園だより

2022-12-16 11:20:00

子どもの困った行動は大人に向けたメッセージ

子どもの困った行動は大人に向けたメッセージ

 津守真さんは、子どもの行為を、心の表現だと言います。

 

 「あるとき、私は子どもの行動を表現として見ることを発見した。行動は子どもの願望や悩みの表現であるが、それはだれかに向けての表現である。」

 

 このように一見、問題に見える行為も、その子がうったえる重要な表現として大切な意味を見いだすべきだと、彼は考えたのです。しかし、そう捉えることは決して簡単ではありません。実際の子育てや保育では、「どうしたら早くおむつがとれるか」とか、「どうやったら困った行為をやめさせられるか」といった、表面的なことばかりに振り回されてしまうからです。

  ずいぶん前に出演した、ある子育て番組での話です。2歳の女の子は、公園で友達と上手に遊べません。すべり台を滑ろうとすると、突然滑るのをやめて他の子を押しのけて階段を下りてしまいます。乗り物に乗ろうとした時には、他の子が一緒に乗ろうとすると「ダメ」と強烈に拒否するのです。友達がボールを蹴って遊んでいた時にも、「ダメ」と言ってボールを抱えて逃げてしまいます。親としては、友達とうまく遊べないわが子に悩むのは当然です。

  しかし、表面的には「友達とうまく遊べない子」「わがままな子」と見えますが、本当は違うのです。なぜ、その子がすべり台を下りたかといえば、滑ろうとしたら他の子に後ろから軽く押されたからです。それで、他の子から離れるために乗り物の方に行ったのです。「友達とうまく遊べない子」として見ていると、なかなかその事実に気づきません。乗り物には一人で乗ろうとしましたが、他の子がついてきて一緒に乗ろうとしました。ボールで遊ぼうとしたら、他の子たちが彼女のボールを蹴っていて、手に入らないのです。

  自分のペースでゆっくり遊びたいと思っている女の子にとって、それは[困ったこと」だったのです。それなのに、「どうして、お友達と一緒に遊べないの」と叱られます。この子の思いは、誰にも理解されないのです。この、一見「わがまま」に見える行為は、「願望や悩みの表現」といえます。それは、誰かに分かってほしいという表現ともいえるでしょう。その子を「うまく遊べない子」「わがままな子」と見ていると、「願望や悩み」はなかなか分かりにくいものです。でも、ちょっと立ち止まって見てみると、その子の思いが分かってきます。

  困っているのは大人ではなく、子どもなのです。問題があると思っている時こそ、その子が何に困って表現しているのかと、じっくりと見てあげたいものです。

[大豆生田啓友著 『子育てを元気にすることば』より]