体に発表していない句は

「未発表」扱いで大丈夫です。 不安な場合は必ず事前に野村茶鳥までお問合せください。

 

 

2025/10/21 09:08

第1回鱗kokera川柳賞ご応募ありがとうございました

おかげさまで63作品のご応募をいただきました

発表は1月中旬を予定しております

なお、10/21付で応募の方全員にメールを差し上げました

もし届いていない方がいらしたらご連絡いただければ幸いです

2025/07/15 20:55

第1回鱗kokera川柳賞のご案内

 

【第1回鱗kokera川柳賞のご案内】

このたび皆様への日頃の感謝を込めまして、いつも「水曜日のこんとん」を当店で開催してくださっている暮田真名さんにお願いしまして、川柳の賞を設けさせていただくこととなりました。

 

以下をお読みになり、奮ってご応募くださいませ。

 

◆1 応募資格  年齢不問・句歴不問。

 

◆2  募集作品  タイトル付きの未発表15句(※➀)

 

 

◆3  応募期間 2025年7月15日~10月15日

 

◆4  応募方法  ご来店の上、何らかのメニューをご注文の上、応募用のGoogleフォームを送信。 ご来店されない場合は別途応募料千円を頂戴します。

        ・Googleフォーム https://docs.google.com/forms/d/1OnUszOf7Fkl8ToBkt1EnkN_UHdy-2k7x8d4v0kK16X4/edit

        ・必要事項は筆名・メールアドレス・来店の有無・タイトル・作品名のみです。 

 

◆5  選者  暮田真名先生、なかはられいこ先生、平岡直子先生

 

◆6  賞  先生方の句集、鱗kokeraのお食事券やドリンク券。正賞受賞作は店内に1年間飾らせていただきます。

 

◆7  注意事項等

 

a  応募後の訂正には一切応じられません。また、既発表の作品については授賞を取り下げます。

 

b 受賞作・候補作・秀作十句はHPにも掲載させていただきます(応募後に受賞作・候補作・ 秀作十句に該当した句を、他の未発表句募集の賞に出すことはお控えください)。

また、すべての応募作品は店内で閲覧可能とさせていただきます。

 

c 発表は1月中旬を予定しています。 

 

【注】

 

※➀ 未発表については、最後に提示しております【未発表・既発表について】をお読みください。 既発表句が含まれていた場合には授賞を取り消しますのでご注意ください。 不安な場合は事前に野村茶鳥までお問合せください。

 

 

***ご不明な点は応募前にお問い合わせください。 ご応募たのしみにお待ちしております。

 

野村茶鳥 問合せ先:nomurakaori.ad@gmail.com

 

 

 

【未発表・既発表について】

 

未発表とは、「どこにも発表されていない句である」ということです。 鱗kokera 川柳賞は「未発表15句」を募集していますので、「既にどこかで発表した句」は応募しないでください。 以下の例は「既発表」となりますので応募しないでください。

 

・総合誌・結社誌・同人誌・SNS等に発表した作品

 

・公募制コンクールの受賞作に掲載された作品

 

・テレビやラジオで読まれた句

 

・鱗kokera賞選者の参加する句会に出した句

 

したがって、例えば「水曜日のこんとん」や「青山川柳ラボ」、「口語詩句投稿サイト72h」や「ねじまき句会」に出した句、なども、避けてください。

 

鱗kokera 賞選者の参加していない句会に出した句で、特に媒体に発表していない句は「未発表」扱いで大丈夫です。 不安な場合は必ず事前に野村茶鳥までお問合せください。

2025/03/10 21:10

第2回鱗kokera賞 奨励賞8作品

 今だけ   荒川力也

 

紫心ある葉はすべからく病葉に

茉莉花にうっとりとする司書を見た

土の中知りたくなって桜桃忌

蜜豆を食う今だけは雨が要る

夏帯のときどき鳥と喋る母

すこしだけ揚羽はすこしだけ怒る

夕焼よあるはずのない手を握る

海とあと夏の果て方などを見に

赤のままベンチに眠るベレー帽

その中に世界がすこし芋の露

秋分の電器屋が売る花の数

芋煮から芋煮へ向かう日曜日

稲刈をはじめる前の水を飲む

稲架かけてしばらく同じ空の色

海風にちりちりの髪新松子に

 

 松虫 うにがわえりも

 

春泥を踏みしめながら指相撲

猫いつもすこしとぼけて豆の花

行く春のちひさく光るおりんかな

吊り橋の先のまぶしき立夏かな

鳥の影いくつも映す代田かな

生ビールこれからもつとなかよしに

ゲーム機の線からみ合ふ夏休み

かなちよろやそろそろ僕の肩に慣れ

夏木立祈りは風になりはじめ

ハンカチの夜風にふつとなじみけり

おしぼりで耳まで拭いて海の家

水ヨーヨーこの人はなんとなく好き

雨を待つ松虫背ナを硬くして

秋昼寝だんだん文字を忘れつつ

刀豆やまだ諦めてゐない顔

 

 蹴るかたち 彼方ひらく

 

エプロンを掛けて薄暑の椅子となる

西瓜割みんな恋してをりにけり

梅雨寒やしやつくりのたび猫が見る

東京の野太き蚯蚓跨ぎけり

鶏頭や母笑はせて切るシャッター

帰省していよいよ訛る口ごたへ

提げて来し茸飯入り炊飯器

同棲や炬燵で本音確かめて

クリスマスいいねはそつと置くやうに

寒鴉言葉を選ぶ会議室

冬暖か「せーの」で車持ち上げる

麻雀牌片寄せて置くおでん鍋

永き日や鳩の帰らぬ鳩時計

石けんの泡の真白き花疲れ

夏近し脱ぎつぱなしの蹴るかたち

 

 遠く 川田果樹

 

Ardbeg隙なくならぶ淑気かな 

寒の水母に言はずに家を出て 

養花天電話をかけるまでもなく 

花菜畑肺が半分吹き飛んだ 

ちりめんやらくらくフォンの点滅す 

猫の恋ひとりで入るサイゼリヤ 

よじれたるシートベルトや夏は来ぬ 

薄暑光ひとりに広きエレベーター 

遠花火母好まざるニューメタル 

父遠く母遠くある泳ぎかな 

いなたまのとどかぬコインランドリー 

八月や刻んでタッパーに詰める 

茸山の足跡すぐに小さくなる 

墓洗ふあらかたの指に指輪 

いつまでも母の娘や冬の山

 

 古き絵本 辻村栗栖

 

新涼やつかまり立ちを自慢げに

肩車してゲレンデはまだ花野

露草は花びら足りぬやうなれど

動かざるリフト貫く秋の山

初雪やおほきなこゑに茶の揺れて

まつすぐに壁を見てゐる菊人形

火恋し日記は夜にさしかかり

冬来るや小籠包の先端に

薬局に古き絵本やスキー街

ほんたうに消炭か目を凝らしたり

熱燗やあそびごころの花を乗せ

歯ブラシの長短を手に柚子風呂へ

スキー客すこし寺見て帰りけり

平成の絵馬の黒さよ初雀

嘘泣きの巧くなりたる寒牡丹

 

 仄見えて 藤井祐喜

 

憚らず泣く鞦韆は立ちて漕ぐ

死後もなほ鶯餅があれば欲る

菜の花が上手く隠してくれてゐる

紫陽花の高さで運ぶ柩かな

水底に団扇社名が仄見えて

滴りに見惚れて羽化を忘れけり

クリオネがまだ生きてゐる冷蔵庫

立秋や白あんぱんを見て買はず

バタ足で戻ると蜻蛉生れけり

デザートは只ならぬ柿ぶかぶかの

胃袋は琳派のかたち冬ざるる

どんど焼ああと崩れてゆく達磨

袖口に鳩が隠れてゐるコート

白鳥を撮るぼんやりと父も容れ

冬の日を回して開けるランチジャー

 

 波 藤色葉菜

 

古箱を肩にボロ市の荒波

さすまたの立て掛けてある冬館

おにぎりの味噌の焦げゆく雪催

ひよつとしてすつぽかされたかもくしやみ

冬青空只今電話工事中

歌声は土にしたしく寒の明

ケチャップの花丸いびつ春嵐

水底に影脱ぎ捨ててプール出づ

秋の海めくれて浜を駆け上がり

さざなみの絶え間なき賭場秋日和

入賞の菊を抱へて喫茶店

鵯は半濁音符咥へ去り

鹿鳴いて鋭利な夜となりにけり

右耳にマスクの揺るる夜食かな

昼の虫パラパラ漫画の最後は墓

 

 日の当たる 前田拓

 

虫籠の底の隙間を踏み外す

わんぱく相撲廻しの下に履くズボン

常連になるまで通ふ豊の秋

紅葉狩髪の一部を染めて行く

赤ん坊のすこし沈みし今年藁

雪女月山に日の当たるまで

河豚刺しの箸を寝かせて掬ひけり

古日記ひなは卵に戻らざる

羊日の前脚で打つキーボード

闇夜汁だんだん甘くなりにけり

柊を挿しつつ辺り気になりぬ

雛壇に新幹線の一輌目

前髪の鋏は縦に若葉風

噴水の水仰向けに飲む写真

捲りては小さくなりゆく紙魚の跡