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2026/03/20 00:24

第3回鱗kokera賞 各選者の15句選

 ◇村上鞆彦15句選

満月や此の滲みが轢かれた鼠       宮崎 久實「逢ひたいかも」

秋草やばらけはじめし持久走       市原 みお「からだ」

花椒の舌で初雪告げにけり         八田 吏「三角形の夜」

ことわつておく無花果の熟れ具合   紺乃 ひつじ「懐く犬」

ゆくみづはふたてにわかれ式部の実  藤色 葉菜「しやくしやく」

雨の夜の雨の桜の広ごりぬ         中村 かりん「秋津島」

ぶらんこを漕いでうつすら口開いて  綾竹 あんどれ「春のいろ」

ミンチつめたし指の間をあふれ出し  笠原 小百合「雪に問ふ」

革靴に皺さだまりぬ今朝の夏         髙田 礁湖「眠る兎」

冬枯の吸入薬が肺に降る           大熊 光汰「腫れ方」

休学の果ての中退梅白し           伊藤 映雪「遺伝子」

桃はみなかがやく螺子を夢にみる   花島 照子「ひとつかみ」

スポーツの日の快晴が不正解       髙田 祥聖「ごっこ」

市役所へ二度行く昼の霙かな       大森 豊寛「素振り」

冬鴎車に凭れ煙草吸ふ             北杜 青「空の籠」

 

◇西村麒麟15句選

鳳仙花しつぱいしたらいいのにね   宮崎 久實「逢ひたいかも」

秋草やばらけはじめし持久走       市原 みお「からだ」

レフェリーのカウント激し年忘     阿部 八富利「ゴング」

骨壺に空の色ある小春かな         桃園 ユキチ「瞬きして笑う」

去年今年なますのうへしたをかへす  紺乃 ひつじ「懐く犬」

思ふより声が通つてチューリップ   千葉 芒「板前の耳」

じわじわと寄るよ蛙の正面へ       綾竹 あんどれ「春のいろ」

戒名に好きな字ばかり室の花       福嶋 すず菜「恋歌留多」

幻聴でもいい山茶花はまだ散らず   笠原 小百合「雪に問ふ」

三平汁骨を大きく盛りにけり       阿部 季縁「真空管」

革靴に皺さだまりぬ今朝の夏       髙田 礁湖「眠る兎」

別の山の桜をながめつつ渇く       大熊 光汰「腫れ方」

子の肩を揺すり起こすや梅雨の駅   伊藤 映雪「遺伝子」

雑炊や恋の話はさつと終へ         辻村 栗栖「いづれは」

託児所の手描きのダーツ菊日和     滝口 然「ぽんかん」

 

◇鴇田智哉15句選

初夢にいたこと言うと決心す     彩燈 琴璃「決心」

跣ゐて入れ墨がゐて校長室      山本 絲人「良夜の処分」

思ふより声が通つてチューリップ   千葉 芒「板前の耳」

プラごみは朽ちずに残る夏の星    古織 沃「夏の星」

人の頭こんなに重くそぞろ寒    森田 秋津「人の頭」

じわじわと寄るよ蛙の正面へ     綾竹 あんどれ「春のいろ」

しぐれては錆のこゑもて応へたり   笠原 小百合「雪に問ふ」

山吹と畳残して家仕舞        阿部 季縁「真空管」

レプリカの美術館より薄野へ     髙田 礁湖「眠る兎」

冬枯の吸入薬が肺に降る       大熊 光汰「腫れ方」

大花野一歩でこいんらんどりー    互井 宇宙論「円」

枇杷咲いて財布に褪せし回数券    五月 ふみ「光る犬」

街路樹にえのころぐさの寄り集まる  斎 建大「Hello.」

工業団地油膜の下にニゴイの群れ   海音寺 ジョー「油膜の下」

年用意一万円を何回も        辻村 栗栖「いづれは」

 

 

 

 

 

2026/03/13 00:18

第3回鱗kokera賞 受賞作

👑大熊光汰「腫れ方」👑

2026-03-13 (1).png

 

 

 

 

✨村上鞆彦賞

 からだ   市原みお

はりはりと如雨露の底の薄氷

冴返るならむ時計の中の鳩

春蟬や生麦生米演劇部

灯涼し酔へば歌へる師のありて

卵手に取れば朝来る冷蔵庫

流し場の下に梅酒の闇のあり

麻を着て十指いづれも肉薄く

初秋や手の甲に見る紅の色

水澄みてかぷかぷ回るものが見ゆ

秋草やばらけはじめし持久走

底浅き花をうつりて秋の蝶

閉経へ傾くからだ花柊

風呂吹や星の少なき町に住み

背中合はせに毛糸編むひととをり

手に残る辞書の重さや冬至の湯

 

✨西村麒麟賞

春のいろ   綾竹あんどれ

丸皿の縁のふくらみ春の雪

風船も乗せ海行きのバスとなる

水温むさかしまに木をつつく鳥

迷ひ来て朧の家のベル鳴らす

むず痒く海胆のうごくを見てゐたる

アネモネの一輪窓のなき楽屋

通話せり雫のやうな春の灯に

指先に舐めとる砂糖サイネリア

永き日の相槌の間の似てきたる

寄居虫のさばしる床に置かれては

春の宵カシューナッツの割れやすき

ぶらんこを漕いでうつすら口開いて

じわじわと寄るよ蛙の正面へ

笑ひたるままに歩いて春田まで

ヘリオトロープ楽団の来る朝

 

✨鴇田智哉賞

人の頭   森田秋津

頭山みたいな話春の宵

桜から桜に渡る跨線橋

飛花落花蹴散らしてをる愛その他

暮れの春水面に上がる心地して

われもまた緑となりて夏に入る

向うから件の来たる夕若葉

短夜に雨の通つたやうな気も 

あらば買ふダークマターといふ香水

昨日まで人魚の国にゐた金魚

その手から鬼灯出しぬ秋日傘

落花生割つて火星に行くと云ふ

人の頭こんなに重くそぞろ寒

ちさき猫わたしにちようどよい冬日

狐火が玻璃戸に映り大き家

知らしめよ狼ここにをりしこと

 

✨奨励賞

◇懐く犬  紺乃ひつじ

手をかぶせつつ虫籠の蓋開けぬ

翅へ青およぶ塩辛蜻蛉かな

絡まつて水引に色濃きところ

秋風やこけしの罅の毛羽立てる

ことわつておく無花果の熟れ具合

落葉踏むよ落葉踏むよと声に出し

ひとりづつ参る鎮守や冬珊瑚

こつそりと募るサンタのアルバイト

去年今年なますのうへしたをかへす

珈琲淹れなほす寒夜の天動説

己が雪にまへがみ濡るる雪女

春ショールかき寄せて絵に近づきぬ

左右から上から鶯餅ながむ

こでまりや義足の犬に懐く犬

追ひ越さぬやう石鹸玉追つてをり

 

 

◇恋歌留多   福嶋すず菜

砂風呂に鱗の光る九月かな

追伸に本音のありて桐は実に

串カツを好む男や西鶴忌

白秋のオルガン深く踏み込みぬ

豊の秋危うき橋を迷ひなく

蜻蛉や小さき路地も名を持ちて

村長の派手に斬らるる村芝居

おまかせの髪型にして返り花

眉毛なき素顔も愛し根深汁

鯛焼の塩気について物申す

雪吊りの締めの一本宙に舞ひ

笹鳴や宿の枕の固さうな

狐火に蔵の大戸を放ちけり

戒名に好きな字ばかり室の花

妹も姉も取らざる恋歌留多

 

◇雪に問ふ   笠原小百合 

冬ざれや片足立ちの鶺鴒来

幻聴でもいい山茶花はまだ散らず

しぐれては錆のこゑもて応へたり

綿虫が笑ふ笑はぬわたくしに

剥製の姿正しく小春凪

てのひらをしぶしぶ歩く冬の蠅

ミンチつめたし指の間をあふれ出し

雨の日も兎は鳴かずエビリファイ

寒鴉月光の木を塒とす

クリスマスツリーの鈴は鳴らぬ鈴

好きなだけ着ぶくれてゐる夜の渇き

あきらめの青い窓なり霜の花

水死んでゐるか蘆原枯れ尽し

口癖も髪もコートも昏き色

雪の日に生まれしことを雪に問ふ

 

 

◇真空管   阿部季縁

ペン先の詰まり溶けだす春の宵

余寒より迷ひ込みたりジャズの昼

春の鳥飛ぶかとみえて地を歩み

ふいに聞くなれの出立鐘霞む

草餅やラジオの奥に声かけて

引き出しに山廬の栞竹の秋

山吹と畳残して家仕舞

不慣れなる事を収めて黄木蓮

紙見本飽かず繰りけり菜種梅雨

原つぱは突つ切るものぞ夏薊

破るるを知らぬ風船葛かな

待宵の真空管に目を凝らし

モルタルの足形乾く湯冷めかな

三平汁骨を大きく盛りにけり

杣の山刳りて深し冬の川

 

◇眠る兎   髙田礁湖

活躍のまばゆき友や花菜漬 

逃水に濡れしランナー近づき来

助手席に目ざめ淡海は飛花落花

若鮎のしつぽこんがり天を指す

革靴に皺さだまりぬ今朝の夏

薔薇園や架空の国にゐるつもり

白シャツの肩叩き合ふ夜市の灯

天女いま夏の鷗と化すところ

レプリカの美術館より薄野へ

りんご剥くゆるき螺旋を揺らしつつ

暗幕をこぼれくる陽よ文化祭

束の間の港にはしやぐ秋燕 

初雪の街を吸ひこむ煙草かな

冬ざれや翼やすらふ駐機場

ささやいて眠る兎の耳立たす

  

 ◇ひとつかみ   花島照子

耳打ちを蜂の巣はまだすこし先

石鹸玉ねむらせる気のない椅子へ

手を洗う水や日向に雉もいて

言い漏らす柳の芽から次々に

ジャム舐めて五月ちっちゃい皿に匙

桃はみなかがやく螺子を夢にみる

青嵐みひらくと目のまるいひと

しゃべらない二時とつりあうハンモック

野葡萄の奥にふれたい幼稚園

健康の森へと月がずれてくる

もうねむる夜食の皿は木のお皿

白鳥やゼムクリップをひとつかみ

ストーブに顔はこちらの方を向く

日脚伸ぶバックパックは軽いのに

あやとりの箒透けるや枇杷の花

  

 ◇ごっこ   髙田祥聖

将来の夢に目刺と書いており

春キャベツたぢたぢ運命じゃないもんね

言われてみれば結婚願望ない夜桜

トムヤムクンふたつめのムが春の夢

蛙の目借りどきたまに不安な七の段

ねむいって言い出せなさそうな噴水

日向水Whyの寝惚けて浮く感じ

刺すことが箸の本懐パイナップル

爽やかにチューインガムは飲み込む派

スポーツの日の快晴が不正解

いちじくに仕事まる投げして眠る

発酵というか着膨れというか

木の葉髪もはや生き様なる遅刻

ポインセチア赤すぎだいたい自分のせい

三が日ずっと無人島ごっこ

 

◇ぽんかん   滝口然

生ビール寝ても覚めても良い写真

ガレージに干されてゐたるトマト缶

舟涼し誘導員に会釈して

託児所の手描きのダーツ菊日和

休日出勤川べりに萩混じり

星飛んでマクドナルドの百年史

腕章を見せて枯野に入りけり

煙突も梯子も細き秋の暮

ぽんかんや二秒で脱げる館内着

大寒の部屋いつぱいの静電気

寒鱈汁暗算早き人とゐて

電球の細き神経猫柳

特急の窓に春闘らしきもの

龍天に登り七味の胡麻詰まる

濡らされし面より切手かぎろへる

 

2026/03/12 23:40

【速報!】 第3回鱗kokera賞 発表!

👑鱗kokera賞 大熊光汰「腫れ方」👑 ✨村上鞆彦賞 市原みお「からだ」 ✨西村麒麟賞 綾竹あんどれ「春のいろ」 ✨鴇田智哉賞 森田秋津「人の頭」

 

✨奨励賞 紺乃ひつじ「懐く犬」 福嶋すず菜「恋歌留多」 笠原小百合「雪に問ふ」 阿部季縁「真空管」 髙田礁湖「眠る兎」 花島照子「ひとつかみ」 髙田祥聖「ごっこ」 滝口然「ぽんかん」