暮田真名さん、なかはられいこさん、平岡直子さんによる厳正なる選考の結果、
第1回鱗kokera川柳賞は
伊野こうさんの「口からアスパラガス」に決定しました!
そのほかの結果は以下の通りです。
「地上波」 島崎
「きのう」 八上桐子
「わたしのワンピース」 野に咲くお花
◆奨励賞(作者五十音順)
「暮らす」 植田遥大
「光脱毛」 大森豊寛
「解体記 vol.3」 小沢史
「喉」 織原禾
「焼きたてのパトロール」 栫伸太郎
「孔雀の渡河」 桜庭紀子
「LUCKY/LUCK」 花島照子
【第1回 鱗kokera川柳賞】
口からアスパラガス 伊野こう
はじめまして生放送の塩加減
ないがしろにされたのゆで卵の剥き方で
そら豆はじめました もうあとには戻れない
私信だよ 風にのちほどほどかれて春巻き
ぼくは口からアスパラガスを食べるひと
みんなふたご お刺身だらけのフェスティバル
そうめんはほどいて詩にして捨てただけ
ゆっくりとレモンの数だけおじぎした
早起きはいやだしココアまみれだし
カステラのひかりにきみは水をさす
ぱぴぷぺぽって口にしたなら冬だよね
抜け道にしるこがあって泣けてくる
お味噌汁はゆびをきらない祈りでしょうか
月にしてはすこしたりないぼくのみみたぶ
どすこい おしりからとてもとおいおわかれ
【暮田真名賞】
地上波 島崎
平成を思い出しても顔がない
シャンプーとリンスの偉い方を取る
こう見えて声にならない声だけど
快楽を明け渡したい銀食器
地上絵もトートバックにできますか
許可されていない浮き足立つことは
脚を借し出して葡萄を踏んでいる
共通の話題が手術台の上
いやらしくない落雷は珍しい
視聴した海から順に消していく
左にいてときどき右が気にかかる
目を開く必要がないのはいいね
最適化しても七福神になる
パターンの限られている姉妹都市
落葉の底に麻酔が効いていた
【なかはられいこ賞】
きのう 八上桐子
蜩を握る強さでいる、ここに
まるで光 折れながら入る部屋
流木が二本シーツに流れつき
秋の日をひっきりなしに父の舌
カステラのざらめ歯のないくらがりへ
股ぐらをひらいてひろいひろい昼
剃刀にすずしくおもて撫でられる
ふっと姉おもえばうごく魚の鰭
水の面へへのへのもへじわらい死ぬ
念仏の声のおおかた息になり
千の手の一つも空いていないのか
ペットボトルのたましい潰し
無花果のジャム腐るほどある時間
春の泥かき混ぜ寝入りばなの足
水たまりいったいいつのきのうだろう
【平岡直子賞】
わたしのワンピース 野に咲くお花
マーガレットが嫌いだったの?
楽しいな。わたしお荷物だったから
アリスはおすましドードーの群れ
ティーポット頭につけてくりかえす
ジャムだらけです。大変ですね。
致死量のリボンを捨てるお母さん
チューリップきれいに飾る図鑑だね
お家の顔した子どものなぞなぞ
黄色い犬とリボンとダンス
うさぎと蔦の交流を見て
消えたおもちゃの真似をしていた
お星様かたかたになり眠ってる
クッキーに微笑んでいる襟のなか
かわいいだけでいいから生きて
おやすみ!夢とピクニックしよう
【奨励賞7名】
暮らす 植田遥大
落椿 実際に見たことがある
唐揚げのどこにも生活感がない
塗りながら肌は油絵だと思う
末席でメトロノームを真似ている
看板のはたらきをする犬らしい
日常は人工臓器へと果てる
命名のなべて褒めごろされている
理屈の馬を競わすような会議室
マフラーを死なないように締めている
目をやれば誰もが僕の名付け親
ブランコが建築に見えなくもない
街灯を浴びては毛穴からひずむ心地だ
スキップのやめどきさえも振り切った
なけなしの着衣の僕が帰宅する
キュレーション:名前を背負って生きること
光脱毛 大森豊寛
空豆を剥いてはじまる大恋愛
深爪にクリアファイルを挟み込む
おすすめを全て試した虫歯です
振ったひとどうしてるかな飛蚊症
湖を前になおさら吐きにくい
心臓に剣山を押し当てて聴く
巻き爪がすべて見てきたカレンダー
膨らんで蕾のままの教習車
マチアプはぬか漬けにしたはずなのに
TikTok踊り疲れて苔を踏む
どうしてもルビーで薔薇が作れない
Bメロを矯正しても愛のうた
ランウェイの角を曲がれば涅槃像
蜜蜂にVIOは荷が重い
ランド派の人と行く東京タワー
解体記 vol.3 小沢史
薬指お求めやすくなりました
あいまいな背骨ですけどいいですか
鳩尾にうっかり咲かせてる桔梗
踝は製氷皿の底の方
星砂の瓶にむだ毛を詰めておく
黒ずんでいく傷満開百日紅
体育会系の鱗はみな剥がす
押し花にした角膜の羽音する
わたくしの音をさがしている指だ
梨を剥く指紋失くしてしまうまで
産卵の時間もも色引き裂いて
ほくろごと指を挿れてる鯉の口
法令線はあたためますか?
ひっそりと挽肉器から火があがる
ちりとりで爪先さっと集めとく
喉 織原禾
十月が二回来ている昼の手話
洋梨の光を吸ってイ長調
笑い声鏡があれば割り切れて
呼ばれたら余韻が残る咽喉科
返事は?はいここから長細い薬局
金木犀カラオケの音質が降る
蛍の光歌い終わったあとの蘭
団地からはんかち落としがついてくる
落としもの耳に残っているIf you
螺旋階段石膏像の喉
暗室で静かに切れた消費期限
せっけんのうらで喋っているくもり
会うたびに雑音ばかり家の鍵
うがいしても芯は仏間に届かない
吐き出したように土鳩が散らばって
焼きたてのパトロール 栫伸太郎
ヤドカリは都道府県とかの仲間
通気口みたいに笑う春だった
「霧状にされたさんすうセットです」
吐息からシャトルバスまで揃う店
煮沸した口伝のなかのエビサンド
個包装の半直線とむつみあう
寝耳をうめるためのグラタン
やわらかいうどんがささらない本棚
焼きたての分水嶺のパトロール
頑張れば見える大豆でできている
不思議の国の頭脳流出
添付ファイルに霧笛をいれる
夏風邪を引くところまで自分でやる
ずるずるひきづっている(句読点を含む)
あと五分待って来なかったら手品
孔雀の渡河 桜庭紀子
うぶすなや かつて寄せ木であったころ
コスモスとしての人格うばいさる
鳥影に告げ口をしてむすぶ舌
ゆるすとき、脳(なずき)はラベンダーカラー
弱そうであれば溶接しましたか
キマイラのごとくふるえる姫女苑
軀からだゆれているならまだ平気
さかさまになみだ流して蔦だった
白浜を有彩色でのみ示す
切り身になってからかしこくなった
晩年にふれて胞子のテクスチャー
死んでからすきになる蜘蛛 手の棺
孔雀の渡河きみが再生せぬように
生前は風景でした 無人の除幕式
夜の顔しましたいつもひらくので
LUCKY/LUCK 花島照子
いもうとのこえルピナスの翳を描く
胸に羽はえてなんにも見えてない
もう誕生日もう裏声がもどらずに
かりそめに灯るミルクと褪せましょう
ぜいたくに夢へ朱墨が垂れてくる
蛇を目におさめてふたり雪を呼ぶ
杉鳴りのいもうとのほほ夜に吸われ
空は霙にからだは川に同期する
はなうたに拇印を捺してわたしたち
言うべきことを墓石の艶に思い出す
くるうまで氷柱を舐めるから姉は
破顔してこわい鏡を手懐ける
まずお辞儀してから脱いでやまいだれ
幸運がいもうとの背に濡れてしまう
うしろからおりがみの犬ひらく音